
ゼロトラストとは「何も信頼しない」を前提としたセキュリティの考え方で、テレワークやクラウドの普及により、いま多くの企業が導入を検討しています。
この記事では、ゼロトラストの基本的な意味から従来のセキュリティとの違い、注目される背景、主な構成要素、導入のメリット・デメリット、実現するための代表的なツール、そして具体的な導入手順と事例まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。
読み終えるころには、ゼロトラストの全体像と自社への取り入れ方がしっかりと理解できます。
1. ゼロトラストとは何か
1.1 ゼロトラストの基本的な考え方
ゼロトラストとは、「何も信頼しない(Trust Nothing)」を前提としたセキュリティの考え方です。
社内ネットワークにいるユーザーであっても、社外からアクセスしているユーザーであっても、すべてのアクセスを「信頼できないもの」として扱い、都度確認・検証を行います。
従来のセキュリティモデルでは、「社内ネットワーク内にいれば安全」という前提が広く信じられてきました。しかしゼロトラストでは、その前提そのものを否定します。
ネットワークの内側・外側にかかわらず、すべてのアクセスを検証・認証・認可することが、ゼロトラストの核心です。
具体的には、以下のような原則に基づいて動作します。
- すべてのユーザー・デバイス・アプリケーションを「信頼しない」ものとして扱う
- アクセスのたびに本人確認とデバイスの状態確認を行う
- 必要最低限の権限のみを付与する(最小権限の原則)
- 通信・操作のログをすべて記録し、継続的に監視する
この考え方は、パスワードの漏洩や不正アクセスによる被害を最小限に抑えることを目的としており、現代のサイバーセキュリティにおける新常識として世界中の企業・組織に広まっています。
1.2 ゼロトラストという言葉の由来と歴史
「ゼロトラスト(Zero Trust)」という言葉は、2010年にアメリカの調査会社フォレスター・リサーチのアナリストであるジョン・キンダーバーグ氏が提唱した概念です。
当時、社内ネットワークへの過度な信頼がセキュリティ上のリスクになっているという問題意識から生まれました。
その後、2013年ごろからGoogleが社内でゼロトラストの考え方を取り入れた「BeyondCorp(ビヨンドコープ)」と呼ばれるセキュリティフレームワークを構築・公開したことで、テクノロジー業界での注目度が一気に高まりました。
さらに2020年には、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)がゼロトラストアーキテクチャに関するガイドライン「NIST SP 800-207」を公開し、ゼロトラストはセキュリティの国際的な標準的考え方として位置づけられるようになりました。
日本国内においても、総務省や経済産業省がゼロトラストに関するガイドラインや参考資料を相次いで公開しており、官民問わずその重要性が認識されています。
1.3 従来のセキュリティモデルとの違い
ゼロトラストをより深く理解するためには、従来のセキュリティモデルとの違いを把握することが重要です。従来のモデルは「境界型セキュリティ(ペリメータセキュリティ)」と呼ばれ、社内ネットワークの「外側」と「内側」を明確に区切り、外部からの不正アクセスを防ぐことに重点を置いた考え方です。
いわば、城の外堀で敵を防ぐようなイメージです。城の中(社内ネットワーク)に入ってしまえば、原則として自由に行動できる状態でした。
しかし、この考え方はテレワークの普及やクラウドサービスの利用増加によって、現実に合わなくなってきています。
以下の表で、境界型セキュリティとゼロトラストの主な違いを整理します。
| 比較項目 | 境界型セキュリティ(従来モデル) | ゼロトラスト(新モデル) |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 社内ネットワーク内は安全とみなす | すべてのアクセスを信頼しない |
| 信頼の基準 | ネットワークの場所(内側か外側か) | ユーザー・デバイス・状況に基づく継続的な検証 |
| アクセス制御 | 一度認証されれば広範囲にアクセス可能 | 都度認証・認可し、最小権限のみを付与 |
| テレワーク・クラウドへの対応 | 想定外のため脆弱になりやすい | 場所を問わず均一なセキュリティを維持できる |
| 内部不正・内部脅威への対応 | 内側にいるユーザーは原則信頼されるため弱い | 内部ユーザーも継続的に検証するため対応できる |
| ログ・監視 | 境界付近の通信を中心に監視 | すべての通信・操作を記録・分析 |
このように、ゼロトラストは従来の境界型セキュリティが抱える限界を補うかたちで設計されたセキュリティモデルです。
特に、社外からのアクセスが当たり前になった現代のビジネス環境においては、ゼロトラストの考え方はより現実的かつ効果的なセキュリティ戦略といえます。
2. ゼロトラストが注目される背景
ゼロトラストという考え方は、以前から存在していたものの、ここ数年で急速に注目を集めるようになりました。
その背景には、働き方やITインフラの大きな変化、そしてサイバー攻撃の深刻化という複数の要因が重なっています。それぞれの背景を丁寧に見ていきましょう。
2.1 テレワークやクラウド利用の普及による課題
2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、多くの企業がテレワークを急速に導入しました。
それと同時に、Microsoft 365やGoogle WorkspaceといったクラウドサービスやSaaSの利用も爆発的に増加しています。
こうした変化によって、社員が会社のオフィス以外の場所から、さまざまなデバイスを使って業務システムにアクセスする機会が格段に増えました。
自宅のパソコンや個人のスマートフォン、カフェのWi-Fiなど、アクセス元の環境は多種多様です。
従来のセキュリティモデルでは、「社内ネットワークの中にいる人は信頼できる」という前提でシステムが設計されていました。
しかしテレワークやクラウド活用が当たり前になった現代では、社員が「社内にいる」という状況そのものが曖昧になっています。この変化が、従来のセキュリティの仕組みでは対応しきれないという課題を浮き彫りにしたのです。
| 働き方・IT環境の変化 | セキュリティ上の課題 |
|---|---|
| テレワークの普及 | 社外から社内システムへのアクセスが増加し、接続元の安全性が不明確になる |
| クラウドサービスの活用 | データが社内サーバーだけでなく、クラウド上にも分散して保管される |
| 個人デバイス(BYOD)の利用 | 管理が行き届いていない端末から業務データにアクセスするリスクが生じる |
| SaaS・外部サービスとの連携 | 社内ネットワークの「外」にあるサービスとのやり取りが常態化する |
2.2 サイバー攻撃の高度化と情報漏洩リスクの増大
テレワークやクラウド利用が広がると同時に、サイバー攻撃の手口も年々巧妙になっています。
かつては「怪しいメールを開かなければ大丈夫」という意識でもある程度対処できた時代もありましたが、現在はそのような単純な対策だけでは通用しません。
特に近年増加しているのが、正規の認証情報を盗んでシステムに侵入する「不正アクセス」や、組織内部の人間が関与する「内部不正」、そして業務に関係するメールに偽装して情報を詐取する「標的型攻撃」などです。
これらの攻撃は、一度ネットワークへの入口さえ突破してしまえば、内部で自由に活動できてしまう従来の構造の弱点を巧みに突いています。
また、情報漏洩が発生した場合の被害も以前と比べて格段に大きくなっています。
個人情報保護法の改正により、情報漏洩時の企業への罰則は強化されており、社会的信用の失墜や損害賠償といったリスクも現実的な問題として企業経営に直結しています。
こうした背景から、侵入されても被害を最小限に抑えられる仕組みとしてゼロトラストへの関心が高まっています。
2.3 境界型セキュリティの限界
これまで多くの企業が採用してきたセキュリティモデルは、「境界型セキュリティ」と呼ばれるものです。これは、社内ネットワークと外部ネットワークの間にファイアウォールなどの防御壁を設け、「内側は安全、外側は危険」という境界線を引いてセキュリティを確保する考え方です。
しかしこのモデルには、現代の環境では機能しにくい根本的な問題があります。
- クラウドサービスやテレワークの普及により、「社内」と「社外」の境界線が事実上消えつつある
- 一度内部に侵入した攻撃者や悪意ある内部関係者に対して、横方向への自由な移動(ラテラルムーブメント)を許してしまう
- 社員が多様なデバイスや場所から接続するため、境界での検査だけでは安全性を担保できない
- VPNを利用した場合でも、認証情報が流出すれば社内ネットワーク全体への侵入口になりうる
境界型セキュリティは、オフィスが一か所に集まり、全員が同じ社内ネットワークを使って働いていた時代には有効でした。
しかし、働き方の多様化とIT環境の複雑化が進む現代においては、「入口だけを守れば安全」という前提そのものが成り立たなくなっています。
こうした従来モデルの限界を補うアプローチとして、「何も信頼しない、常に検証する」というゼロトラストの考え方が、世界中の企業や政府機関から強く支持されるようになっているのです。
3. ゼロトラストの主な構成要素
ゼロトラストは「何も信頼しない」という考え方を実現するために、複数の技術や仕組みを組み合わせて構成されています。
単一のツールや製品を導入すれば完成するというものではなく、アイデンティティ管理・デバイス検証・ネットワーク制御・アクセス管理・継続的な監視という5つの柱を連携させることで、はじめてゼロトラストのセキュリティモデルが成り立ちます。ここでは、それぞれの構成要素について詳しく解説します。
3.1 アイデンティティ管理と多要素認証
ゼロトラストにおいて、「誰がアクセスしているのか」を正確に確認することは最も基本的かつ重要なステップです。
ユーザーのアイデンティティ(身元)を厳格に管理し、なりすましや不正アクセスを防ぐことがこの要素の目的です。
従来のセキュリティでは、社内ネットワークに接続しているというだけで「安全な利用者」とみなすケースが多くありました。
しかしゼロトラストでは、ネットワークの内外を問わず、すべてのユーザーに対してアクセスのたびに本人確認を行います。
この本人確認を強化する仕組みとして広く使われているのが、多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)です。多要素認証とは、パスワードだけに頼らず、以下のような複数の要素を組み合わせて認証を行う方法です。
| 認証の種類 | 概要 | 具体例 |
|---|---|---|
| 知識情報 | 本人だけが知っていること | パスワード、PINコード |
| 所持情報 | 本人だけが持っているもの | スマートフォン、ICカード、ワンタイムパスワード生成アプリ |
| 生体情報 | 本人の身体的特徴 | 指紋認証、顔認証、虹彩認証 |
これらを組み合わせることで、仮にパスワードが漏洩した場合でも不正ログインを防ぐことができます。
また、シングルサインオン(SSO)と組み合わせることで、利便性を損なわずに高いセキュリティレベルを維持することも可能です。
3.2 デバイスの信頼性確認
ゼロトラストでは「誰が」アクセスするかだけでなく、「どの端末から」アクセスするかも重要な判断基準になります。
正しいユーザーが本人確認を済ませたとしても、そのデバイス自体がマルウェアに感染していたり、OSのアップデートが適用されていなかったりすれば、セキュリティリスクは依然として存在します。
そのため、ゼロトラストではアクセスを許可する前にデバイスの状態を確認するプロセスが組み込まれています。確認される主な項目は以下のとおりです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| OSのバージョン | 最新のセキュリティパッチが適用されているか |
| マルウェア対策ソフトの状態 | セキュリティソフトが有効かつ最新の定義ファイルを保持しているか |
| デバイス登録状況 | 組織が管理・承認した端末かどうか |
| 暗号化の状態 | ストレージが暗号化されているか |
このようなデバイスの健全性チェックは「デバイスコンプライアンス」とも呼ばれ、MDM(モバイルデバイス管理)ツールやEDRツールと連携して実施されるのが一般的です。
3.3 ネットワークのセグメンテーション
ネットワークのセグメンテーションとは、社内ネットワークをいくつかの小さな区画(セグメント)に分割し、それぞれの区画への移動を制限することで、万が一不正アクセスが発生した場合でも被害を最小限に食い止める仕組みです。
従来の境界型セキュリティでは、ネットワーク内部に一度入ってしまえば比較的自由に社内システムへアクセスできるという構造上の弱点がありました。攻撃者がひとたび内部に侵入すると、横方向(ラテラルムーブメント)に移動しながら多くのシステムや機密データに到達できてしまいます。
ゼロトラストにおけるネットワークセグメンテーションでは、特に「マイクロセグメンテーション」と呼ばれる細粒度の分割が推奨されます。これにより、あるセグメントで侵害が起きても、他のセグメントへの影響を遮断することができます。
| 従来のネットワーク構成 | ゼロトラストのセグメンテーション |
|---|---|
| 内部ネットワークは基本的に全員がアクセス可能 | 区画ごとにアクセス権限を厳格に管理 |
| 一度侵入されると被害が広がりやすい | 侵害の影響範囲を局所的に封じ込められる |
| 境界の内外で信頼度が大きく異なる | すべてのセグメント間通信を検証・制御する |
3.4 アクセス制御と最小権限の原則
ゼロトラストを支える重要な考え方のひとつが「最小権限の原則(Principle of Least Privilege)」です。これは、各ユーザーやシステムには業務上必要な最小限のアクセス権のみを付与し、不要な権限は一切与えないという考え方です。
例えば、経理部門のスタッフが人事システムのデータにアクセスできる権限を持っている必要はありません。また、ある社員が特定のプロジェクトに関わっている期間だけ、そのプロジェクト関連のリソースへのアクセスを許可し、プロジェクト終了後は速やかに権限を剥奪するという運用が求められます。
このアクセス制御は、以下のような判断要素を組み合わせて動的に行われます。
| 判断要素 | 概要 |
|---|---|
| ユーザーのアイデンティティ | 本人確認済みの正規ユーザーかどうか |
| デバイスの状態 | アクセスに使用する端末が安全であるか |
| 場所・時刻 | 通常とは異なる場所や時間帯からのアクセスでないか |
| アクセス対象のリソース | アクセスしようとしているデータやシステムの機密レベル |
| 行動パターン | 過去の利用履歴と比較して異常がないか |
これらの要素を総合的に評価し、リスクが高いと判断された場合はアクセスを拒否したり、追加の認証を求めたりするといった柔軟な対応が可能になります。
3.5 ログ監視と継続的な検証
ゼロトラストは「一度認証すれば安全」という前提を持ちません。
認証後もユーザーの行動やシステムの状態を継続的に監視し、怪しいふるまいが検知された場合には即座にアクセスを遮断したり再認証を求めたりする仕組みが不可欠です。
この継続的な検証を実現するために、すべてのアクセスログや操作履歴を詳細に記録・保存することが求められます。ログを蓄積するだけでなく、SIEM(セキュリティ情報イベント管理)などのツールを活用してリアルタイムに分析することで、インシデントの早期発見や原因追跡が可能になります。
継続的な検証のポイントをまとめると以下のとおりです。
| 取り組み | 目的 |
|---|---|
| すべてのアクセスログの記録 | 不正アクセスや異常行動の痕跡を残す |
| リアルタイムの行動分析 | 通常とは異なる操作を即時に検知する |
| セッションの定期的な再評価 | ログイン後に状況が変化した場合でも対応できる |
| インシデント発生時の迅速な対応 | 被害範囲を最小化し、原因を素早く特定する |
ゼロトラストは「設定して終わり」ではなく、継続的な監視・検証・改善のサイクルを繰り返すことで、はじめてその効果を最大限に発揮できるセキュリティモデルです。
組織のIT環境や脅威の状況は常に変化するため、ログを活用した継続的な見直しが欠かせません。
4. ゼロトラストの導入メリットとデメリット
ゼロトラストの概念や構成要素を理解したうえで、次に気になるのは「実際に導入するとどんなメリットがあるのか」「逆にどんなリスクや課題があるのか」という点ではないでしょうか。ここでは、ゼロトラストを導入することで得られる具体的なメリットと、導入時に注意すべきデメリット・課題を整理して解説します。
4.1 導入することで得られる主なメリット
ゼロトラストを導入することで得られるメリットは多岐にわたります。単純にセキュリティが強化されるだけでなく、働き方の柔軟性向上や運用効率の改善にもつながる点が、多くの企業から注目される理由のひとつです。
4.1.1 セキュリティリスクの大幅な低減
ゼロトラストの最大のメリットは、内部・外部を問わず、あらゆるアクセスを継続的に検証することで、不正アクセスや情報漏洩のリスクを大幅に低減できる点です。
従来の境界型セキュリティでは、社内ネットワークに一度入ってしまえば比較的自由に動き回れるため、内部不正や侵入後の横展開(ラテラルムーブメント)が深刻な被害につながるケースがありました。
ゼロトラストではすべてのアクセスが検証対象となるため、万が一攻撃者が侵入したとしても、被害の拡大を最小限に抑えられます。
4.1.2 テレワーク・クラウド環境への柔軟な対応
テレワークの普及やクラウドサービスの活用が当たり前になった現在、場所やデバイスを問わず安全にアクセスできる環境を整備できるのもゼロトラストの大きなメリットです。
VPNに依存しない設計が可能になるため、自宅や外出先からの業務接続が多い組織でも、セキュリティレベルを落とすことなく柔軟な働き方を実現できます。
4.1.3 内部脅威への対策強化
従来のセキュリティモデルでは、社内の正規ユーザーによる不正行為(内部脅威)への対策が手薄になりがちでした。
ゼロトラストでは最小権限の原則に基づいたアクセス制御を徹底するため、必要以上の権限を持つユーザーが存在しにくくなり、内部不正リスクの低減にもつながります。
4.1.4 コンプライアンス対応の強化
個人情報保護法やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)をはじめとするコンプライアンス要件への対応においても、ゼロトラストは有効に機能します。
アクセスログの継続的な記録と監視が仕組みとして組み込まれているため、監査証跡を残しやすく、規制対応や内部統制の強化にも役立ちます。
4.1.5 被害範囲の局所化(インシデント発生時の影響最小化)
万が一セキュリティインシデントが発生した場合でも、ネットワークセグメンテーションや最小権限の原則が機能していれば、被害の範囲を特定の領域に封じ込めることができ、システム全体への影響を抑えることが可能です。これにより、復旧コストや業務停止リスクの軽減にもつながります。
4.2 導入時に注意すべきデメリットや課題
ゼロトラストには多くのメリットがある一方で、導入にあたっては相応のコストや準備が必要です。過度な期待を持って導入を進めると、思わぬ課題に直面することもあります。あらかじめデメリットや注意点を把握しておくことで、より現実的な導入計画を立てられます。
4.2.1 導入コストと運用コストがかかる
ゼロトラストの実現には、IAM(アイデンティティおよびアクセス管理)やEDR(エンドポイントの検知と対応)、SASEなど、複数のソリューションを組み合わせる必要があります。
そのため、初期導入コストだけでなく、継続的な運用・保守にかかるコストも相応に発生します。
特に中小企業にとっては、予算確保が大きなハードルとなることがあります。
4.2.2 段階的な導入が必要で即効性を期待しにくい
ゼロトラストは一夜にして完成するものではなく、既存のシステムや業務フローを段階的に見直しながら導入していく必要があります。
全社的に一気に移行しようとすると業務への影響が大きくなるため、優先度の高い部分から少しずつ整備していくアプローチが基本です。即時の効果を期待しすぎると、途中で挫折してしまうリスクがあります。
4.2.3 既存システムとの互換性・統合の難しさ
長年にわたって構築・運用してきた既存のITシステムやレガシーシステムが、ゼロトラストのアーキテクチャとうまく統合できないケースがあります。
特にオンプレミス環境が残っている組織では、クラウドベースのゼロトラストソリューションとの連携に追加の設計や開発が必要になることがあります。
4.2.4 ユーザー体験(UX)への影響
多要素認証や継続的な本人確認など、セキュリティを強化するほど、ユーザーが都度認証を求められる場面が増えます。
これにより、業務のスピードや利便性が低下すると感じるユーザーが増え、社内の反発や運用定着の障壁になるケースがあります。認証体験をできるだけシームレスに保つ設計上の工夫が重要です。
4.2.5 専門知識を持つ人材の確保が必要
ゼロトラストを正しく設計・運用するには、セキュリティに関する一定の専門知識が求められます。
社内にセキュリティ専門人材がいない場合は、外部ベンダーやコンサルタントへの依存度が高まり、コストや意思決定のスピードに影響が出ることがあります。
人材育成や採用計画とセットで考えることが大切です。
4.3 メリット・デメリットの比較まとめ
ゼロトラスト導入のメリットとデメリットを整理すると、以下のとおりです。導入を検討する際の判断材料としてご活用ください。
| 観点 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| セキュリティ | 内外問わず不正アクセス・情報漏洩リスクを低減 | 設定が不十分だと逆にリスクが残る可能性がある |
| 働き方・柔軟性 | テレワークやクラウド環境でも安全にアクセス可能 | 多要素認証などで操作が増え、利便性が低下する場合も |
| 内部脅威対策 | 最小権限の原則により内部不正リスクを低減 | 権限管理の設計が複雑になることがある |
| コンプライアンス | ログ記録・監視が仕組み化され監査対応が容易に | ログの管理・分析にもコストと工数がかかる |
| コスト | インシデント発生時の被害・復旧コストを抑えられる | 初期・運用コストが高く、中小企業には負担になることも |
| 導入・運用 | 段階的な導入で既存環境を活かしながら移行できる | 専門知識を持つ人材が必要で、即効性は期待しにくい |
ゼロトラストはセキュリティの万能薬ではありませんが、正しく設計・運用できれば、現代のサイバー脅威に対してきわめて効果的なセキュリティ体制を築くことができます。
メリットとデメリットの両面をしっかり理解したうえで、自社の環境や規模に合った導入戦略を立てることが成功への近道です。
5. ゼロトラストを実現する代表的な技術とツール
ゼロトラストは「考え方・概念」であるため、それを実際のシステムとして実現するには、複数の技術やツールを組み合わせることが必要です。
ここでは、ゼロトラストアーキテクチャを構成する代表的な技術とツールをわかりやすく解説します。それぞれの役割と特徴を正しく理解することが、導入を成功させるための第一歩です。
5.1 IAM(アイデンティティおよびアクセス管理)
IAM(Identity and Access Management)とは、「誰が」「何に」アクセスできるかを一元的に管理するための仕組みです。
ゼロトラストの根幹となる考え方は「すべてのアクセスを検証する」ことであり、IAMはその検証の起点となる最も重要な技術要素のひとつです。
IAMでは、ユーザーのIDとパスワードによる認証だけでなく、多要素認証(MFA)や、ユーザーの役職・部署に応じた権限付与(ロールベースアクセス制御)も管理します。社内外を問わず、すべてのユーザーに対して適切な権限のみを与えることで、万が一アカウントが乗っ取られた場合でも被害を最小限に抑えることができます。
代表的なIAMソリューションとしては、Microsoft Azure Active Directory(Microsoft Entra ID)やOktaなどが国内でも広く利用されています。クラウドサービスとの連携にも優れており、テレワーク環境下でのセキュリティ強化に有効です。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| ユーザー認証 | IDとパスワードに加え、多要素認証によって本人確認を強化する |
| アクセス権限管理 | 役職・部署・業務内容に応じて、必要最小限の権限のみを付与する |
| シングルサインオン(SSO) | 一度の認証で複数のサービスに安全にアクセスできる仕組みを提供する |
| 監査ログの記録 | 誰がいつどのリソースにアクセスしたかを記録・追跡できる |
5.2 EDR(エンドポイントの検知と対応)
EDR(Endpoint Detection and Response)とは、パソコンやスマートフォン・タブレットといった「エンドポイント(末端デバイス)」における不審な挙動をリアルタイムで検知し、迅速に対応するためのセキュリティ技術です。
従来のウイルス対策ソフト(アンチウイルス)は、既知のウイルスのパターンと照合して脅威を検出する仕組みでしたが、EDRは未知の脅威や高度な標的型攻撃に対しても、振る舞い分析や機械学習を活用して検知・対処できる点が大きな違いです。
ゼロトラストの観点では、社内ネットワークに接続するすべてのデバイスが信頼できるとは限りません。EDRを導入することで、エンドポイントの状態を継続的に監視し、感染が疑われる端末を即座に隔離するなどの対応が可能になります。国内でも、CrowdStrikeのFalconやTrend MicroのApex Oneなどが多くの企業に導入されています。
| 比較項目 | 従来のアンチウイルス | EDR |
|---|---|---|
| 脅威の検出方法 | 既知のウイルス定義ファイルとの照合 | 振る舞い分析・機械学習による異常検知 |
| 未知の脅威への対応 | 対応が難しい | 対応可能 |
| インシデント対応 | 限定的 | 検知・隔離・調査・復旧まで対応 |
| ログの記録・分析 | 基本的な記録のみ | 詳細なログを継続的に記録・分析 |
5.3 SASE(セキュアアクセスサービスエッジ)
SASE(Secure Access Service Edge:サシー)とは、ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウド上で一体化して提供するアーキテクチャです。2019年にガートナー社が提唱した比較的新しい概念で、テレワークやクラウドサービスの利用が当たり前になった現代のIT環境に最適化されたセキュリティモデルとして注目されています。
従来は、社内のデータセンターにファイアウォールやVPNを設置して社内ネットワークを守るのが一般的でした。しかしクラウドサービスの普及により、トラフィック(通信量)の多くが社外に向かうようになり、すべての通信を社内経由でチェックするモデルは非効率になっています。SASEはこの問題を解決するために、セキュリティ機能をクラウド側に配置し、ユーザーがどこからアクセスしても一貫した安全性を確保します。
SASEは以下のような複数の機能を統合したサービスです。
| 構成技術 | 役割 |
|---|---|
| SD-WAN | ネットワーク接続を最適化し、クラウドへのアクセスを効率化する |
| SWG(セキュアウェブゲートウェイ) | インターネットへの通信を監視・フィルタリングして脅威を防ぐ |
| CASB(クラウドアクセスセキュリティブローカー) | クラウドサービスへのアクセスを可視化・制御する |
| FWaaS(ファイアウォール・アズ・ア・サービス) | クラウドベースのファイアウォールで通信を保護する |
| ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス) | アイデンティティと文脈に基づいた安全なアクセス制御を提供する |
国内ではCiscoのUmbrellaやZscaler Internet Accessなどがよく知られており、中堅・大企業を中心に導入が進んでいます。
5.4 ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)
ZTNA(Zero Trust Network Access)とは、ゼロトラストの考え方をネットワークアクセスに特化して実装した技術です。従来のVPN(仮想プライベートネットワーク)に代わるソリューションとして、特にテレワーク環境において注目されています。
VPNは「一度認証を通過すれば社内ネットワーク全体にアクセスできる」という仕組みであるため、アカウントが不正利用された場合のリスクが非常に高くなります。
一方ZTNAでは、ユーザーのアイデンティティ・デバイスの状態・アクセス元の場所・時間帯などの複数の条件を毎回検証したうえで、必要なリソースへのアクセスのみを許可するため、より細かく安全なアクセス制御が実現できます。
たとえば「営業部のAさんが、会社支給の端末から、勤務時間内に、顧客管理システムにアクセスする」という状況が条件を満たす場合のみアクセスを許可し、それ以外の状況ではたとえ正規のアカウントであってもアクセスを拒否するような制御が可能です。
| 比較項目 | VPN | ZTNA |
|---|---|---|
| アクセス範囲 | 社内ネットワーク全体へのアクセスが可能 | 許可されたリソースのみにアクセスを限定 |
| 認証の頻度 | 接続時に一度認証するのみ | アクセスのたびに継続的に検証する |
| デバイスの状態確認 | 基本的に行わない | デバイスの健全性を毎回確認する |
| 不正アクセス時の被害範囲 | 社内全体に広がるリスクがある | 許可されたリソースのみに限定される |
| クラウドとの親和性 | 低い(社内インフラ前提の設計) | 高い(クラウドネイティブな設計) |
ZTNAはSASEの構成要素のひとつでもあり、単独で導入することも、SASE全体の一部として活用することも可能です。国内では、Zscaler Private AccessやPalo Alto Networks PrismaAccessなどが代表的なZTNAソリューションとして知られています。
これらの技術はそれぞれ単独で機能するものではなく、IAM・EDR・SASE・ZTNAを組み合わせることで、初めてゼロトラストアーキテクチャとして機能する点を理解しておくことが重要です。
どの技術を優先して導入するかは、自社の環境・課題・予算によって異なります。次章では、ゼロトラストを実際に導入するための進め方と手順について解説します。
6. ゼロトラスト導入の進め方と手順
ゼロトラストの概念を理解したとしても、実際に自社へ導入するとなると「どこから手をつければいいのかわからない」という方は多いはずです。ゼロトラストは一度に全てを切り替えるものではなく、現状の課題を整理しながら、段階的かつ計画的に進めていくことが成功の鍵となります。
ここでは、初めてゼロトラストの導入を検討している担当者でも迷わず進められるよう、具体的なステップと注意点を丁寧に解説します。
6.1 現状のセキュリティ課題を把握する
ゼロトラスト導入の第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。闇雲にツールを導入しても、根本的な課題が解決されなければ効果は限定的になってしまいます。まずは現在のセキュリティ環境を棚卸しし、どこにリスクがあるのかを明確にするところから始めましょう。
6.1.1 保護すべき資産と情報の洗い出し
自社が保有する情報資産を整理することが出発点になります。
どのデータが最も重要で、誰がどのシステムにアクセスしているのかを可視化することが、ゼロトラスト設計の土台となります。以下のような観点で整理してみましょう。
| 確認項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 情報資産の種類 | 顧客データ、社内文書、財務情報、知的財産など |
| アクセスしているユーザー | 社員、業務委託者、取引先、リモートワーカーなど |
| 使用しているデバイス | 社給PC、私物デバイス(BYOD)、スマートフォンなど |
| 利用しているシステム・サービス | オンプレミスのサーバー、クラウドサービス(Microsoft 365、Google Workspaceなど) |
| 現在の認証方式 | パスワードのみ、VPN経由のアクセスなど |
6.1.2 既存のセキュリティ対策の評価
現在運用しているセキュリティ対策が、ゼロトラストの考え方と照らし合わせたときにどの程度対応できているかを評価します。
「信頼しない、常に検証する」というゼロトラストの原則に対して、現状の仕組みが前提として信頼を与えすぎていないかどうかを確認することが重要です。
ファイアウォールやVPNだけに依存した境界型の対策が中心であれば、見直しの余地が大きいと判断できます。
6.2 優先順位をつけてステップごとに導入する
ゼロトラストは一夜にして完成するものではありません。全社的な変革を一度に行おうとすると、コストと混乱が大きくなり、導入が頓挫してしまうリスクがあります。
リスクの高い領域から優先的に対策を講じ、段階的に適用範囲を広げていくアプローチが現実的かつ効果的です。
6.2.1 フェーズ別の導入ロードマップ
以下のように導入フェーズを区切って進めると、全体の進捗が管理しやすくなります。各フェーズでの成果を確認しながら次のステップへ進むことで、無理のない移行が可能になります。
| フェーズ | 主な取り組み | 目的 |
|---|---|---|
| フェーズ1:可視化 | ユーザー・デバイス・アクセスログの把握 | 現状の通信フローとリスク箇所の特定 |
| フェーズ2:認証強化 | 多要素認証(MFA)の導入、ID管理の統合 | なりすましや不正アクセスのリスク低減 |
| フェーズ3:デバイス管理 | MDMやEDRの導入によるエンドポイント管理 | 接続端末の健全性確認と異常検知 |
| フェーズ4:アクセス制御 | 最小権限の原則に基づくアクセスポリシーの設定 | 内部不正・横展開攻撃の抑止 |
| フェーズ5:継続的監視 | ログ収集・分析基盤の整備、継続的な検証の仕組みづくり | インシデントの早期発見と対応力向上 |
6.2.2 小さな成功体験を積み重ねることが重要
特に中小企業においては、リソースやIT人材が限られているケースが多く、全てのフェーズを一気に進めることは現実的ではありません。
まず多要素認証の導入から始めるなど、比較的コストが低く効果が高い施策を先行させることで、経営層への説得力も高まり、予算確保につながりやすくなります。
小さな改善の積み重ねが、最終的にゼロトラストの完成形へとつながっていきます。
6.3 社内体制の整備と従業員教育
ゼロトラストは技術的な仕組みだけで成立するものではありません。
運用を支える社内体制と、従業員一人ひとりのセキュリティ意識が伴って初めて機能するものです。
どれだけ優れたツールを導入しても、利用するのは人であり、人の行動が最大のリスク要因にもなり得るからです。
6.3.1 セキュリティ推進体制の構築
ゼロトラスト導入を推進するためには、IT部門だけに任せるのではなく、経営層を含めた全社的なコミットメントが必要です。具体的には、以下のような役割と体制を整備することが求められます。
| 役割 | 主な責務 |
|---|---|
| 経営層・CISO(最高情報セキュリティ責任者) | 導入方針の承認、予算の確保、全社的な推進のコミット |
| IT・情報セキュリティ部門 | 技術的な設計・導入・運用・インシデント対応 |
| 各部門のセキュリティ担当者 | 部門内の教育・啓発、ポリシー遵守の管理 |
| 外部ベンダー・専門家 | 導入支援、技術的なアドバイス、監査 |
特に中小企業や専任のセキュリティ担当者がいない組織では、外部の専門ベンダーと連携しながら進める方法が現実的な選択肢となります。
自社だけで全てをまかなおうとせず、必要に応じて専門家の力を借りることも重要な判断です。
6.3.2 従業員へのセキュリティ教育の実施
ゼロトラストの考え方や新しい認証手順・アクセスルールを従業員が正しく理解していなければ、現場での混乱や誤操作によるインシデントが発生するリスクがあります。
定期的なセキュリティ研修やeラーニング、フィッシングメールの模擬訓練などを通じて、「セキュリティは自分ごとである」という意識を組織全体に根付かせることが長期的な防御力の向上につながります。
また、新しいツールや手順を導入する際には、わかりやすいマニュアルを整備し、問い合わせ対応の窓口を設けることで、従業員の負担を最小限に抑えながらスムーズな移行を実現できます。ゼロトラストの導入は一度完了すれば終わりではなく、運用を継続しながら定期的に見直しと改善を繰り返していく、継続的なプロセスとして位置づけることが大切です。
7. ゼロトラストの導入事例
ゼロトラストはあくまでも概念・フレームワークであり、「これを入れれば完成」という単一の製品ではありません。そのため、実際にどのように導入が進められているのかを具体的なイメージで捉えることが重要です。ここでは、大企業と中小企業それぞれの導入事例を通じて、ゼロトラストが現場でどのように機能しているかをわかりやすく解説します。
7.1 大企業における導入事例
大企業では、グローバルな拠点展開やリモートワークの急速な普及を背景に、ゼロトラストアーキテクチャへの移行が積極的に進められています。以下では、国内外の代表的な大企業における取り組みを紹介します。
7.1.1 Googleによる「BeyondCorp」の取り組み
ゼロトラストの実装事例として世界的に最も有名なのが、Googleが2010年代初頭から取り組んできた「BeyondCorp」と呼ばれる社内セキュリティ改革プロジェクトです。
Googleは、従来のVPNによる境界型防御を廃止し、すべての社員が社内ネットワークの内外を問わず、同一のアクセス制御ポリシーのもとで業務を行える環境を構築しました。
具体的には、デバイスの状態確認・ユーザー認証・アクセスポリシーの三つを組み合わせた多層的な検証を実施することで、社内システムへの不正アクセスリスクを大幅に低減しました。
この取り組みは、後にゼロトラストの実践モデルとして世界中の企業に影響を与えることになります。
7.1.2 国内大手製造業における導入事例
国内の大手製造業においても、工場やオフィスを含むハイブリッドな業務環境でのゼロトラスト導入が進んでいます。複数の拠点をもつ企業では、拠点間のネットワーク接続を従来のMPLS回線からSASEベースのアーキテクチャへ移行し、インターネット経由でも安全にクラウドサービスやオンプレミスシステムへアクセスできる環境を整備した事例があります。
また、工場内のIoT機器やOA端末に対してもEDRを導入し、エンドポイントの振る舞い検知を行うことで、内部不正や標的型攻撃への対応力を強化しています。
7.1.3 金融機関における導入事例
機密性の高い顧客情報を扱う金融機関では、情報漏洩対策としてゼロトラストの考え方がいち早く取り入れられています。たとえば、多要素認証(MFA)とIAMを組み合わせた厳格なアクセス制御を導入することで、行員ごとに参照できる情報の範囲を最小限に制限し、内部不正リスクと外部攻撃リスクの双方を低減する取り組みが進んでいます。
さらに、ログの一元管理とSIEM(セキュリティ情報・イベント管理)ツールとの連携により、不審なアクセスパターンをリアルタイムで検知・対応できる体制を整えている金融機関も増えています。
| 業種 | 主な課題 | 導入した主な技術・対策 | 得られた主な効果 |
|---|---|---|---|
| IT(Google) | VPN依存・拠点外からの安全なアクセス | BeyondCorp(デバイス認証+ユーザー認証+ポリシー管理) | VPN廃止・社内外問わず統一したアクセス制御を実現 |
| 製造業 | 多拠点・IoT機器管理・ハイブリッド環境 | SASE・EDR・ネットワークセグメンテーション | 拠点間通信の安全性向上・エンドポイントの可視化 |
| 金融機関 | 顧客情報漏洩・内部不正・標的型攻撃 | MFA・IAM・SIEMとのログ連携 | アクセス権限の最小化・不審行動の早期検知 |
7.2 中小企業における導入事例
ゼロトラストは大企業だけのものではありません。近年では、コストを抑えながらゼロトラストの考え方を段階的に取り入れる中小企業も増えています。
大規模なシステム刷新が難しい場合でも、既存の環境に段階的にゼロトラストの要素を追加していくアプローチが現実的な選択肢となっています。
7.2.1 テレワーク移行を機に導入したIT系中小企業の事例
社員数50名程度のIT系中小企業では、コロナ禍によるテレワーク移行を機にゼロトラストの導入を検討し始めました。
まず最初のステップとして、クラウドサービス(Microsoft 365など)へのアクセスに多要素認証を適用し、パスワード漏洩による不正アクセスのリスクを低減しました。
次に、社員の業務端末にMDM(モバイルデバイス管理)ツールを導入し、デバイスのセキュリティポリシー準拠状況をリアルタイムで確認できる仕組みを整えました。大規模な初期投資を行わずとも、クラウドベースのサービスを活用することで比較的低コストでゼロトラストの第一歩を踏み出せた好例です。
7.2.2 医療・福祉施設における導入事例
患者情報や利用者情報を扱う医療・福祉施設においても、情報セキュリティの強化は急務です。ある中規模の医療機関では、院内ネットワークのセグメンテーションを実施し、診療システムと一般業務系のネットワークを分離することで、万が一マルウェアが侵入した場合でも被害範囲を限定できる環境を構築しました。
また、スタッフごとにアクセスできる患者情報の範囲を役割に応じて制限する最小権限の原則を徹底し、情報漏洩リスクの大幅な低減に成功しています。専門のITベンダーと連携しながら段階的に整備を進めることで、現場業務への影響を最小限に抑えつつ導入を完了させました。
7.2.3 建設・設計業における導入事例
建設・設計業では、現場と本社をつなぐ通信環境のセキュリティ強化が課題となっています。
ある建設会社では、ZTNAを活用して現場のタブレット端末から社内の設計データや図面へ安全にアクセスできる環境を整備しました。
従来はVPN接続が主流でしたが、接続速度の遅さや管理コストの高さが問題でした。ZTNAへの移行により、接続の安定性とセキュリティレベルの両立を実現しています。
| 業種・規模 | 主な課題 | 導入した主な技術・対策 | 得られた主な効果 |
|---|---|---|---|
| IT系中小企業(約50名) | テレワーク移行後のクラウドアクセス管理 | 多要素認証・MDMツール | 不正アクセスリスクの低減・低コストでの導入実現 |
| 医療・福祉施設(中規模) | 患者情報の漏洩リスク・内部不正対策 | ネットワークセグメンテーション・最小権限の原則 | 被害範囲の限定化・情報漏洩リスクの大幅低減 |
| 建設・設計業 | 現場と本社間の安全な通信確保 | ZTNA | VPNからの脱却・接続安定性とセキュリティの両立 |
7.3 導入事例から学べるポイント
大企業・中小企業の導入事例に共通して見えてくるのは、「一度に完璧な環境を構築しようとするのではなく、現状の課題から優先度の高い領域に絞って段階的に取り組む」というアプローチが成功のカギだということです。
また、業種や規模を問わず、ゼロトラストの導入にはセキュリティに強いエンドポイント端末の整備が不可欠です。社員一人ひとりが使用するパソコン自体の信頼性と耐久性が、ゼロトラスト環境全体のセキュリティを支える土台となります。デバイスの健全性が担保されていなければ、どれだけ優れた認証・監視の仕組みを整えても、エンドポイントが攻撃の起点となるリスクを排除できません。
信頼性の高いエンドポイント端末の選定は、ゼロトラスト導入における重要な検討事項のひとつです。法人向けに高品質・高耐久なパソコンを選ぶ際には、3年故障率1%未満という実績をもつBTOパソコンメーカーのブルックテックPCのような選択肢も視野に入れることをおすすめします。用途や予算に合わせたオーダーメイドPCの設計・提案にも対応しており、IT担当者が不在の中小企業でも安心して相談できる体制が整っています。
8. まとめ
ゼロトラストとは「何も信頼しない」を前提に、すべてのアクセスを継続的に検証するセキュリティの考え方です。テレワークの普及やクラウド利用の拡大、サイバー攻撃の高度化により、従来の境界型セキュリティでは対応しきれない時代となったことが、ゼロトラストが注目される最大の理由です。
ゼロトラストを実現するためには、アイデンティティ管理・多要素認証・デバイス管理・ネットワークセグメンテーションなど、複数の要素を組み合わせて導入することが重要です。導入にはコストや運用負荷といった課題もありますが、段階的に進めることでリスクを抑えながら実現できます。
セキュリティ対策を万全にした上で、業務効率をさらに高めるには、高性能で安定したパソコン環境も欠かせません。ゲーミングPC/クリエイターPCのパソコン選びで悩んだらブルックテックPCへ!
【パソコン選びに困ったらブルックテックPCの無料相談】
ブルックテックPCは「3年故障率1%未満」という圧倒的な耐久性を持つマシンを販売しており、映像編集を行うCG/VFXクリエイター,VTuber,音楽制作会社、プロゲーマー等幅広い用途と職種で利用されています。
BTOパソコンは知識がないと購入が難しいと思われがちですが、ブルックテックPCでは公式LINEやホームページのお問い合わせフォームの質問に答えるだけで、気軽に自分に合うパソコンを相談することが可能!
問い合わせには専門のエンジニアスタッフが対応を行う体制なので初心者でも安心して相談と購入が可能です。
パソコンにおける”コスパ”は「壊れにくいこと」。本当にコストパフォーマンスに優れたパソコンを探している方や、サポート対応が柔軟なPCメーカーを探している方はブルックテックPCがオススメです!





