
生成AIは業務効率化や情報収集のツールとして急速に普及していますが、使い方を誤ると機密情報や個人情報が外部に漏洩するリスクがあります。
この記事では、生成AIを企業や個人が安全に活用するために必要なセキュリティ対策を、情報漏洩リスクの種類から具体的な対策方法、個人情報保護法や経済産業省・総務省のガイドラインまで、わかりやすく丁寧に解説します。生成AIの導入を検討している方も、すでに利用中の方も、リスクを正しく理解して安心して使い続けるための知識をしっかり身につけることができます。
1. 生成AIのセキュリティ対策が注目される背景
1.1 生成AIの急速な普及と企業導入の現状
近年、ChatGPTやGemini、Copilotをはじめとする生成AIツールは、ビジネスの現場に急速に浸透しています。文章の自動生成、コードの補完、画像制作、データ分析の補助など、その活用範囲は多岐にわたり、業種を問わずさまざまな企業が業務効率化を目的として生成AIの導入を進めています。
日本国内においても、大手企業から中小企業まで、生成AIを業務プロセスに組み込む動きが顕著になっています。経済産業省や総務省が相次いでAI活用に関する調査・指針を公表していることからも、社会全体でのAI活用が加速していることがわかります。
特に注目すべきは、生成AIが「専門家だけが使うツール」から「一般社員が日常的に使うツール」へと変わりつつある点です。ITリテラシーの高低にかかわらず、誰もが簡単に生成AIを使える環境が整ってきたことで、セキュリティ面での懸念が急速に高まっています。
| 生成AIツールの例 | 主な用途 | 提供元 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 文章生成・対話・要約・コード補完 | OpenAI(米国) |
| Gemini | 文章生成・画像理解・検索連携 | Google(米国) |
| Microsoft Copilot | Office製品との連携・業務自動化 | Microsoft(米国) |
| Claude | 長文処理・対話・コンテンツ生成 | Anthropic(米国) |
こうした生成AIツールの多くは海外の事業者によって提供されており、入力したデータがどのように扱われるかを利用者が把握しにくい側面もあります。企業が生成AIを業務に取り入れる際には、利便性だけでなく、情報管理の観点からも慎重な判断が求められます。
1.2 生成AIがもたらすセキュリティリスクとは
生成AIは非常に便利なツールである一方、その仕組みや利用形態から固有のセキュリティリスクをはらんでいます。従来のクラウドサービスやSaaSとは異なり、生成AIは「ユーザーが自然言語で情報を入力する」という特性上、意図せず機密情報や個人情報を外部に送信してしまうリスクが非常に高いのです。
生成AIがもたらす主なセキュリティリスクは、大きく以下の3つの観点から整理することができます。
| リスクの種類 | 具体的な内容 | 影響を受ける対象 |
|---|---|---|
| 情報漏洩リスク | 入力した社内情報や個人情報がAIの学習データとして利用される可能性 | 従業員・顧客・取引先 |
| 不正アクセスリスク | AIツールのアカウントやAPIが第三者に悪用される可能性 | 企業システム全体 |
| 誤情報・悪用リスク | フィッシングメールや偽コンテンツの生成など、悪意ある用途への転用 | 社会全体・組織内部 |
2023年には、サムスン電子の社員が社内の機密コードをChatGPTに入力し、情報が外部に流出するリスクが発覚したとして大きな話題となりました。この出来事は日本国内でも広く報道され、生成AIへの無防備な情報入力がいかに危険であるかを多くの企業が認識するきっかけとなりました。
また、生成AIツールによっては、ユーザーが入力したデータをモデルの改善・学習のために利用することをデフォルトで許可している場合があります。利用規約を確認せずに使い始めた結果、意図せず社内情報が学習データとして提供されてしまうケースも起こりえます。
さらに、生成AIは非常に流暢かつ説得力のある文章を生成できるため、サイバー攻撃者がフィッシングメールや偽のビジネスメールを作成するツールとして悪用するリスクも急速に高まっています。これは、企業の情報セキュリティを外部から脅かす新たな脅威として、セキュリティ専門家の間でも強い警戒感が示されています。
こうした背景を踏まえると、生成AIのセキュリティ対策はもはや「大企業だけの問題」ではなく、中小企業や個人事業主を含めたすべての組織・個人にとって取り組むべき喫緊の課題であるといえます。生成AIを安全に活用するためには、リスクの実態を正しく理解し、組織全体で適切な対策を講じることが不可欠です。
2. 生成AIにおける主な情報漏洩リスクの種類
生成AIを業務に取り入れる企業が増える一方で、情報漏洩に関するリスクは多岐にわたります。「どのような場面で、どのような情報が外部に流出しうるのか」を正しく理解することが、適切なセキュリティ対策の第一歩です。ここでは、企業が特に注意すべき代表的な情報漏洩リスクを3つの観点から詳しく解説します。
2.1 入力データの学習・外部流出リスク
生成AIサービスの多くは、ユーザーが入力したテキストをもとにモデルの改善・追加学習に利用する場合があります。たとえば、ChatGPTをはじめとする一般公開型の生成AIサービスでは、デフォルト設定のまま使用すると、入力した内容がサービス提供者のサーバーに送信・保存され、モデルの学習データとして活用される可能性があります。
これは、業務上の機密情報や顧客データを誤って入力してしまった場合に、その情報が意図せず外部に流出するリスクにつながります。特に、社内の未公開プロジェクト情報・取引先との契約内容・財務データなどを生成AIのプロンプトに含めてしまうケースは、実際に多くの企業で問題となっています。
2023年には、大手企業の従業員が社内の機密コードやミーティング内容をChatGPTに入力し、情報管理上の問題として報道された事例もありました。こうした事態を防ぐためには、各サービスのデータ利用ポリシーを十分に確認したうえで、業務利用に適したプランやオプトアウト設定を正しく適用することが重要です。
2.1.1 主要な生成AIサービスにおけるデータ利用ポリシーの比較
| サービス名 | 入力データの学習利用 | オプトアウト(学習拒否)の可否 | 法人向けプランの有無 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT(OpenAI) | デフォルトで学習に使用される場合あり | 可能(設定画面または法人契約で対応) | あり(ChatGPT Team / Enterprise) |
| Microsoft Copilot(法人向け) | Microsoft 365の法人契約ではデータは学習に使用されない | 法人契約で標準的に対応 | あり(Microsoft 365 Copilot) |
| Google Gemini for Workspace | 法人向けでは学習に使用しないとされている | 法人契約で標準的に対応 | あり(Google Workspace向けプラン) |
上記はあくまでも各サービスが公開している情報をもとにした概要です。各サービスの利用規約やプライバシーポリシーは随時更新されるため、導入前および定期的に最新の公式情報を確認することが不可欠です。
2.2 機密情報や個人情報の意図しない漏洩
生成AIを使ったプロンプト(指示文)の入力時に、意図せず機密情報や個人情報が含まれてしまうケースは珍しくありません。従業員が「業務効率化のため」に善意で利用した結果、知らず知らずのうちに情報漏洩を起こしてしまうことがあります。
特に注意が必要な情報の種類は、以下のとおりです。
| 情報の種類 | 具体的な例 | 漏洩した場合のリスク |
|---|---|---|
| 個人情報 | 顧客名・住所・電話番号・メールアドレスなど | 個人情報保護法違反、顧客からの信頼失墜 |
| 営業秘密・機密情報 | 未公開の製品情報、価格戦略、契約内容など | 競合他社への情報流出、不正競争防止法違反のリスク |
| 社内システム情報 | ソースコード、システム構成、セキュリティ設定など | サイバー攻撃の足がかりとなる危険性 |
| 財務・経営情報 | 売上データ、予算計画、M&A関連情報など | インサイダー取引リスク、企業信用の毀損 |
また、生成AIが出力する回答には、過去に学習したデータの断片が含まれる可能性もゼロではありません。悪意のある第三者が巧妙なプロンプトを使って、本来は公開されるべきでない情報をAIから引き出そうとする「プロンプトインジェクション攻撃」も現実の脅威として認識されています。
「この情報を入力しても問題ないか」という意識を従業員一人ひとりが持つことが、意図しない漏洩を防ぐ上での最大の防衛線となります。日常的な業務の中で生成AIを使う場面が増えているからこそ、情報の取り扱いに関するリテラシー教育が急務といえます。
2.2.1 プロンプトインジェクション攻撃とは
プロンプトインジェクション攻撃とは、AIへの入力(プロンプト)に悪意ある指示を埋め込み、AIが本来の制約を超えた動作や情報の出力を行うよう誘導する攻撃手法です。たとえば、Webサービス上で生成AIが顧客対応を行っている場合、攻撃者が特殊なテキストを入力することで、AIが内部設定や非公開情報を漏らしてしまう事態が起こりうります。
この攻撃への対策としては、生成AIに渡す情報の範囲を最小限に絞る「最小権限の原則」の適用や、入出力のフィルタリング機能の導入が有効とされています。
2.3 不正アクセスによるデータ侵害リスク
生成AIサービスそのものへの脆弱性や、企業が構築したAI連携システムへの不正アクセスによって、保存されたデータが侵害されるリスクも見逃せません。生成AIを組み込んだシステムは、APIキーや認証情報の管理が不十分な場合、外部からの侵入口となり得ます。
特に以下のようなシナリオが現実の脅威として挙げられます。
| リスクシナリオ | 原因となりやすい要素 | 想定される被害 |
|---|---|---|
| APIキーの漏洩 | ソースコードへのAPIキーの直接記述、不適切な管理 | 無断利用による料金被害、連携データへの不正アクセス |
| アカウントの不正ログイン | 弱いパスワード設定、多要素認証の未設定 | 過去の入力履歴・出力データの盗取 |
| AIシステムへのサイバー攻撃 | 自社構築のAI基盤のセキュリティ設計の不備 | 大規模なデータ流出、サービス停止 |
| サードパーティ製プラグインの脆弱性 | 未検証の外部プラグインやツールとの連携 | 中間者攻撃による情報傍受、マルウェア感染 |
ChatGPTのプラグイン機能や、生成AIと外部サービスを連携させるシステムを構築している場合は、特に連携部分のセキュリティ評価が重要です。外部プラグインやAPIを通じたデータの流れを把握し、どの経路でどのような情報がやり取りされているかを定期的に棚卸しすることが、不正アクセスによる被害を最小化するための基本的な取り組みです。
また、クラウド型の生成AIサービスを利用する場合は、サービス提供者側のセキュリティ体制(データセンターのセキュリティ認証取得状況、暗号化対応の有無など)もあわせて確認することをおすすめします。SOC 2やISO 27001といったセキュリティ認証を取得しているサービスを選ぶことが、信頼性の判断基準の一つとなります。
3. 生成AIのセキュリティ対策で押さえるべき基本方針
生成AIを業務で活用する際には、便利さの裏にあるリスクをしっかりと理解したうえで、適切な基本方針を定めることが欠かせません。ここでは、企業・個人を問わず実践すべき3つの基本方針をわかりやすく解説します。
3.1 利用規約とプライバシーポリシーの確認
生成AIツールを導入・利用する前に、まず確認すべきなのがサービスの利用規約とプライバシーポリシーの内容です。これを怠ると、入力したデータがAIの学習に使われたり、第三者に提供されたりするリスクを見落とすことになります。
特に以下の点を重点的に確認することが重要です。
| 確認項目 | 確認すべき内容 | リスクが高い場合の例 |
|---|---|---|
| 入力データの学習利用 | ユーザーが入力した情報がAIの学習データとして使用されるか | 「入力内容をモデル改善に利用する」と明記されている場合 |
| データの保存期間 | 入力・出力データがどの程度の期間サーバーに保存されるか | 保存期間が不明または無期限となっている場合 |
| 第三者への提供 | データが提携企業や広告事業者などに提供されるか | 「関連会社と情報を共有する場合がある」と記載されている場合 |
| データの保存場所 | データが国内サーバーに保存されるか、海外サーバーに保存されるか | 海外サーバーへの保存で各国の法律が適用されるリスクがある場合 |
| オプトアウトの可否 | 学習利用をユーザー側がオフにできるか | オプトアウト設定が存在しない、または非常にわかりにくい場合 |
たとえば、ChatGPTをはじめとする多くの生成AIサービスでは、企業向けプランやAPIを利用することでデータの学習利用をオフにするオプションが設けられています。無料プランと有料プランでは、データの取り扱いが大きく異なることも珍しくないため、業務利用では必ずエンタープライズプランや法人向けプランの規約を個別に確認することを推奨します。
また、日本国内のサービスであっても、クラウドインフラとして海外のデータセンターを利用しているケースは少なくありません。データの保存場所が海外である場合、現地の法律によってデータへのアクセスが求められる可能性があるため、注意が必要です。
3.2 入力情報の管理ルールを社内で整備する
利用規約を確認するだけでは十分ではありません。従業員一人ひとりが生成AIに対してどのような情報を入力して良いのかを明確に定めた、社内における入力情報の管理ルールを整備することが不可欠です。
特に生成AIへの入力を原則として禁止すべき情報の種類としては、以下が挙げられます。
| 禁止すべき情報の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 個人情報 | 顧客の氏名・住所・電話番号・メールアドレス・マイナンバーなど |
| 機密情報・営業秘密 | 未公開の製品情報、取引先との契約内容、価格戦略、開発中の技術情報など |
| 財務・経営情報 | 未公開の決算情報、内部の予算計画、M&A関連情報など |
| 認証情報 | パスワード、APIキー、アクセストークンなど |
| 第三者の著作物 | 無断で入力する他者のコード、文章、画像データなど |
ルールを整備する際には、禁止事項を列挙するだけでなく、「なぜその情報を入力してはいけないのか」という理由も合わせて説明することが重要です。理由を理解していなければ、従業員は状況に応じた正しい判断ができません。
また、業務効率化のために生成AIを使いたいという現場のニーズも踏まえ、「使ってはいけない」だけでなく「どのような形に加工すれば使えるか」という代替手段も合わせて示すことで、ルールの実効性が高まります。たとえば、顧客名を「A社」「お客様」などに匿名化したうえでプロンプトに入力するといった運用ルールが有効です。
3.2.1 入力情報管理ルール整備の手順
入力情報の管理ルールを実際に整備するにあたっては、以下の手順で進めることが効果的です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①現状把握 | 社内でどの部署・業務に生成AIが利用されているか、または利用される可能性があるかを洗い出す |
| ②リスク評価 | 各業務で扱う情報の機密度を分類し、生成AIへの入力リスクを評価する |
| ③ルール策定 | 入力禁止情報・条件付き入力可情報・入力可情報を明確に区分したルールを策定する |
| ④周知・教育 | 策定したルールを全従業員に周知し、定期的な研修で継続的に教育する |
| ⑤見直し・改善 | 生成AIの機能アップデートや新たなリスクの発生に合わせてルールを定期的に見直す |
3.3 アクセス権限の適切な設定と管理
生成AIツールを組織全体で利用する場合、誰でも自由にアクセスできる状態にしておくことは大きなリスクを伴います。アクセス権限を役職・業務内容・情報の機密度に応じて適切に設定・管理することが、情報漏洩を防ぐうえでの基本的なセキュリティ対策となります。
アクセス権限の管理において実践すべき具体的な施策は以下のとおりです。
| 施策 | 内容と目的 |
|---|---|
| 最小権限の原則の徹底 | 各ユーザーが業務に必要な最低限のアクセス権のみを付与し、不要な情報へのアクセスを防ぐ |
| 多要素認証(MFA)の導入 | パスワードに加えてスマートフォンによる認証など複数の認証要素を組み合わせ、不正ログインを防止する |
| アカウントの定期的な棚卸し | 退職者や異動した従業員のアカウントを速やかに無効化し、不要なアクセス権を削除する |
| 部門・役割ごとの権限設計 | 部門や職種に応じたアクセスポリシーを設計し、情報の横断的な閲覧・入力を制限する |
| 利用ログの記録と定期監査 | 誰がいつ何の目的で生成AIを利用したかをログとして記録し、不審なアクセスを早期に検知する |
特に注意が必要なのは、退職・異動・契約終了などの際に速やかにアカウントを無効化しないと、元従業員や関係者が生成AIツールにアクセスし続けるリスクが生じるという点です。組織変更が発生した際には、情報システム部門と連携してアカウント管理を徹底することが求められます。
また、生成AIツールにAPIを経由してアクセスしている場合には、APIキーの管理も重要な課題です。APIキーが漏洩すると、攻撃者が不正にサービスを利用したり、蓄積されたデータへアクセスしたりする恐れがあります。APIキーは定期的にローテーションし、ソースコードや社内チャットなどへの直接記載を避けるよう運用ルールを定めることが重要です。
3.3.1 アクセス権限管理における役割分担の明確化
アクセス権限の管理を適切に機能させるためには、管理責任の所在を明確にすることも必要です。以下のように役割を分担することが一般的です。
| 担当者・部門 | 主な役割 |
|---|---|
| 情報システム部門(IT管理者) | アカウントの発行・停止・権限変更の実務対応、ログの収集・管理 |
| 情報セキュリティ責任者(CISO等) | アクセスポリシーの策定・承認、セキュリティインシデント発生時の意思決定 |
| 各部門のマネージャー | 部門内のアクセス権限申請・承認、従業員の異動・退職情報のIT部門への連携 |
| 従業員(エンドユーザー) | 自身のアカウント情報の適切な管理、不審なアクセスや異常の報告 |
このように、特定の担当者だけに管理を委ねるのではなく、組織全体で役割分担を明確にしてアクセス権限管理を運用する体制を整えることが、セキュリティ対策の実効性を高める鍵となります。生成AIの導入・活用が進む中で、こうした基本方針の徹底が企業の信頼性と安全性を守ることに直結します。
4. 企業が取り組むべき生成AIのセキュリティ対策の具体例
生成AIのセキュリティリスクを正しく理解したうえで、企業として実際にどのような対策を講じればよいのかを具体的に把握することが重要です。ここでは、現場レベルで実践できる対策から、組織的・システム的なアプローチまで、体系的に解説します。
4.1 社内ガイドラインの策定と従業員教育
生成AIのセキュリティ対策において、社内ガイドラインの策定は最も優先度の高い取り組みのひとつです。ツールの技術的な設定だけでなく、従業員一人ひとりの行動規範を定めることで、ヒューマンエラーに起因する情報漏洩リスクを大幅に低減できます。
4.1.1 社内ガイドラインに盛り込むべき主な項目
ガイドラインには、生成AIツールの利用可否の判断基準から、入力してはいけない情報の具体的な定義まで、現場が迷わず判断できる内容を明記することが求められます。以下に、代表的な記載項目を整理します。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 利用可能なツール | 会社が承認した生成AIサービスの一覧と利用条件 |
| 入力禁止情報の定義 | 顧客情報・取引先情報・未公開の製品情報・社員の個人情報など |
| 出力データの取り扱い | 生成結果の社外共有・二次利用・保存に関するルール |
| インシデント発生時の対応 | 情報漏洩が疑われる場合の報告ルートと初動対応の手順 |
| 利用記録の保管 | 業務での生成AI利用履歴の記録・保存期間に関する規定 |
4.1.2 従業員教育の実施方法
ガイドラインを策定するだけでなく、従業員がその内容を正しく理解し、日常業務で実践できるよう継続的な教育を行うことが不可欠です。特に、生成AIに関するセキュリティリスクは技術の進化に伴って変化するため、定期的な研修の実施が効果的です。
教育の手法としては、集合研修やeラーニングの活用に加え、実際のインシデント事例をもとにしたケーススタディ形式のトレーニングが理解を深めるうえで有効です。また、新入社員や異動者など、生成AIに不慣れな従業員への個別サポート体制を整えることも重要です。
さらに、研修を実施したことに満足するのではなく、理解度を確認するテストや定期的なアンケートを通じて教育効果を測定し、ガイドラインの改善に反映させるPDCAサイクルを確立することが、長期的なセキュリティ向上につながります。
4.2 生成AIツールの選定基準とセキュリティ評価
企業が生成AIを業務に導入する際、ツールの利便性や機能面だけでなく、セキュリティ面での評価を重視した選定プロセスを設けることが不可欠です。セキュリティ評価なしに生成AIツールを導入することは、知らないうちに機密情報を外部サーバーに送信してしまうリスクを抱えることになります。
4.2.1 ツール選定時に確認すべきセキュリティ要件
生成AIツールを選定する際は、以下の観点からセキュリティ要件を評価することが推奨されます。
| 評価項目 | 確認すべき内容 | 重要度 |
|---|---|---|
| データの学習利用有無 | 入力データがモデルの追加学習に利用されるかどうか | 高 |
| データの保存先と保存期間 | 入力・出力データがどのサーバーにどの期間保存されるか | 高 |
| 暗号化の有無 | 通信・保存時のデータ暗号化方式(TLS、AES-256など) | 高 |
| 第三者機関による認証 | ISO/IEC 27001やSOC 2などのセキュリティ認証の取得状況 | 中〜高 |
| 利用規約・プライバシーポリシー | 日本の個人情報保護法への対応状況、データの第三者提供の有無 | 高 |
| エンタープライズプランの有無 | 企業向けにデータ非学習・専用環境が提供されるかどうか | 中〜高 |
| アクセス制御機能 | ロールベースのアクセス制御(RBAC)や多要素認証(MFA)の対応 | 中 |
4.2.2 エンタープライズプランの活用を検討する
主要な生成AIサービスの多くは、法人・企業向けに「エンタープライズプラン」を提供しています。このプランでは、入力データがモデルの学習に使用されないことを契約上保証している場合が多く、企業利用においては積極的に検討する価値があります。
たとえば、Microsoft Azureが提供するAzure OpenAI ServiceやMicrosoft 365 Copilotの企業向けプランでは、データの学習利用除外や専用環境での運用が可能です。また、Google CloudのVertex AI上でのGemini利用も、エンタープライズ環境としてデータ管理の透明性が確保されています。ツールの導入に際しては、こうした企業向け契約の内容を精査したうえで判断することが求められます。
4.2.3 セキュリティ評価を社内プロセスとして定式化する
生成AIツールの評価を担当者の個人的な判断に委ねるのではなく、情報システム部門やセキュリティ担当者が関与する正式な評価プロセスとして組織内に定式化することが重要です。評価項目をチェックリスト化し、新たなツール導入のたびに同一基準で審査する仕組みを整えることで、属人化を防ぎ、セキュリティレベルの均質化が図れます。
4.3 ログ管理と監視体制の強化
生成AIの利用状況を可視化し、不審な操作や情報漏洩の兆候を早期に検知するためには、ログ管理と監視体制の整備が欠かせません。技術的な対策と運用面の管理を組み合わせることで、セキュリティインシデントへの対応力を高めることができます。
4.3.1 ログ管理の基本と取得すべき情報
生成AIの業務利用においては、誰が・いつ・どのようなプロンプトを入力したかという利用履歴を記録・保管することが基本となります。特に企業のシステムと連携した生成AI環境を構築している場合は、以下のようなログを取得・管理することが推奨されます。
| ログの種類 | 取得目的 |
|---|---|
| アクセスログ | 誰がいつどのツールにアクセスしたかを記録し、不正アクセスを検知する |
| 入力ログ(プロンプトログ) | 従業員が生成AIに入力した内容を記録し、禁止情報の入力有無を確認する |
| 出力ログ | 生成AIが出力した内容を記録し、機密情報が含まれる出力がなかったかを確認する |
| エラーログ | 異常なリクエストや処理失敗を記録し、攻撃や障害の兆候を早期に把握する |
| 権限変更ログ | アクセス権限の変更・付与履歴を記録し、内部不正を防止する |
4.3.2 監視体制の構築と運用のポイント
ログを取得するだけでは不十分であり、収集したログを定期的に分析し、異常検知のルールに基づいてアラートを発出できる監視体制を構築することが重要です。SIEM(セキュリティ情報・イベント管理)ツールを活用することで、大量のログデータを効率的に分析し、リアルタイムでの脅威検知が可能になります。
また、監視業務を特定の担当者のみに依存する体制は、担当者の異動や退職によってセキュリティの空白期間が生まれるリスクがあります。監視プロセスを文書化し、複数の担当者が役割を分担できる体制を整えるとともに、定期的な内部監査を実施することが運用の継続性を確保するうえで有効です。
4.3.3 インシデント発生時の対応フローを整備する
万が一、情報漏洩や不正アクセスのインシデントが発生した場合に備え、発見から報告・対応・再発防止までの一連のフローをあらかじめ整備しておくことが求められます。対応フローが明確でないと、インシデント発生時に対応が遅れ、被害が拡大するリスクがあります。
具体的には、以下のような手順を定めておくことが効果的です。
- インシデントの検知・初期評価(影響範囲と深刻度の確認)
- 関係部門(情報システム部門・法務部門・経営層など)への速やかな報告
- 該当ツールやアカウントへのアクセス制限・遮断措置
- 原因究明と被害範囲の特定
- 関係機関・顧客への通知(必要に応じて個人情報保護委員会への報告)
- 再発防止策の策定とガイドラインへの反映
インシデント対応フローは文書化したうえで、定期的なシミュレーション訓練を実施することで、実際の緊急時に組織全体が迅速かつ適切に動ける体制を維持することが、企業としてのセキュリティ成熟度を高めることにつながります。
5. 生成AIのセキュリティ対策に関する法律・ガイドラインの動向
生成AIの急速な普及に伴い、国内外でさまざまな法律やガイドラインの整備が進んでいます。企業が生成AIを安全に活用するためには、こうした法規制の動向をしっかりと把握し、自社の運用に反映させることが不可欠です。ここでは、日本国内の法律・ガイドラインの現状と、国際的な規制の動向について、わかりやすく解説します。
5.1 個人情報保護法と生成AI利用の注意点
生成AIを業務に活用する際に、まず理解しておかなければならないのが個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)との関係です。生成AIに個人情報を入力することは、第三者提供や目的外利用に該当する可能性があり、法的リスクを伴うケースがあります。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスへの個人情報入力に関して、以下のような点に注意するよう呼びかけています。
| 注意すべき観点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 利用目的の特定 | 個人情報を生成AIに入力する場合、あらかじめ利用目的を特定・公表している必要がある |
| 第三者提供の制限 | 生成AIサービス事業者が個人データを学習等に使用する場合、第三者提供に該当し得るため、本人の同意が原則必要 |
| 要配慮個人情報の取り扱い | 病歴・犯罪歴・人種等の要配慮個人情報を入力する際は、より厳格な管理が求められる |
| 委託先管理 | 生成AIサービスを外部委託として位置づける場合、委託先の監督義務が生じる |
特に注意が必要なのは、入力した情報がAIのモデル学習に使用されるかどうかという点です。多くの生成AIサービスでは、設定によって学習への使用可否を切り替えられますが、デフォルト設定のままでは学習に利用される場合があります。個人情報保護法に違反しないためにも、利用するサービスのプライバシーポリシーを精査し、必要に応じてオプトアウト設定を行うことが重要です。
また、個人情報保護委員会は2023年に生成AIサービスの提供事業者に対して注意喚起を実施しており、企業側においても従業員への周知徹底と運用ルールの整備が求められています。
5.2 経済産業省・総務省が示すAI利用のガイドライン
日本では、経済産業省と総務省を中心に、生成AIの適切な利活用を促進するためのガイドラインが整備されています。これらのガイドラインは法的拘束力を持つものではありませんが、企業が生成AIを安全に導入・運用するうえでの実践的な指針として活用できます。
5.2.1 経済産業省のガイドライン・指針
経済産業省は「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」を公表し、企業がAIを活用する際のリスク管理やガバナンス体制の構築について指針を示しています。このガイドラインでは、AIのライフサイクル全体を通じたリスクアセスメントの実施、責任の所在の明確化、そして継続的なモニタリングの重要性が強調されています。
また、生成AIの普及を受けて、経済産業省はAIセキュリティに関するリスク評価手法や対策の具体化にも取り組んでおり、産業界が参照できる実務的な情報の提供を進めています。
5.2.2 総務省のガイドライン・指針
総務省は「AIネットワーク社会推進会議」を通じて、AIの開発・利活用に関する原則や指針をまとめています。その中では、透明性・公平性・セキュリティ・プライバシー保護といった観点が重要なテーマとして取り上げられており、生成AIの利用においても同様の考え方が適用されます。
さらに、総務省と経済産業省は共同で「生成AIの利活用に関するガイドライン」的な取り組みを進めており、サービス提供者・利用者双方に向けた行動指針の策定が継続的に行われています。企業担当者は、これらの省庁が発表する最新情報を定期的に確認し、自社の運用に反映させる体制を整えることが重要です。
5.2.3 IPA(情報処理推進機構)による情報提供
独立行政法人である情報処理推進機構(IPA)も、生成AIのセキュリティリスクや対策についての情報を積極的に発信しています。IPAが公表する「情報セキュリティ10大脅威」や各種セキュリティガイドラインは、企業の実務担当者が参照すべき信頼性の高い資料です。
| 機関名 | 主な取り組み・資料名 | 対象 |
|---|---|---|
| 個人情報保護委員会 | 生成AIサービスへの個人情報入力に関する注意喚起 | 生成AIサービスの利用者・提供者 |
| 経済産業省 | AIガバナンス・ガイドライン、AIセキュリティに関する指針 | AI活用企業・開発者 |
| 総務省 | AIネットワーク社会推進会議による指針・原則 | AI開発者・提供者・利用者 |
| IPA(情報処理推進機構) | 情報セキュリティ10大脅威、生成AIリスク関連情報 | 企業のセキュリティ担当者 |
5.3 国際的なAI規制の動向と日本企業への影響
生成AIを取り巻く法規制は、日本国内だけでなく国際的にも急速に整備が進んでいます。グローバルにビジネスを展開する企業や、海外製の生成AIサービスを利用する企業にとっては、海外の規制動向を把握し、自社の対応方針に組み込むことが不可欠です。
5.3.1 EUのAI規制法(EU AI Act)
世界で最も包括的なAI規制として注目されているのが、欧州連合(EU)が制定した「EU AI規制法(EU AI Act)」です。この規制法は、AIシステムをリスクの高さによって分類し、それぞれに応じた義務を課す仕組みになっています。
生成AIに関しては「汎用目的AIモデル(GPAI)」として特別な規定が設けられており、透明性の確保・著作権への配慮・セキュリティ対策の実施などが求められます。EU域内でサービスを提供する事業者だけでなく、EU域内のユーザーが利用するサービスを提供する日本企業も対象となり得るため、影響範囲は広くなっています。
5.3.2 G7・広島AIプロセスの動向
2023年に日本が議長国を務めたG7サミットでは、「広島AIプロセス」が立ち上げられ、生成AIに関する国際的な議論が加速しました。その成果として「高度なAIシステムの開発者向け広島プロセス国際指針」が策定され、透明性・説明責任・セキュリティ・プライバシー保護といった原則が国際的に共有されています。
この指針は、グローバルに生成AIを活用する企業が遵守すべき基本的な考え方を示しており、日本企業においても無視できない重要な文書です。
5.3.3 米国におけるAI規制の動向
米国では、大統領令「Safe, Secure, and Trustworthy Artificial Intelligence」が発令され、AIの安全性・セキュリティ・信頼性の確保に向けた取り組みが進んでいます。NISTが策定した「AIリスク管理フレームワーク(AI RMF)」も、企業がAIのリスクを体系的に管理するための実践的な枠組みとして広く参照されています。
| 地域・機関 | 規制・指針の名称 | 主なポイント |
|---|---|---|
| EU | EU AI規制法(EU AI Act) | リスクベースのAI分類・汎用目的AIモデルへの透明性義務 |
| G7 | 広島AIプロセス国際指針 | 透明性・説明責任・セキュリティ・プライバシー保護の原則共有 |
| 米国 | 大統領令・NIST AI RMF | AIの安全・セキュリティ確保とリスク管理フレームワークの策定 |
| 日本 | AI戦略・各省庁ガイドライン | 信頼性・公平性・セキュリティを重視したAI利活用の推進 |
5.3.4 日本企業が今すぐ取り組むべきこと
国内外の法規制・ガイドラインの動向を踏まえると、日本企業が今すぐ実践すべき対応として、以下の点が挙げられます。
- 個人情報保護法への適合状況を定期的に確認し、生成AI利用における個人情報の取り扱いルールを明文化する
- 経済産業省・総務省・IPAが公表するガイドラインを参照し、社内のAIガバナンス体制を整備する
- EU AI Actや広島AIプロセスなど国際的な規制動向を継続的にモニタリングし、グローバル対応の準備を進める
- 法規制の変化に迅速に対応できるよう、法務・情報システム・経営層が連携した体制を構築する
生成AIに関する法規制は現在も進化し続けており、一度整備すれば終わりではなく、継続的な見直しと更新が求められます。法律やガイドラインの変化をいち早くキャッチし、自社の運用ルールへ反映させる仕組みを社内に根付かせることが、生成AIを安全に活用するための基盤となります。
6. まとめ
本記事では、生成AIのセキュリティ対策について、リスクの種類から具体的な対策、法律・ガイドラインの動向まで幅広く解説してきました。生成AIは業務効率化や創造性の向上に大きく貢献する一方で、入力データの外部流出や機密情報の漏洩、不正アクセスといった深刻なリスクを伴います。これらのリスクを未然に防ぐためには、社内ガイドラインの整備と従業員教育、アクセス権限の適切な管理、そして信頼性の高いツールの選定が不可欠です。
また、個人情報保護法への対応や、経済産業省・総務省が示すガイドラインを把握し、組織全体でセキュリティ意識を高めることが、企業としての信頼性維持にも直結します。生成AIを安全かつ効果的に活用するためには、技術面と運用面の両方から継続的に対策を講じることが重要です。
生成AIを業務で活用する環境を整えるには、セキュリティ対策と並んで、処理性能の高い信頼性あるパソコンの導入も欠かせません。ゲーミングPC/クリエイターPCのパソコン選びで悩んだらブルックテックPCへ!
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