
ゲーム配信や録画において重要な役割を果たすキャプチャボードには、ハードウェアエンコードとソフトウェアエンコードという2つの処理方式があります。この記事では、両方式の根本的な違いから実際の性能差まで、初心者にもわかりやすく詳細に解説します。CPU使用率や遅延時間、画質の違いを具体的な数値とともに比較し、あなたの用途に最適なエンコード方式を選択できるようになります。配信や録画の品質向上を目指す方にとって必須の知識をお伝えします。
1. キャプチャボードのエンコード方式とは
1.1 エンコード処理の基本的な仕組み
エンコード処理とは、映像や音声のデジタル信号を圧縮して保存・配信に適した形式に変換する技術です。キャプチャボードが受け取った映像信号は、そのままでは非常に大きなデータ量となるため、実用的なファイルサイズや配信可能な帯域幅に収めるためにエンコード処理が必要不可欠となります。
例えば、フルHD(1920×1080)の映像を60フレーム毎秒で非圧縮のまま記録した場合、1秒間で約190MBものデータ量が発生します。これをそのまま扱うことは、現実的な配信や録画において困難であるため、効率的な圧縮アルゴリズムによってデータ量を大幅に削減する必要があります。
エンコード処理では、主にH.264やH.265(HEVC)といった映像圧縮規格が使用されます。これらの規格では、動画の中で変化の少ない部分や類似している部分を識別し、冗長なデータを除去することで圧縮を実現しています。また、人間の視覚特性を考慮した圧縮も行われ、画質の劣化を最小限に抑えながら効率的な圧縮が可能となっています。
1.2 キャプチャボードにおけるエンコードの役割
キャプチャボードにおけるエンコード処理は、外部機器から入力された映像信号をリアルタイムで圧縮し、PCで扱えるデータ形式に変換する重要な役割を担っています。この処理により、ゲーム機やカメラからの映像を配信プラットフォームへ送信したり、ハードディスクに録画したりすることが可能になります。
キャプチャボードのエンコード方式は、処理を行う場所によって大きく2つに分類されます。キャプチャボード自体に搭載された専用チップで処理を行う「ハードウェアエンコード」と、接続されたPCのCPUで処理を行う「ソフトウェアエンコード」です。
| 処理方式 | 処理場所 | 主な特徴 | 適用場面 |
|---|---|---|---|
| ハードウェアエンコード | キャプチャボード内蔵チップ | 低遅延・低CPU使用率 | リアルタイム配信 |
| ソフトウェアエンコード | PC側のCPU | 高画質・設定自由度が高い | 高品質録画 |
エンコード方式の選択は、使用目的や求める画質、配信環境によって決定されます。リアルタイム性を重視する配信では低遅延が求められるため、通常はハードウェアエンコードが適しています。一方、録画用途で最高画質を求める場合には、CPUパワーを活用したソフトウェアエンコードが選択されることが多くなります。
また、最近では両方の処理方式を組み合わせたハイブリッド方式や、GPUを活用したハードウェアアクセラレーションを利用する方式も登場しており、エンコード技術の進歩により選択肢が多様化しています。適切な方式を選択することで、配信品質の向上やシステム負荷の軽減が期待できます。
2. ハードウェアエンコードとソフトウェアエンコードの違い
キャプチャボードにおけるエンコード方式は、大きく分けてハードウェアエンコードとソフトウェアエンコードの2つに分類されます。この2つの方式は処理方法や性能特性が大きく異なるため、用途や予算に応じて適切な選択が必要です。
| 比較項目 | ハードウェアエンコード | ソフトウェアエンコード |
|---|---|---|
| 処理方式 | 専用チップで処理 | CPUで処理 |
| CPU負荷 | 低い(5~15%程度) | 高い(30~80%程度) |
| 遅延時間 | 短い(約0.1~0.3秒) | 長い(約0.3~1秒) |
| 価格帯 | 高い(1万円~) | 安い(3,000円~) |
| 画質調整 | 限定的 | 詳細に調整可能 |
2.1 ハードウェアエンコードの特徴とメリット
ハードウェアエンコードは、キャプチャボード内蔵の専用エンコードチップが映像の圧縮処理を行う方式です。パソコンのCPUに負荷をかけることなく、リアルタイムでの映像圧縮が可能という最大の特徴があります。
主なメリットは以下の通りです。
- CPU使用率を大幅に削減できるため、ゲームプレイや他のアプリケーションの動作に影響を与えにくい
- 遅延時間が短く、リアルタイム配信に適している
- 安定した処理性能を維持できる
- パソコンの性能に依存せず、一定品質の録画・配信が可能
特に、Core i5やRyzen 5クラスのミドルレンジCPUを搭載したパソコンでも、ゲームプレイと同時配信を無理なく行えるのが大きな魅力です。Elgato HD60 SやAVerMedia Live Gamer DUO GC570Dなどの製品が代表的です。
2.2 ソフトウェアエンコードの特徴とメリット
ソフトウェアエンコードは、パソコンのCPUが映像の圧縮処理を担当する方式です。キャプチャボード自体にはエンコード機能がなく、取り込んだ映像データをそのままパソコンに送信します。
主なメリットは以下の通りです。
- 製品価格が比較的安価で導入しやすい
- エンコード設定を細かく調整できるため、用途に応じた最適化が可能
- 高性能CPUを使用することで、ハードウェアエンコードを上回る画質を実現できる
- 将来的なソフトウェアアップデートによる機能向上が期待できる
Core i7やRyzen 7以上の高性能CPUを搭載したパソコンであれば、ソフトウェアエンコードでも十分な性能を発揮できます。AVerMedia Live Gamer 4K GC573やElgato 4K60 Pro MK.2などの製品が該当します。
2.3 処理速度と画質の違い
処理速度の面では、ハードウェアエンコードが明らかに優位です。専用チップによる並列処理により、フルHD 60fpsの映像を遅延なくリアルタイムエンコードできます。一方、ソフトウェアエンコードはCPUの処理能力に依存するため、他のアプリケーションとの処理競合が発生しやすくなります。
画質については、一般的にソフトウェアエンコードの方が高品質な結果を得られます。これは、CPUによる柔軟な処理により、複雑なエンコードアルゴリズムを適用できるためです。特に、x264エンコーダーのSlowやSlowerプリセットを使用した場合、ハードウェアエンコードよりも圧縮効率の良い高画質な映像を生成できます。
ただし、最近のハードウェアエンコード製品では、H.264やH.265の最新規格に対応し、画質の向上が図られています。日常的な配信や録画用途であれば、両者の画質差は実用上問題のないレベルまで縮小されています。
3. 性能比較による徹底解説
キャプチャボードのハードウェアエンコードとソフトウェアエンコードでは、性能面で大きな違いが生まれます。ここでは実際のデータを基に、CPU使用率、遅延時間、画質と圧縮効率の3つの観点から詳細に比較分析していきます。
3.1 CPU使用率の比較
エンコード方式によるCPU使用率の違いは、配信や録画の安定性に直結する重要な要素です。ハードウェアエンコードはキャプチャボード内蔵の専用チップで処理を行うため、CPU使用率を大幅に削減できます。
| エンコード方式 | 1080p30fps録画時のCPU使用率 | 1080p60fps配信時のCPU使用率 | 4K録画時のCPU使用率 |
|---|---|---|---|
| ハードウェアエンコード | 5-15% | 10-20% | 15-25% |
| ソフトウェアエンコード | 30-50% | 40-70% | 60-90% |
Intel Core i5-12400やAMD Ryzen 5 5600Xクラスのミドルレンジ CPU でテストした場合、ハードウェアエンコードは圧倒的にCPU負荷が軽く、同時にゲームプレイや他のアプリケーションを快適に動作させることが可能です。一方、ソフトウェアエンコードでは高解像度・高フレームレートでの処理時にCPU使用率が大幅に上昇し、ゲームのフレームレート低下や動作不安定の原因となる場合があります。
3.2 遅延時間の違い
配信やリアルタイム録画において、遅延時間(レイテンシー)は視聴者との相互作用やゲームプレイの快適性に大きく影響します。
| エンコード方式 | エンコード遅延 | 総合遅延時間 | 配信での体感 |
|---|---|---|---|
| ハードウェアエンコード | 0.5-2秒 | 2-4秒 | リアルタイムに近い |
| ソフトウェアエンコード | 1-5秒 | 3-8秒 | やや遅延を感じる |
ハードウェアエンコードは専用回路での高速処理により、ソフトウェアエンコードと比較して遅延時間を大幅に短縮できます。特にライブ配信において視聴者とのコミュニケーションを重視する配信者にとって、この遅延時間の差は配信品質に直結する重要な要素となります。
Elgato HD60 SやAVerMedia Live Gamer 4Kなどの人気キャプチャボードでの実測値では、ハードウェアエンコード搭載モデルは安定して低遅延を実現しており、競技性の高いゲーム配信でも違和感なく使用できます。
3.3 画質と圧縮効率の比較
エンコード方式による画質と圧縮効率の違いは、最終的な映像品質と配信・録画データのファイルサイズに大きく影響します。
| 比較項目 | ハードウェアエンコード | ソフトウェアエンコード |
|---|---|---|
| 圧縮効率 | 標準的 | 高効率 |
| 同ビットレートでの画質 | 良好 | 優秀 |
| ファイルサイズ(1時間録画) | 3-5GB | 2-3GB |
| 画質設定の柔軟性 | 限定的 | 高い |
ソフトウェアエンコードは高度なアルゴリズムを使用できるため、同じビットレートでもより高画質な映像を生成できます。x264やx265などの高性能コーデックを使用することで、細かい画質調整や最適化が可能です。
一方、ハードウェアエンコードは固定化された処理回路を使用するため、画質調整の幅は制限されますが、安定した品質を維持できます。H.264ハードウェアエンコーダーを搭載したキャプチャボードでは、プリセットされた最適化により、十分な画質を確保しながら軽快な動作を実現しています。
実際の使用場面では、YouTube配信やTwitchでの配信において、ハードウェアエンコードでも視聴者から画質に関する不満が出ることは稀で、多くの配信者がハードウェアエンコードの安定性と軽快さを評価しています。高画質録画を重視する場合はソフトウェアエンコード、配信の安定性を重視する場合はハードウェアエンコードという使い分けが効果的です。
4. 用途別おすすめエンコード方式
キャプチャボードのエンコード方式は、使用目的によって最適な選択肢が異なります。ここでは具体的な用途に応じて、どちらの方式が適しているかを詳しく解説します。
4.1 ゲーム配信におすすめの方式
ゲーム配信では、リアルタイム性と安定性が最も重要となります。視聴者とのコミュニケーションを重視する配信では、遅延が少なく、配信中にトラブルが起きにくい方式を選ぶことが成功の鍵となります。
4.1.1 ハードウェアエンコード推奨のケース
多くのゲーム配信者にとって、ハードウェアエンコード搭載のキャプチャボードが理想的な選択肢です。特に以下の条件に当てはまる場合は、ハードウェアエンコードを強く推奨します。
| 配信スタイル | 推奨理由 | 具体的なメリット |
|---|---|---|
| 長時間配信 | CPU負荷軽減 | ゲーム性能を維持しながら安定配信 |
| 高フレームレートゲーム | 処理能力の分散 | 120fps以上でもスムーズな配信 |
| 複数配信サイト同時配信 | システムリソース確保 | 配信ソフトの負荷軽減 |
CPU使用率を大幅に削減できるため、ゲーム本体の動作に影響を与えずに配信できます。特に競技性の高いFPSゲームや格闘ゲームでは、フレームドロップが勝敗に直結するため、ハードウェアエンコードの安定性は非常に重要です。
4.1.2 ソフトウェアエンコードが適するケース
高性能なCPUを搭載したゲーミングPCを使用している配信者であれば、ソフトウェアエンコードも選択肢となります。Intel Core i9やAMD Ryzen 9シリーズのような高性能CPUなら、エンコード処理を十分に処理できます。
また、画質にこだわりたい配信者や、視聴者数が多い大規模配信では、ソフトウェアエンコードの高画質が活用されます。ただし、ゲームプレイへの影響を常に監視する必要があります。
4.2 録画用途におすすめの方式
録画用途では配信とは異なる要件が重要になります。リアルタイム性よりも、高画質での長時間録画と安定したファイル保存が優先されます。
4.2.1 用途別録画方式の選択指針
録画の目的によって最適な方式は大きく変わります。以下の表で具体的な用途別の推奨方式をまとめました。
| 録画目的 | 推奨方式 | 画質設定 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| YouTube投稿用 | ソフトウェア | 1080p60fps高ビットレート | 編集前提の高画質確保 |
| プレイ記録保存 | ハードウェア | 1080p30fps標準 | 長時間録画の安定性重視 |
| 配信アーカイブ | ハードウェア | 720p60fps | ファイルサイズとのバランス |
| プロ用途・商用 | ソフトウェア | 4K対応可能 | 高品質素材の確保 |
4.2.2 長時間録画での考慮点
数時間を超える長時間録画では、システムの安定性とストレージ容量が重要な要素となります。ハードウェアエンコードは発熱や負荷の面で有利ですが、録画ファイルの品質とのバランスを考慮する必要があります。
また、録画中のゲーム操作への影響を最小限に抑えたい場合は、ハードウェアエンコードが確実な選択肢です。特に一発撮りが重要なゲーム実況や、貴重なゲームプレイの記録では、安定性を最優先に考えましょう。
4.3 予算別の選び方
キャプチャボードの選択では、性能と予算のバランスが重要です。用途に応じた適切な予算配分により、コストパフォーマンスの高いシステムを構築できます。
4.3.1 エントリークラス(1万円~3万円)
初めてキャプチャボードを購入する方や、基本的な配信・録画のみを行う場合に適した価格帯です。この価格帯では、ソフトウェアエンコードタイプが主流となります。
エントリークラスでは、シンプルな機能に特化した製品を選ぶことで、必要十分な性能を確保できます。ただし、PCのスペックが十分でない場合は、処理が重くなる可能性があることを理解しておく必要があります。
| 価格帯 | 主な特徴 | 適用用途 | 注意事項 |
|---|---|---|---|
| 1万円~1.5万円 | 基本的なキャプチャ機能 | カジュアル配信・録画 | 高負荷時の安定性確認必要 |
| 1.5万円~2.5万円 | 1080p60fps対応 | 本格的な趣味配信 | PC性能との兼ね合い重要 |
| 2.5万円~3万円 | 多機能ソフトウェア付属 | 編集込みの動画制作 | 学習コストの考慮必要 |
4.3.2 ミドルクラス(3万円~6万円)
本格的な配信活動や、高品質な録画を目指す方に適した価格帯です。この価格帯からハードウェアエンコード搭載モデルが選択肢に入るため、用途に応じて慎重に選択できます。
ミドルクラスでは、配信の頻度や品質要求に応じて、ハードウェアエンコードとソフトウェアエンコードを使い分けることが可能です。多くの配信者にとって、最もコストパフォーマンスの高い価格帯といえます。
4.3.3 ハイエンドクラス(6万円以上)
プロレベルの配信や、商用利用を前提とした高品質コンテンツ制作に適した価格帯です。4K録画対応や複数入力対応など、プロ仕様の機能を搭載したモデルが中心となります。
ハイエンドクラスでは、ハードウェアエンコードとソフトウェアエンコードの両方に対応し、用途に応じて使い分けができるモデルが多数あります。投資に見合った収益や価値を見込める場合に選択すべき価格帯です。
4.3.4 予算決定の指針
適切な予算設定のためには、現在のPC環境と将来の用途拡張を総合的に考慮することが重要です。CPU性能が不足している場合は、キャプチャボードよりもPC全体のアップグレードを優先することも検討しましょう。
また、配信や録画の頻度、視聴者数の規模、収益化の予定などを具体的に計画し、それに見合った投資を行うことで、長期的に満足できるシステムを構築できます。
5. まとめ
キャプチャボードにおけるハードウェアエンコードとソフトウェアエンコードには、それぞれ明確な特徴と適用場面があります。ハードウェアエンコードは専用チップによる処理でCPU負荷を大幅に軽減し、遅延時間も短く抑えられるため、リアルタイム配信に最適です。一方、ソフトウェアエンコードはCPUパワーを活用することで、より高画質な映像を実現でき、録画用途や画質重視の配信に向いています。
ゲーム配信では安定性と低遅延を重視してハードウェアエンコード、高画質な動画制作では画質とファイルサイズの効率性を重視してソフトウェアエンコードを選択するのが基本的な考え方となります。ただし、ソフトウェアエンコードを快適に使用するには、Intel Core i7やAMD Ryzen 7以上の高性能CPUが必要不可欠です。
最適なキャプチャボード環境を構築するには、用途に応じたエンコード方式の選択と、それを支える高性能なパソコンが重要な要素となります。配信や録画を本格的に始める際は、専門知識を持ったプロのサポートを受けることで、失敗のない機材選びが可能になります。ゲーミングPC/クリエイターPCのパソコン選びで悩んだらブルックテックPCへ。
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