初心者向け!AMD FSR とは? DLSSとの違い、メリット・デメリットを簡単解説

ゲーミングPCでより高いフレームレートを実現するための技術「AMD FSR」と「NVIDIA DLSS」。これらのアップスケーリング技術は、低解像度で描画した画像を高解像度に引き上げることで、パフォーマンスと画質のバランスを取る重要な機能です。本記事では、特にRadeon GPUユーザーに注目されるFSRの仕組みと、GeForce RTXシリーズで使えるDLSSとの違いを初心者にもわかりやすく解説します。FSRは幅広いGPUで利用できる汎用性が魅力である一方、DLSSはAI技術による高い画質が特徴。あなたの環境や優先したい要素によって、最適な選択は変わります。この記事を読めば、それぞれの特徴を理解し、自分のPCに最適な設定を選べるようになります。

1. AMD FSR とは

AMD FSR(FidelityFX Super Resolution)は、AMDが開発した画像アップスケーリング技術です。2021年6月に初めて登場したこの技術は、低解像度でレンダリングした画像を高解像度に引き上げることで、ゲームのフレームレート(FPS)を向上させつつ、見た目の画質も維持するという優れた特徴を持っています。

ゲームをプレイする際、特に高解像度(4Kなど)での描画は、グラフィックボード(GPU)に大きな負荷がかかります。FSRは、この負荷を軽減しながらも、プレイヤーが満足できる画質を提供することを目的としています。

FSRの最大の特徴は、特別なハードウェアを必要とせず、幅広いGPUで動作する点です。AMDのRadeonシリーズはもちろん、競合であるNVIDIAのGeForceシリーズや、一部のインテルグラフィックスでも利用できるため、多くのゲーマーが恩恵を受けられる技術となっています。

1.1 FSRの仕組みを簡単に解説

FSRの基本的な仕組みは現在のフレームの情報のみを使って画像を拡大する技術です。

具体的な処理の流れは以下のようになります:

  1. 通常より低い解像度でゲームをレンダリング(例:4K表示なら1440pでレンダリング)
  2. FSRのアップスケーリングアルゴリズムを適用して高解像度に拡大
  3. シャープニング処理を行い、細部をクリアに

例えば、4K解像度(3840×2160)で表示したい場合、内部的には2560×1440などの低い解像度でレンダリングし、そのデータをFSRでアップスケーリングして4K相当に引き上げます。これにより、4K解像度で直接レンダリングするよりも大幅に処理負荷が軽減され、フレームレートの向上につながります。

FSRはゲームエンジン側で実装される技術であるため、ゲーム開発者が対応する必要があります。しかし、AMDはオープンソースとしてFSRを公開しているため、導入のハードルが低く、多くのゲームで採用されています。

FSRの品質モードスケーリング率用途
ウルトラクオリティ1.3倍(約77%の解像度)最高画質重視
クオリティ1.5倍(約67%の解像度)高画質と性能のバランス
バランス1.7倍(約59%の解像度)性能と画質の中間点
パフォーマンス2.0倍(50%の解像度)性能重視
ウルトラパフォーマンス3.0倍(約33%の解像度)最高性能重視(一部バージョンのみ)

上記の品質モードから選択することで、ユーザーは自分のPCの性能に合わせて、画質と性能のバランスを調整できます。例えば、高性能なグラフィックカードを搭載していても4K解像度でヘビーなゲームをプレイする場合は「クオリティ」モードを選ぶことで、ほぼ元の画質を維持しながらフレームレートを向上させることができます。

1.2 FSRのバージョンと進化

AMDは継続的にFSR技術を改良しており、これまでに複数のバージョンがリリースされています。それぞれのバージョンで画質や性能が向上しています。

1.2.1 FSR 1.0

2021年6月に登場した初代FSRは、比較的シンプルなスパティアルアップスケーリングを採用していました。エッジ検出とシャープニングを組み合わせたアルゴリズムにより、低解像度画像を高解像度に拡大します。初代版でも十分な効果がありましたが、細部の再現性や動きのあるシーンでの画質には改善の余地がありました。

1.2.2 FSR 2.0/2.1

2022年5月にリリースされたFSR 2.0は、テンポラル(時間的)情報も活用する「テンポラルアップスケーリング」を導入し、画質が大幅に向上しました。前のフレームの情報を利用して現在のフレームを補完するため、動きのあるシーンでも安定した画質を実現しています。

FSR 2.0の最大の改良点は、モーションベクトル(動きの情報)とゲーム内の深度情報を活用することで、ゴーストやエイリアシング(ジャギー)を効果的に抑制できるようになった点です。これにより、DLSSに近い画質を専用ハードウェアなしで実現しています。

FSR 2.1は2.0のマイナーアップデートで、一部の問題(ゴーストやちらつき)が改善されています。

1.2.3 FSR 3.0

2023年後半に発表されたFSR 3.0は、アップスケーリング技術に加えて「フレーム生成(Frame Generation)」機能を追加しました。これは、実際にレンダリングされた2つのフレームの間に新しいフレームを生成する技術で、理論上はフレームレートを2倍に向上させることができます。

フレーム生成は、モーションベクトルと前後のフレーム情報を使って、中間フレームを推測して生成するもので、これによりさらに滑らかなゲームプレイが可能になります。ただし、この機能はFSR 2.0以上のアップスケーリングとは別の機能として実装されており、単独でも利用可能です。

FSRバージョン主な特徴発表時期
FSR 1.0スパティアルアップスケーリング、エッジ検出とシャープニング2021年6月
FSR 2.0テンポラルアップスケーリング、モーションベクトル活用2022年5月
FSR 2.1FSR 2.0の改良版、ゴーストやちらつき軽減2022年9月
FSR 3.0フレーム生成技術導入、最大2倍のフレームレート向上2023年後半

FSRの各バージョンは基本的に後方互換性があり、新しいバージョンがリリースされても古いGPUでも利用できる点が、多くのユーザーに支持されている理由の一つです。特にFSR 2.0以降では画質が大幅に向上し、競合技術であるNVIDIAのDLSSとの差が縮まっています。

現在も多くのゲームスタジオがFSRを採用しており、特にAAA級タイトルを中心に対応ゲームは増加傾向にあります。これは、FSRがオープンソースであり、GPUの種類を問わず利用できることが大きな要因となっています。

2. DLSS とは

DLSS(Deep Learning Super Sampling)は、NVIDIA社が開発した革新的な画像処理技術です。ゲームのフレームレートを大幅に向上させながら、高品質な映像を維持することを目的としています。2018年に初登場して以来、ゲーミングPC業界に大きな変革をもたらしました。

簡単に言えば、DLSSはゲームを低い解像度でレンダリングした後、AI技術を使って高解像度の映像に変換する技術です。これにより、本来なら高解像度でのレンダリングで必要となる処理負荷を大幅に軽減しながら、見た目の品質はほぼ同等に保つことができます。

2.1 DLSSの仕組みを簡単に解説

DLSSの核となるのは、NVIDIA社が開発した人工知能(AI)です。このAIは何千もの高解像度画像サンプルを分析し学習することで、低解像度の画像から高解像度の画像を「予測」する能力を身につけています。

仕組みとしては、主に次のステップで動作します:

  1. ゲームを実際の表示解像度よりも低い解像度(例えば1080pのモニターで720p)でレンダリング
  2. レンダリングされた低解像度画像と動きベクトル情報をTensorコアに送信
  3. NVIDIA製GPUに搭載された特殊なAIプロセッサー「Tensorコア」が、学習済みのニューラルネットワークを使用して高解像度画像を生成
  4. 生成された高解像度画像を画面に表示

この処理はリアルタイムで行われるため、プレイヤーはスムーズなゲームプレイを体験できます。特に注目すべきは、単純な画像の拡大ではなく、AIが「この場所にはどのようなディテールが存在するはずか」を予測して補完することで、高い品質を実現している点です。

DLSSモード内部レンダリング解像度パフォーマンス向上率推奨用途
品質優先元の解像度の約66〜77%約1.5倍高画質重視のゲーム体験
バランス元の解像度の約58〜60%約1.7倍画質と性能のバランスを求める場合
パフォーマンス元の解像度の約50%約2倍フレームレート重視のゲーム体験
ウルトラパフォーマンス元の解像度の約33%約3倍以上最大限のフレームレート向上が必要な場合

2.2 DLSSのバージョンと進化

DLSSは2018年の登場以来、大幅な進化を遂げています。各バージョンの進化ポイントを見ていきましょう。

2.2.1 DLSS 1.0(初代)

2018年に登場した初代DLSSは、画質と性能のバランスに課題を抱えていました。ゲームごとに個別の学習が必要だったため、対応タイトルも限定的でした。画質面では、特に細かいテクスチャ部分でのぼやけやゴースティング(残像)が目立ち、初期の評価は芳しくありませんでした。

2.2.2 DLSS 2.0

2020年に登場したDLSS 2.0は、前世代から大幅に改良された転機となるバージョンです。汎用AIモデルを採用したことで、ゲームごとの個別学習が不要になり、実装の敷居が下がりました。画質も飛躍的に向上し、元の解像度との違いを見分けるのが難しいレベルに達しました。

主な改良点:

  • 画像の細部やテクスチャの再現性が向上
  • 動きのある場面でのゴースティング軽減
  • 「品質」「バランス」「パフォーマンス」「ウルトラパフォーマンス」の4つのモードを提供開始
  • より多くのゲームタイトルへの対応

2.2.3 DLSS 2.1〜2.3

マイナーアップデートとして、VR対応やゴースティングのさらなる軽減、動的解像度のサポートなどの改良が加えられました。特にDLSS 2.3では、細かい動きを伴うパーティクルエフェクトなどの描写が大幅に改善されています。

2.2.4 DLSS 3.0

2022年9月に発表されたDLSS 3.0は、GeForce RTX 40シリーズより導入された画期的な技術です。従来のスーパーサンプリングに加えて、「フレーム生成」機能を搭載し、AIが中間フレームを生成することでさらなるフレームレート向上を実現しました。

DLSS 3.0の主な特徴:

  • AIによるフレーム生成技術でフレームレートが最大4倍に
  • 新設された「Optical Flow Accelerator」を活用した動き予測
  • CPU制約のあるゲームでもパフォーマンス向上が可能
  • NVIDIA Reflex技術との統合によるレイテンシ低減

2.2.5 DLSS 3.5

2023年に登場したDLSS 3.5では、特にレイトレーシングを使用したゲーム環境での画質向上に焦点が当てられています。新たに「Ray Reconstruction」と呼ばれる技術が導入され、レイトレーシングによるノイズを効果的に除去し、よりクリアな映像を実現しています。

DLSS技術はこのように常に進化を続け、ゲーム体験の品質向上とパフォーマンスの両立に大きく貢献しています。特に最新のRTX 40シリーズGPUでは、これらの技術が最大限に活用できるため、高解像度・高フレームレートのゲームプレイを可能にします。

3. AMD FSR と DLSS の違い

AMD社の「FidelityFX Super Resolution(FSR)」とNVIDIA社の「Deep Learning Super Sampling(DLSS)」は、どちらもゲームのフレームレートを向上させるアップスケーリング技術ですが、根本的な違いがいくつか存在します。ここでは、両技術の主要な違いを詳しく解説していきます。

3.1 画質への影響

FSRとDLSSは画質面で明確な違いがあります。DLSSはAIを活用した高度な画像処理を行うため、特に細部の再現性や動きのある映像での画質維持に優れています。一方、FSRは従来のアルゴリズムベースのアプローチを取っているため、特に第1世代では細部の再現性がDLSSに劣る場合がありました。

最新のFSR 3.0でも、テクスチャの細かいディテールやエッジの処理では、DLSSの方がシャープさと自然さを保持する傾向にあります。特に低解像度からのアップスケーリング率が高い場合(例:1080pから4K)、この差は顕著になります。

比較項目AMD FSRNVIDIA DLSS
テクスチャ詳細やや粗い場合あり細部まで保持される傾向
エッジ処理エイリアシングが目立つ場合あり自然なエッジ処理
動きのある映像ゴースティングが発生する場合あり時間的情報を活用し安定

ただし、FSR 3.0では前世代から大幅な改善が見られ、特に「Quality」モードでは一般ユーザーが判別しづらいレベルまで画質が向上しています。また、好みの問題として、FSRの方がシャープな印象を与えるため、一部のユーザーにはこちらの画質が好まれるケースもあります。

3.2 対応GPU

FSRとDLSSの最も大きな違いは対応GPUの範囲です。FSRはオープンな技術として設計されており、AMDのRadeonはもちろん、NVIDIA GeForce、さらにはIntelのArcグラフィックスカードまで幅広いGPUで利用可能です。さらに、比較的古い世代のグラフィックスカードでも動作します。

一方、DLSSはNVIDIA独自の技術で、RTXシリーズのグラフィックスカードのみでしか利用できません。これはDLSSがTensorコアという専用のAIハードウェアを必要とするためです。

技術対応グラフィックスカード
AMD FSR• AMD Radeon RX 400/500シリーズ以降
• NVIDIA GeForce GTX 10シリーズ以降
• Intel Arc Aシリーズ
• 一部のAPU/IGPUにも対応
NVIDIA DLSS• NVIDIA GeForce RTX 20シリーズ以降
• NVIDIA RTX Aシリーズ(プロフェッショナルカード)

この互換性の違いは、特にミドルレンジからローエンドのPCユーザーにとって重要な差になります。古いグラフィックスカードでもFSRを活用すれば、最新ゲームをより快適にプレイできる可能性があります。

3.3 動作原理

FSRとDLSSは根本的な動作原理が大きく異なります。FSRは主に空間的情報を使用した従来型のアップスケーリング技術であるのに対し、DLSSはディープラーニングAIを活用した先進的な技術です

FSRの場合、特にFSR 1.0と2.0では、基本的に現在のフレームの情報だけを使って画像処理を行います。エッジ検出アルゴリズムを使って、高解像度の映像をシミュレートする仕組みです。FSR 3.0からはフレーム生成技術が加わり、時間的要素も考慮されるようになりました。

一方、DLSSはNVIDIAが数千時間分の高解像度映像でトレーニングしたニューラルネットワークを使用します。低解像度のフレームと動きベクトルを入力として、前のフレームの情報も活用しながら高解像度の映像を生成します。つまり、時間的情報と空間的情報の両方を活用しています。

技術的特徴AMD FSRNVIDIA DLSS
基本アプローチアルゴリズムベース(従来型)AIベース(機械学習)
使用情報FSR 1.0/2.0: 主に空間的情報
FSR 3.0: 空間的情報+フレーム生成
空間的情報+時間的情報
専用ハードウェア不要Tensorコア(RTXシリーズに搭載)
実装方法オープンソースで公開専用SDK(非公開)

この動作原理の違いは、画質だけでなく、対応GPUの範囲にも影響しています。FSRはソフトウェアベースのアプローチのため幅広いハードウェアで動作できますが、DLSSは専用ハードウェアを必要とする代わりに、より高度な処理が可能になっています。

3.4 性能向上効果

両技術とも、ゲームのフレームレートを大幅に向上させることができますが、そのレベルと一貫性には違いがあります。

DLSSは特に「Performance」モードのような低解像度からのアップスケーリングで高いパフォーマンス向上を示すことが多く、その効果は一貫しています。専用のTensorコアで計算を行うため、メインのGPUリソースへの負荷が軽減されるからです。

一方、FSRはGPUの通常の計算ユニットを使用するため、特に高解像度(4K)でのパフォーマンス向上は、使用するGPUの性能によって変動することがあります。ただし、FSR 3.0で導入されたフレーム生成技術(AMD Fluid Motion Frames)により、パフォーマンス向上率は従来よりも大幅に改善されています。

性能比較AMD FSRNVIDIA DLSS
平均性能向上率FSR 1.0/2.0: 約30-70%
FSR 3.0: 約50-100%以上
DLSS 2.0/3.0: 約40-100%以上
プリセットによる差プリセット間の差が大きい
(Quality→Performanceで大幅向上)
バランスが取れている
(Qualityでも十分な性能向上)
レイトレーシング時の効果効果あり(純粋な解像度低下による)非常に効果的
(RTコアとの相乗効果)

実際のゲームでは、DLSSはレイトレーシングのような重い処理を有効にした場合に特に効果を発揮します。NVIDIAのRTコアとTensorコアが連携して動作するためです。FSRもレイトレーシング時に効果はありますが、純粋に解像度を下げて描画負荷を減らすという原理のため、DLSSほどの相乗効果は見られないことが多いです。

ただし、最新のFSR 3.0は従来より大幅に性能が向上しており、特定のゲームではDLSSと同等以上のパフォーマンス向上を示すケースも報告されています。また、FSRが持つ広範なハードウェア互換性は、多くのユーザーにとって大きなメリットとなります。

フレームレートが大幅に向上することで、特に高リフレッシュレートモニター(144Hz以上)を使用している場合、ゲームプレイの滑らかさや反応速度が向上し、競技性の高いゲームでアドバンテージを得られる可能性もあります。

4. AMD FSR のメリット

AMDの「FidelityFX Super Resolution(FSR)」は、多くのゲーマーに利用されるアップスケーリング技術です。特にミドルレンジやローエンドのグラフィックカードを使用しているユーザーにとって、FSRは多くのメリットをもたらします。ここでは、AMD FSRの主な利点について詳しく解説していきます。

4.1 導入のしやすさ

AMD FSRの最大の特徴の一つが、その導入のしやすさです。FSRはオープンソース技術として提供されているため、開発者が自由に利用できます。これによりゲーム開発者は比較的容易にFSRをゲームに実装することができます。

NVIDIAのDLSSと比較すると、FSRは特殊なハードウェアを必要としないため、実装のハードルが低いという大きなメリットがあります。そのため、インディーゲームを含む多くのタイトルでFSRのサポートが増えています。

また、一部のゲームではユーザー側で後から導入できるmodも存在し、公式にサポートされていないゲームでもFSRの恩恵を受けられる場合があります。例えば「Special K」などのツールを使用することで、FSRを対応していないゲームにも適用できることがあります。

導入方法特徴難易度
ゲーム内設定公式対応ゲームで設定から有効化初心者でも簡単
外部ツール使用非対応ゲームにも適用可能やや複雑
AMDドライバー機能一部のAMD GPUではドライバーレベルで適用可能中程度

4.2 幅広いGPUへの対応

AMD FSRの最も素晴らしい点の一つが、メーカーを問わない幅広いGPUへの対応です。FSRはAMDのRadeonシリーズだけでなく、NVIDIAのGeForceシリーズ、さらにはIntelのArcグラフィックスなど、様々なGPUで利用できます。

FSRは世代を問わず使用できるため、比較的古いグラフィックボードでも恩恵を受けられます。AMD Radeon RX 400シリーズや、NVIDIA GeForce GTX 10シリーズといった数世代前のGPUでも、FSRを利用することで性能向上が期待できます。

一方、DLSSはNVIDIAのRTXシリーズにのみ対応しているため、選択肢が限られます。この点がFSRの大きなアドバンテージです。

GPUメーカーFSR対応シリーズ最低要件
AMDRadeon RX 400シリーズ以降特に制限なし
NVIDIAGeForce GTX 10シリーズ以降特に制限なし
IntelArc Aシリーズ、内蔵グラフィックス特に制限なし

さらに、ノートパソコンの内蔵GPUでもFSRを利用できるケースが多く、モバイルゲーミングの選択肢としても優れています。このようにハードウェアの制約が少ないことは、多くのユーザーにとって大きなメリットです。

4.3 手軽な性能向上

FSRを使用することで、比較的低いハードウェア負荷で大幅な性能向上が期待できます。具体的には、フレームレート(FPS)の向上が最も顕著です。例えば、4K解像度でプレイしていたゲームを内部的には低解像度でレンダリングし、FSRで高品質に拡大することで、同じグラフィックカードでも大幅に高いフレームレートを得られます。

特にFSR 2.0以降では、画質を維持しながらもパフォーマンスを向上させる効果が高く、多くのゲームで30〜60%程度のフレームレート向上が期待できます。これにより、最新のゲームでも快適にプレイできる可能性が広がります。

FSRは次の5つの品質モードを提供しており、ユーザーは自分の環境や好みに合わせて選択できます:

FSR品質モード内部解像度(4K表示時)性能向上効果画質への影響
ネイティブ100%(3840×2160)なし標準
クオリティ約66.6%(2560×1440)中程度軽微
バランス約58.3%(2259×1270)大きいやや目立つ
パフォーマンス50%(1920×1080)非常に大きい目立つ
ウルトラパフォーマンス約33.3%(1280×720)最大著しい

これに加えて、FSRは消費電力の削減効果も期待できます。内部的に低解像度でレンダリングするため、GPUの負荷が軽減され、特にノートPCでは発熱の抑制やバッテリー持続時間の向上にも寄与します。

また、FSRはアップスケーリングだけでなく、最新のFSR 3.0ではフレーム生成技術「Frame Generation」も導入され、さらなる性能向上が見込めます。これにより、DLSSのFrame Generationに近い機能が、より幅広いハードウェアで利用できるようになります。

無料で利用できる点も見逃せないメリットです。特別なライセンス料や追加料金不要で、対応ゲームであれば誰でも簡単に利用できます。これはゲーム開発者にとってもユーザーにとっても大きなメリットといえるでしょう。

5. AMD FSR のデメリット

AMD FSR(FidelityFX Super Resolution)は多くのメリットを持つ技術ですが、競合技術と比較するといくつかのデメリットも存在します。ここでは、FSRを使用する際に知っておくべき主な欠点について詳しく解説します。

5.1 DLSSと比較した画質

FSRの最大の弱点は、NVIDIA DLSSと比較したときの画質差です。特に低解像度からのアップスケーリング時にこの差が顕著になります。

FSRは空間的アップスケーリング技術を採用しているため、単一フレームの情報のみを使って画像を拡大処理します。この方式では、細かいディテールやテクスチャの復元において限界があります。

具体的な画質の違いは以下の点に表れます:

  • 遠距離にある細かいテクスチャの再現精度
  • 動きの激しいシーンでのディテール保持能力
  • エッジの鮮明さとアンチエイリアシング品質
  • 細かい文字や線の可読性

特にFSR 1.0では、「Ultra Quality」設定でも細部の情報が失われがちで、若干のぼやけが生じることがあります。FSR 2.0と3.0で大幅に改善されましたが、それでもDLSSが持つAIによる学習ベースの予測能力には及びません。

画質の比較ポイントFSRDLSS
テクスチャディテールやや劣る(特に低解像度入力時)優れている(AIによる再構築)
動きのあるシーンの品質ゴーストやブラーが発生しやすい時間的情報を利用して安定
シャープネス過度にシャープになりやすい自然なシャープネス
アーティファクト(不自然な描写)発生しやすい比較的少ない

FSR 2.0以降では時間的情報も活用するようになり画質が向上しましたが、AIを活用したDLSSの精緻な画像再構築能力と比べると、まだ一歩劣るのが現状です。

5.1.1 解像度別の画質劣化

FSRの画質劣化は使用する解像度設定によって大きく変わります。「Quality」や「Ultra Quality」モードでは許容範囲内ですが、「Performance」や「Ultra Performance」モードではかなり目立つ画質劣化が生じます。

例えば1080p解像度で「Performance」モードを使用すると、実質的なレンダリング解像度は540p程度になり、テクスチャのディテールや遠景の細部が大きく失われます。同条件のDLSSと比較すると、FSRでは失われるディテールが多くなります。

5.2 設定項目の少なさ

FSRはシンプルさがメリットでもありますが、カスタマイズ性という観点ではデメリットにもなります。

DLSSでは、NVIDIA Control Panelやゲーム内設定から様々な調整が可能ですが、FSRの設定オプションは限られています。

  • シャープネスの詳細調整ができない
  • 動き補正の度合いを調整できない
  • ノイズ処理の強度を変更できない
  • ゲームごとの最適化プロファイルがない

これらの制限により、特定のゲームやグラフィック要素に対して細かく最適化することが難しく、設定の自由度を求めるユーザーにとっては物足りなさを感じる場合があります。

5.2.1 コントロールパネル統合の欠如

NVIDIAのDLSSはGeForce Experienceやコントロールパネルと緊密に統合されており、ドライバレベルでの最適化やモニタリングが容易です。一方、AMDのFSRにはそのような統合機能が不足しています。

Radeon Software内でのFSR関連の詳細な調整やモニタリングツールが限られているため、パフォーマンスと画質のバランスを細かく調整したいユーザーにとっては不便さがあります。

5.3 動作の不安定性

FSRは一部のゲームやシステム構成において、DLSSと比較して動作が不安定になることがあります。特にFSR 2.0以降の時間的アップスケーリングを使用する場合、以下のような問題が報告されています:

  • ゴースティング(動く物体の残像)の発生
  • 細かいパターンや髪の毛などの描画における不自然さ
  • 照明効果が強いシーンでのアーティファクト
  • カメラの急な動きに対する適応の遅さ

これらの問題は全てのゲームで発生するわけではありませんが、DLSSが持つAIによる高度な画像処理と比較すると、FSRはより多くの視覚的アーティファクトを生じさせる傾向があります

5.4 フレームタイム安定性の問題

FSRを使用する際、特に負荷の高いゲームでは、フレームタイムの変動(フレームの表示にかかる時間のばらつき)が大きくなることがあります。これは体感的な滑らかさに影響し、同じフレームレートでもDLSSを使用した場合より滑らかさが劣ることがあります。

パフォーマンス指標FSRDLSS
フレームタイム安定性変動が大きい場合あり比較的安定
入力遅延への影響若干の増加傾向NVIDIA Reflexとの併用で低減
CPUオーバーヘッドやや大きい専用ハードウェアにより軽減

FSRの処理はGPUのシェーダーを使って行われるため、GPUの負荷が高い状況では処理の優先度が変動し、結果としてフレームタイムの不安定さにつながることがあります。

以上のようなデメリットはありますが、FSRはバージョンアップを重ねるごとに改善されています。特にFSR 3.0では多くの問題点が解消されつつあり、今後さらなる進化が期待される技術です。ご自身のハードウェア環境や優先したい要素(画質か性能か)に合わせて、FSRとDLSSを適切に選択することをおすすめします。

6. DLSS のメリット

NVIDIA(エヌビディア)が開発したDLSS(Deep Learning Super Sampling)技術には、ゲーム体験を大きく向上させる複数のメリットがあります。特に高性能なグラフィックを求めるゲーマーにとって、DLSSは非常に魅力的な機能となっています。

6.1 高画質と高フレームレートの両立

DLSSの最大のメリットは、高画質な映像と高いフレームレートを同時に実現できる点です。従来、ゲーマーは「美しいグラフィックを楽しむ」か「滑らかな動きを優先する」かの二者択一を迫られていました。

DLSSを使用すると、実際の描画解像度を下げながらも、高解像度と同等かそれ以上の画質を実現できるため、GPUへの負荷を大幅に軽減できます。例えば1080pで内部処理しながらも、4K解像度に近い画質でゲームを楽しむことが可能となります。

フレームレートの向上率は設定やゲームにより異なりますが、多くの場合で40〜100%程度のパフォーマンス向上が見られます。特に以下のシーンで効果を発揮します:

  • 4Kゲーミングで安定60FPS以上を目指す場合
  • レイトレーシングなどの負荷の高い機能を有効にしたい場合
  • 高リフレッシュレートモニターの性能を最大限に活用したい場合
  • ノートパソコンなど熱問題のある環境でゲームをプレイする場合
解像度DLSSなし平均FPSDLSSあり平均FPS(品質モード)パフォーマンス向上率
1080p70〜80FPS110〜130FPS約60%向上
1440p50〜60FPS85〜100FPS約70%向上
4K30〜40FPS60〜75FPS約100%向上

これにより、従来であればプレイが厳しかった重量級タイトルでも、快適なフレームレートでのゲームプレイが可能になります。特にFPSやレーシングゲームなど、反応速度が重要なゲームジャンルでは大きなアドバンテージとなります。

6.2 AIによる高度なアップスケーリング

DLSSの核となる技術は、NVIDIAが独自開発した人工知能(AI)によるディープラーニングです。これが従来のアップスケーリング技術と一線を画す優位性をもたらしています。

DLSSは数千種類のゲーム画像をNVIDIAの巨大なスーパーコンピューターで学習させることで、単なる拡大ではなく「高解像度で本来どのように見えるべきか」を予測して画像を生成します。この技術により、以下のような高度な処理が可能になります:

  • 細部のディテールや質感の保持・強化
  • テキストやUIの鮮明さの維持
  • モアレやノイズの効果的な除去
  • 時間的情報(前フレームの情報)を活用した安定した映像生成
  • エッジの描画精度向上(ジャギーの低減)

特にDLSS 2.0以降では、動きの激しいシーンでもアーティファクト(不自然な映像の乱れ)が少なく、非常に自然な画質を実現しています。DLSSの画質モードには以下のようなオプションがあります:

DLSSモード特徴おすすめのシーン
品質優先最高の画質を維持、性能向上は控えめ高解像度でも十分なFPSが出る環境
バランス画質と性能のバランスを取ったモード一般的なゲームプレイに最適
パフォーマンス性能向上を優先したモードフレームレート重視のコンペティティブゲーム
ウルトラパフォーマンス最大限の性能向上を実現8K解像度や最重量級タイトルに対応

DLSS 3以降では、フレーム生成技術も追加され、リアルなフレーム間予測によってさらなるパフォーマンス向上が実現されています。これにより、CPUボトルネックのあるゲームでも高いフレームレートが可能になりました。

また、DLSSはゲーム内の動きベクトルデータを活用するため、単純なアップスケーリングでは難しい「動きのある場面での画質維持」にも強みを発揮します。例えば、高速で動くキャラクターやオブジェクトの輪郭も、ぼやけることなく鮮明に表示されるのです。

さらに、DLSSはゲーム内のアンチエイリアシング(エッジの滑らかさを向上させる処理)効果も内包しているため、一般的なTAAなどの手法と比べて、動きのあるシーンでのゴースティング(残像)が少なく、クリアな映像を実現します。

こうした高度なAI処理がリアルタイムに行われる点も、DLSSの大きな強みと言えるでしょう。

7. DLSS のデメリット

NVIDIAのDLSSは優れた技術である一方で、いくつかの重要なデメリットが存在します。これらの制限事項を理解することで、ご自身のPCに最適な画質向上技術を選択する際の参考になるでしょう。

7.1 対応GPUの限定

DLSSの最も大きなデメリットは、対応GPUがNVIDIA製のRTXシリーズに限定されている点です。具体的には、RTX 2000シリーズ以降のGPUのみがDLSSを利用できます。

これはDLSSがTensorコアという専用ハードウェアを必要とするためです。Tensorコアは機械学習処理に特化した演算ユニットで、RTXシリーズにのみ搭載されています。

NVIDIA GPUシリーズDLSS対応必要ハードウェア
RTX 4000シリーズ第4世代Tensorコア
RTX 3000シリーズ第3世代Tensorコア
RTX 2000シリーズ第1世代Tensorコア
GTX 1000シリーズ以前×Tensorコアなし
AMD全GPUシリーズ×非対応
Intel Arc×非対応

つまり、AMD製やIntel製のGPUを使用しているユーザーはDLSSを利用できないという大きな制約があります。また、古い世代のNVIDIA GPUを使用している場合も同様です。ゲーミングPCの予算が限られている場合、この制限は無視できない問題となります。

7.2 ゲームへの実装が必要

DLSSはゲーム開発者側が個別に実装する必要がある技術です。そのため、すべてのゲームで利用できるわけではありません。特に:

  • 開発者がDLSSの実装に時間とリソースを割く必要がある
  • インディーゲームや小規模スタジオのゲームでは実装されにくい
  • ゲームによって実装品質にばらつきがある

2023年現在、DLSSに対応しているゲームタイトル数は増えているものの、市場に存在するゲーム全体から見ればまだ限定的です。特に日本のゲームタイトルではDLSS対応が遅れているケースもあります。

7.3 アップデートや最適化の必要性

DLSSは継続的に進化している技術であるため、最新バージョンのメリットを享受するには:

  • 定期的なドライバーのアップデートが必要
  • ゲーム側のアップデートも必要になる場合がある
  • 古いDLSSバージョンを使用しているゲームでは新しいGPUの性能を十分に活かせない可能性がある

特に、DLSS 3.0以降の「フレーム生成」機能はRTX 4000シリーズ以降でしか利用できないなど、GPUの世代によって利用できる機能に差があることも理解しておく必要があります。

7.4 システムリソースへの負荷

DLSSはAIを活用した処理を行うため、システムリソースに一定の負荷をかけます:

  • Tensorコアを使用するため、GPUの消費電力が増加する
  • 処理遅延(レイテンシー)が若干発生する場合がある
  • 特にDLSS 3.0のフレーム生成機能使用時は、追加の処理負荷がかかる

通常はフレームレート向上によるメリットの方が大きいですが、システムの冷却が不十分な環境では熱問題につながる可能性があります。

7.5 画質の一貫性の問題

DLSSは多くの場合で優れた画質を提供しますが、状況によっては画質に一貫性がない場合があります:

  • 動きの激しいシーンでゴーストが発生する場合がある
  • 細かいテクスチャやテキストでぼやけが生じることがある
  • ゲームによって最適な設定が異なり、都度調整が必要

特にDLSSの「パフォーマンス」モードでは、AMD FSRと比較しても画質の低下が目立つ場合があります。最新バージョンでは改善されていますが、完璧ではありません。

7.6 ソフトウェアとの互換性の問題

DLSSはゲーム以外のアプリケーションではほとんど利用できません:

  • 主にゲーム向けに設計された技術であるため、クリエイティブソフトなどで活用できない
  • モディファイされたゲームでは正常に機能しない場合がある
  • 一部のアンチチートソフトウェアとの互換性問題が報告されている

これらの制限は、ゲーム以外での用途やカスタマイズを重視するユーザーにとっては大きなデメリットとなります。

DLSS主要デメリット影響度解決策
RTXシリーズのみ対応AMD FSRなど代替技術の利用
ゲーム側の実装が必要対応ゲームリストの確認
最新バージョン対応の制限ドライバーの定期アップデート
システムリソース要求低〜中十分な冷却と電源の確保
画質の一貫性低〜中ゲームごとに最適設定を探る

これらのデメリットを理解した上で、ご自身のハードウェア環境や優先する要素(画質か性能か)に合わせて、DLSSとFSRを適切に選択することが重要です。次の章では、FSRとDLSSをどのように使い分けるべきかについて詳しく解説します。

8. FSRとDLSSの使い分け

FSRとDLSSはどちらも素晴らしいアップスケーリング技術ですが、それぞれに特徴があるため、状況に応じた使い分けが重要です。自分のPC環境や求める画質、プレイするゲームによって最適な選択は変わってきます。ここでは具体的な使い分け方について解説します。

8.1 求める画質レベルで使い分ける

最高の画質と滑らかなゲームプレイの両方を求める場合は、DLSSが優れた選択となります。NVIDIAのAIを活用したDLSSは、特に細部の再現性や動きのある映像での品質に強みがあります。

一方で、多少の画質低下を許容できる代わりに、幅広いハードウェアで動作させたい場合はFSRが最適です。FSRは特にバージョン2.0以降で画質が大幅に向上しており、多くの場合で十分満足できる視覚体験を提供します。

優先事項おすすめ技術理由
最高画質DLSSAIによる高度な補間で細部まで美しく再現
最大パフォーマンスFSR軽量アルゴリズムで処理負荷が低い
バランス重視DLSS Quality / FSR Quality両技術とも高品質モードなら妥協点として有効
テキスト読みやすさDLSS小さな文字の鮮明さを維持しやすい

ゲームジャンルによっても最適な選択は変わります。例えば、細かいディテールが重要なオープンワールドRPGや美麗なビジュアルが売りのアドベンチャーゲームではDLSSが優位です。一方、高速な動きが中心のFPSやレースゲームでは、FSRのパフォーマンスモードでフレームレートを優先する選択も有効でしょう。

また、プレイする解像度によっても選択は変わります。4K解像度では両技術の差が小さくなる傾向がありますが、1080pのような低解像度では画質の違いがより顕著になります。

8.2 対応状況で使い分ける

最も現実的な使い分け方法は、単純にハードウェアとゲームの対応状況に合わせることです。

NVIDIA RTXシリーズのGPUをお使いの場合は、DLSSが利用できるゲームであればDLSSを選択するのが最適です。特にRTX 2000シリーズ以降のGPUでは、DLSSの恩恵を最大限に受けられます。

一方、AMD RadeonシリーズやNVIDIAの旧世代GPUをお使いの場合は、FSRを活用するのが賢明です。FSRは幅広いハードウェアで動作するため、特にミドルレンジやエントリーレベルのGPUを使っているユーザーにとって貴重な選択肢となります。

お使いのGPUおすすめ技術注意点
NVIDIA RTX 20/30/40シリーズDLSS(対応ゲームの場合)最新のDLSS 3.5が使えるのはRTX 40シリーズのみ
NVIDIA GTX 16シリーズ/10シリーズFSRDLSSはRTXシリーズ専用
AMD Radeon RX 5000/6000/7000シリーズFSRFSR 3.0はRX 7000シリーズで最適化
Intel Arc GPUシリーズFSR / XeSSIntel独自のXeSSも検討

ゲームの対応状況も重要なポイントです。現時点ではFSRに対応しているゲームの数がDLSSよりも多い傾向にあります。特にインディーゲームや小規模スタジオの作品ではFSRの採用率が高くなっています。

また、将来性も考慮すべき点です。FSRは徐々に普及が進んでおり、オープンソースという性質からも今後さらに多くのゲームに対応していくことが予想されます。一方でDLSSはNVIDIAの専用ハードウェアを活かした高度な技術であり、画質面での優位性は今後も維持されるでしょう。

さらに、ゲーム内の設定も重要です。多くのゲームでは両方の技術が実装されている場合があり、実際にプレイしながら比較してみるのが最も確実な選択方法となります。以下のステップで自分に最適な設定を見つけられます:

  1. ゲーム内でDLSSとFSRの両方を試す
  2. 各技術の異なる品質設定(Quality、Balanced、Performanceなど)を比較
  3. フレームカウンターを表示して実際のパフォーマンス向上を確認
  4. 静止画と動画の両方で画質を比較(特に動きの多いシーンでの違いに注目)

最終的には、自分のハードウェア環境、好みのゲームタイトル、そして重視する要素(画質かパフォーマンスか)のバランスで最適な選択は決まります。両技術は日々進化しているため、定期的にドライバーを更新して最新の改良を取り入れることも大切です。

9. AMD FSR と DLSS の今後の展望

9.1 両技術の開発ロードマップ

アップスケーリング技術は急速に進化しており、AMDとNVIDIAの両社は積極的に開発を続けています。FSRとDLSSの将来について見ていきましょう。

AMDは既にFSR 3.0を発表しており、フレーム生成技術「Fluid Motion Frames」を導入することで、さらなるフレームレート向上を目指しています。この技術は、実際に描画したフレームの間に新たなフレームを生成することで、見かけ上のフレームレートを最大2倍にする効果があります。

一方、NVIDIAはDLSS 3.5に進化させ、Ray Reconstruction(レイ再構築)技術によってレイトレーシングの品質をさらに向上させています。DLSS 3の「Frame Generation」と組み合わせることで、高画質と高フレームレートの両立をさらに推し進めています。

技術最新バージョン次期バージョンの予想機能
AMD FSRFSR 3.0さらなるフレーム生成精度の向上、より多くのゲームタイトルへの対応拡大
NVIDIA DLSSDLSS 3.5AIアルゴリズムの改良、よりスマートなゴーストやエイリアシングの低減

9.2 オープン規格とクローズド規格の行方

FSRとDLSSの最大の違いの一つは、FSRがオープンな規格であるのに対し、DLSSがNVIDIA独自のクローズドな技術である点です。この違いは今後の展開にも大きな影響を与えるでしょう。

AMDのFSRはオープン規格であることから、Intelなど他社GPUでも活用できる点が大きな強みとなっています。実際にIntelはXeSS(Xe Super Sampling)という独自技術を開発しながらも、FSRとの互換性を重視しています。

一方、NVIDIAはDLSSの専用ハードウェアによる優位性を保ちつつ、一部の技術をより広く利用できるようにする動きも見せています。例えば、NVIDIA Image Scalingは特殊なハードウェアを必要とせず、より広いGPU環境で利用可能です。

業界全体としては、アップスケーリング技術の標準化に向けた動きが加速する可能性があります。将来的には、ハードウェアに依存しない共通規格と、各社の特徴を活かした独自拡張が共存する形になるかもしれません。

9.3 モバイルデバイスへの展開

現在、FSRとDLSSはPC向けとして主に発展してきましたが、今後はモバイルデバイスへの展開が進むことが予想されます。特にゲーミングスマートフォンやゲーミングタブレット、携帯ゲーム機などへの応用が期待されています。

AMDはすでにSamsung製Exynos搭載デバイスとの協業を発表しており、モバイルデバイスでのグラフィック性能向上を目指しています。FSRのようなソフトウェアベースの技術は、ハードウェアの制約が厳しいモバイル環境でも比較的導入しやすいという利点があります。

NVIDIAもShield TVなどのAndroidベースのデバイスを展開しており、将来的にはモバイル向けDLSS技術の展開も十分考えられます。バッテリー駆動のデバイスでは、高画質を保ちながら消費電力を抑えられる技術として、アップスケーリングの価値はさらに高まるでしょう。

9.4 AIとの融合がもたらす可能性

アップスケーリング技術とAIの融合は、今後さらに加速していくと予想されます。現在DLSSで既に活用されているディープラーニングは、今後FSRにも取り入れられる可能性があります。

AIの進化により、よりリアルタイムで状況に応じた最適なアップスケーリングが可能になり、これまで以上に「ネイティブ解像度と見分けがつかない」品質を低負荷で実現できるようになるでしょう

また、アップスケーリングに留まらず、AIを活用したグラフィック処理の最適化全般が進むことで、ゲームだけでなく、クリエイティブ作業や科学計算などさまざまな分野での応用が期待されます。例えば、3DCGの制作過程でのプレビュー表示や、リアルタイムレンダリングの高速化などに活用できるでしょう。

9.5 開発者にとっての展望

ゲーム開発者やグラフィックアプリケーション開発者にとって、FSRとDLSSの進化は大きな意味を持ちます。今後はこれらの技術の実装がより簡単になり、標準的な機能として組み込まれるようになるでしょう。

現在でもUnreal EngineやUnityなどの主要ゲームエンジンでは、FSRやDLSSのプラグインやネイティブサポートが提供されています。将来的には、これらの技術をさらに容易に実装できるツールやAPIが整備され、開発者の負担が軽減されることが予想されます。

また、開発者は限られたハードウェアリソースでより美しいグラフィックを実現できるようになるため、クリエイティブな表現の幅が広がります。特に中小規模の開発スタジオにとって、アップスケーリング技術の進化は大きなメリットとなるでしょう。

9.6 消費者にとっての未来

一般ユーザーにとって、FSRとDLSSの進化は次のようなメリットをもたらすと考えられます:

  • 既存のグラフィックカードでも最新ゲームを快適にプレイできる期間が延長される
  • 消費電力の削減により、ノートPCのバッテリー持続時間が向上する
  • VRやARなどの没入型体験の品質が向上する
  • 4K、8Kなどの高解像度ディスプレイを最大限に活用できる

特に注目すべきは、これらの技術がグラフィックカードの世代交代サイクルに与える影響です。高度なアップスケーリング技術により、少し前の世代のグラフィックカードでも最新ゲームを満足できる品質でプレイできるようになり、結果的にハードウェアの長寿命化につながる可能性があります

また、クラウドゲーミングサービスにおいても、これらの技術が活用されることで、より少ない帯域でも高品質なゲーム体験を提供できるようになるでしょう。

9.7 競合技術との関係

FSRとDLSSだけでなく、IntelのXeSS、マイクロソフトのDirectML Super Resolution、そしてゲームエンジン独自のアップスケーリング技術など、さまざまな競合技術が登場しています。これらの技術間の競争が、全体としての技術進化を加速させていくでしょう。

アップスケーリング技術開発元特徴
FSRAMDオープン規格、ハードウェア非依存
DLSSNVIDIA専用AIコア使用、高品質
XeSSIntelクロスハードウェア対応、AIベース
DirectML Super ResolutionMicrosoftDirectX APIの一部として統合

長期的には、これらの技術は相互に影響し合いながら発展し、最終的にはレンダリングパイプラインの標準的な一部として組み込まれていく可能性が高いでしょう。ユーザーにとっては、より多様な選択肢が提供されることになります。

グラフィック技術の進化は止まることを知りません。FSRとDLSSは、リアルタイムグラフィックスの未来を形作る重要な技術として、今後も進化を続けるでしょう。私たちゲーマーとクリエイターは、その恩恵を受けながら、より豊かなデジタル体験を楽しむことができるようになります。

10. まとめ

今回はAMD FSRとNVIDIA DLSSについて詳しく解説しました。両技術は画面解像度を低く描画した後に拡大処理することで、ゲームのフレームレートを向上させるという共通点がありますが、その実現方法には大きな違いがあります。DLSSはディープラーニングを活用した高度なAI技術を使用し、専用のTensorコアを持つRTXシリーズのGPUでのみ動作します。一方FSRは空間的アップスケーリングを基本とし、より多くのGPUに対応しているのが特徴です。

画質と性能のバランスでは、一般的にDLSSの方が高画質を維持しながらのフレームレート向上が期待できますが、FSRは幅広いハードウェアで利用できる汎用性が魅力です。特にFSR 2.0以降は画質面でも大きく向上しており、両者の差は以前より縮まっています。自分のPCに搭載されているグラフィックボードがNVIDIA RTXシリーズならDLSS、それ以外のGPUならFSRを活用するのが基本的な選択肢となるでしょう。

どちらの技術も今後さらなる進化が期待されており、ゲーム体験の向上に大きく貢献していくことでしょう。特にFSR 3.0ではフレーム生成技術の導入が発表されており、DLSS 3との差がさらに縮まる可能性もあります。最終的には、お使いのハードウェアや、プレイするゲームの対応状況、そして求める画質と性能のバランスに応じて、最適な技術を選ぶことが重要です。ゲーミングPC/クリエイターPCのパソコン選びで悩んだらブルックテックPCへ!

【パソコン選びに困ったらブルックテックPCの無料相談】

ブルックテックPCは「3年故障率1%未満」という圧倒的な耐久性を持つマシンを販売しており、映像編集を行うCG/VFXクリエイター,VTuber,音楽制作会社、プロゲーマー等幅広い用途と職種で利用されています。
BTOパソコンは知識がないと購入が難しいと思われがちですが、ブルックテックPCでは公式LINEやホームページのお問い合わせフォームの質問に答えるだけで、気軽に自分に合うパソコンを相談することが可能!
問い合わせには専門のエンジニアスタッフが対応を行う体制なので初心者でも安心して相談と購入が可能です。
パソコンにおける”コスパ”は「壊れにくいこと」。本当にコストパフォーマンスに優れたパソコンを探している方や、サポート対応が柔軟なPCメーカーを探している方はブルックテックPCがオススメです!

ブルックテックPCの公式LINE 友達登録はこちらから!
友だち追加

TOP