AMD Ryzen X3DのCCDとは?初心者向け徹底解説!性能差が生まれる仕組み

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AMD Ryzen X3Dシリーズの性能を理解する上で欠かせない「CCD」について、初心者の方にもわかりやすく解説します。
CCDとは「Core Complex Die」の略称で、CPUの中核となる演算処理部分を担うチップのことです。この記事では、CCDの基本的な役割から、3D V-Cache技術との関係、シングルCCDとデュアルCCD構成の違い、そしてCCDによって生まれる性能差まで詳しく説明します。特にデュアルCCD構成のモデルでは、3D V-Cache搭載CCDと非搭載CCDが混在するため、適切な設定を行わないとゲーミング性能が低下する可能性があります。Windows設定やBIOS設定による最適化方法も含めて、AMD Ryzen X3Dの性能を最大限に引き出すための知識を網羅的にお届けします。

1. AMD Ryzen X3DのCCDとは何か

AMD Ryzen X3Dプロセッサを理解する上で、CCDという構成要素を知ることは非常に重要です。CCDはAMD Ryzenプロセッサの心臓部とも言える部分であり、特にX3Dモデルではこの構造が性能を大きく左右します。この章では、CCDの基本的な意味から、AMD Ryzen X3Dにおける特徴、そして3D V-Cache技術との関係について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

1.1 CCDの基本的な意味と役割

CCDは「Core Complex Die(コア・コンプレックス・ダイ)」の略称で、「チップレット」とも呼ばれることがあり、共通のL3キャッシュへのアクセスを共有する8つのCPUコアの塊です。つまり、実際にプログラムの計算処理を行うCPUコアが集まったチップのことを指します。

従来のCPUは、すべての機能を1つの大きなチップに集約する「モノリシック設計」が主流でした。しかし、AMDは設計思想を転換し、機能ごとに複数の小さなチップに分割する「チップレット設計」を採用しました。この設計において、計算処理を担当する部分がCCDなのです。

CCDの主な役割は次の通りです。

役割説明
演算処理の実行ゲームやアプリケーションの計算を実際に行うCPUコアを搭載
L3キャッシュの提供高速なデータアクセスを可能にするキャッシュメモリを内蔵
効率的な熱分散複数のCCDに分割することで、発熱を分散させて冷却効率を向上

AMD Ryzen 7 7700XプロセッサやAMD Ryzen 7 7800X3Dプロセッサのような一部のAMD CPUは、物理プロセッサごとに1つのアクティブなCCDを備えており、AMD Ryzen 9シリーズの上位チップは、通常CCD0およびCCD1と呼ばれる2つのアクティブなCCDを搭載しています。このように、製品のグレードによってCCDの搭載数が異なるのが特徴です。

1.2 AMD Ryzen X3DにおけるCCDの特徴

AMD Ryzen X3DシリーズのCCDには、通常のRyzenプロセッサとは異なる重要な特徴があります。それは3D V-Cache技術によってキャッシュメモリが大幅に増強されている点です。

通常のRyzenプロセッサのCCDは、各コアがL1キャッシュ、L2キャッシュを持ち、CCD全体で共有するL3キャッシュを32MB搭載しています。しかし、X3DモデルのCCDでは、このL3キャッシュに追加で64MBの3D V-Cacheが積層され、合計96MBという大容量のL3キャッシュを実現しています。

また、デュアルCCD構成を採用する上位モデルでは、独特の非対称構成が採用されています。AMD Ryzen 9 7900X3DプロセッサおよびAMD Ryzen 9 7950X3Dプロセッサのユニークな特徴の1つは、非対称のチップレット構成で、一方のCCDは64MBのL3 3D V-Cacheを追加搭載(合計96MB)、もう一方は32MBのL3キャッシュを標準搭載しながら、より高いクロック速度で動作します。

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CCD種類L3キャッシュ容量動作クロック主な用途
3D V-Cache搭載CCD(CCD0)96MBやや控えめゲーム性能の最大化
標準CCD(CCD1)32MB高クロック(最大5.7GHz)クリエイティブ作業、マルチスレッド処理

この柔軟性はチップレット設計の特徴で、ワークロードの種類ごとに最適化されたCCDを搭載することで、AMDは幅広いアプリケーションやゲームをより効果的にターゲットにすることができます。つまり、ゲームには3D V-Cache搭載CCD、クリエイティブ作業には高クロックCCDと、処理内容に応じて最適なCCDを自動的に使い分けることで、総合的な性能を高めているのです。

1.3 3D V-Cache技術とCCDの関係

3D V-Cache技術は、AMD Ryzen X3DシリーズにおけるCCDの性能を飛躍的に向上させる革新的な技術です。この技術は、既存のCCDチップの上(または下)に追加のキャッシュメモリを積層することで、物理的なスペースを増やすことなく大容量のキャッシュを実現しています。

現行の3D V-Cacheは基本的な構造が2022年に登場したRyzen 7 5800X3Dから変わっておらず、CCDに設けられた貫通電極(TSV)の上に64MBのL3キャッシュを乗せるという構造で、TSMCのSoICというパッケージング技術を使用していました。この構造では、CCDの上にキャッシュが配置されるため、冷却効率に課題がありました。

しかし、最新のRyzen 9000X3Dシリーズでは、キャッシュメモリを積層する「3D V-Cache技術」も第2世代へとアップグレードされ、CCDの上にキャッシュを配置する方式から下に配置する方式へと変更され、これにより、発熱の大きいCCDとヒートスプレッダが直接接触するようになり、冷却効率が大幅に改善されました。

世代構造メリットデメリット
第1世代(Ryzen 5000/7000 X3D)CCDの上に3D V-Cacheを配置実績のある設計冷却効率が低く動作クロックに制限
第2世代(Ryzen 9000 X3D)3D V-Cacheの上にCCDを配置冷却効率向上、高クロック動作可能、手動オーバークロック対応新しい設計のため実装が複雑

この構造変更により、Ryzen 7 9800X3Dでは最大動作クロックが5.2GHzまで向上し、従来の冷却に起因する性能制限が大幅に緩和されました。さらに、従来のX3Dモデルでは不可能だった手動オーバークロックにも対応するなど、CCDの性能を最大限に引き出せるようになっています。

3D V-CacheとCCDの関係を理解する上で重要なのは、この技術が単にキャッシュ容量を増やすだけでなく、CCDとキャッシュ間のデータ転送速度を極めて高速に保ちながら、CCDの動作特性を最適化している点です。これにより、ゲームのような頻繁にメモリアクセスが発生するアプリケーションにおいて、劇的な性能向上を実現しているのです。

2. CCDの構造と仕組み

AMD Ryzen X3Dプロセッサの性能を語る上で欠かせないのが、CCDの内部構造と動作の仕組みです。ここでは、チップレット設計という革新的なアプローチがどのようにCCDの構造に反映されているかを詳しく解説していきます。従来のCPU設計とは一線を画すこの技術を理解することで、AMD Ryzen X3Dの優れた性能とコストパフォーマンスの秘密が明らかになります。

2.1 チップレット設計とは

チップレット設計は、AMDがRyzenプロセッサで採用している最新のCPU製造アプローチです。従来のモノリシック構造では、CPUコア、キャッシュ、メモリコントローラ、入出力機能などすべての要素を1つの大きなダイ(半導体チップ)上にまとめて製造していましたが、チップレット設計ではこれらを複数の小さなダイに分割して製造します。

チップレット設計の最大のメリットは製造コストの削減と歩留まりの向上です。巨大なプロセッサを4分割したチップレットで構成した場合、生産量で1.75倍、コストは約57%まで削減できるという大きな効果があります。これは、半導体製造において大きなダイほど欠陥が発生しやすく、良品率が低下するという物理的な制約があるためです。小さなダイに分割することで、1枚のウェーハから取れる良品の数が飛躍的に増加します。

AMDのZen2アーキテクチャ以降、サーバー向けEPYC、ハイエンドデスクトップ向けRyzen Threadripper、デスクトップ向けRyzenでチップレット技術を採用し、CCD(CPU Compute Die)と呼ぶCPUコア内蔵ダイと、IOD(IO Die)と呼ぶ入出力回路のダイを組み合わせる構造になっています。この設計により、用途に応じてチップレットの枚数を変えるだけで、4コアから64コアまで幅広いラインナップを効率的に展開できるようになりました。

設計方式特徴メリットデメリット
モノリシック構造すべての機能を1つのダイに集約レイテンシが低い、設計がシンプル製造コストが高い、歩留まりが悪い
チップレット構造機能ごとに複数のダイに分割製造コストが低い、歩留まりが良い、柔軟性が高いダイ間通信にレイテンシが発生

AMD Ryzen X3Dシリーズでは、このチップレット設計をさらに進化させ、3D V-Cache技術を組み合わせることで、ゲーミング性能を大幅に向上させています。

2.2 CCD内部のコア配置

CCD(Core Complex Die)は、AMDのRyzenプロセッサにおける心臓部とも言えるチップレットです。CCDは1つのダイで8コアのCPUとなっていて、クライアントPC用のRyzenなどと共通になっており、デスクトップPC向けではCCD1つとIODで8コア製品を、CCD2つとIODで16コアの製品へと構成を変えることが可能です。

CCDのシリコンダイ面積は74平方mmとかなり小さく、CPUコアと3次キャッシュでシリコン面積の86%を占める設計になっています。これは、CCD内部にはCPUコアとキャッシュだけが搭載され、メモリコントローラや入出力機能は別のIODに任せているためです。この役割分担により、CCDは純粋に演算性能を追求した最適化が可能になっています。

CCD内部のコア配置は世代によって進化しています。Zen2やZen+の時代には、4つのCPUコアで1つのCCX(Core Complex)を構成し、CCXが2つで1つのCCDを形成していました。各CCXは16MBのL3キャッシュを持ち、CCX間はInfinity Fabricで接続されていました。

しかし、Zen3ベースのRyzen 5000とMilanプロセッサでは、AMDはCCDに2つのCCXという概念を廃止し、ダイ上の32MBのキャッシュ全体にアクセスできる8コアCCDを採用しました。これにより、コア間のレイテンシが小さくなり、各コアがアクセスできるキャッシュ容量が増え、キャッシュ帯域幅が広くなるという大きなメリットが生まれました。

世代CCD内部構造L3キャッシュ構成特徴
Zen2、Zen+2つのCCX(各4コア)CCXごとに16MB(合計32MB)CCX間通信にレイテンシが発生
Zen3以降統合された8コア全コア共有で32MBすべてのコアが全キャッシュにアクセス可能
Zen3(X3D)統合された8コア基本32MB + 3D V-Cache 64MB(合計96MB)3D積層技術により大容量キャッシュを実現

この統合された8コア設計は、特にゲーミング性能において大きな効果を発揮します。ゲームではCPUコア間でのデータ共有が頻繁に発生するため、すべてのコアが同じキャッシュプールにアクセスできることで、データ転送のレイテンシが大幅に削減されるのです。

2.3 IOダイとCCDの連携

チップレット設計において重要なのが、CCDとIOD(I/O Die)の連携です。CCD内には、2つのCCXとSMU(System Management Unit)をつなぐInfinity Fabricがあり、ここからGMI2経由でI/Oチップレット側のInfinity Fabricにつながる構造になっています。

IODは、CCDとは異なる役割を担っています。第2世代EPYC以後は、CPUチップレット(CCD)とI/Oチップレット(IOD)がそれぞれ独立して設計されており、IODにはメモリコントローラや入出力機能が集約されています。この分離により、CCDは最先端の7nmや5nmプロセスで製造できる一方、IODは比較的コストの安い12nmや6nmプロセスで製造できるため、全体のコストを抑えることができます。

CCD全体の制御はCCD内のSMUが行い、同様にIODの制御はIOD内のSMUが行うという独立した管理体制になっています。SMUは、Infinity Fabricを利用したSenseMIを始めとするさまざまなシステム管理を司る重要な部分です。これにより、各チップレットは独立して最適な電力管理や周波数制御を行うことができます。

チップレット技術の大きな課題はダイ間の接続で、接続する配線の本数が膨大になること、超高速の信号を伝送しなければならないことが問題となります。AMDはコスト面からシリコンインターポーザを採用せず、有機樹脂のパッケージ基板にチップレットを搭載し、ダイ間をSerDesリンク(IFOPリンク)で接続する方法を選択しました。

コンポーネント主な役割製造プロセス接続方式
CCDCPUコアとL3キャッシュ7nm / 5nm(最先端プロセス)Infinity Fabric経由でIODに接続
IODメモリコントローラ、PCIe、USB等の入出力12nm / 6nm(成熟プロセス)Infinity Fabric経由でCCDに接続
SMU電力管理、周波数制御、温度監視CCDとIODにそれぞれ搭載各ダイ内部で動作

AMDはEPYCシリーズでInfinity Fabricを利用してCCD間やメモリコントローラを接続した結果、柔軟性は増してコストは下がったものの、Infinity Fabricを利用することに起因するレイテンシの増加という性能面へのペナルティがあることも事実です。しかし、大容量L3キャッシュや3D V-Cacheの効果でその影響を最小限に抑える工夫がなされています。

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AMD Ryzen X3Dシリーズでは、この基本的なCCDとIODの連携構造に加えて、3D V-Cache技術を組み合わせることで、チップレット設計のデメリットを補いながら、さらなる性能向上を実現しているのです。特にゲーミングワークロードにおいては、大容量キャッシュによってメモリアクセスの頻度が減少し、Infinity Fabricのレイテンシの影響を受けにくくなるという好循環が生まれています。

3. AMD Ryzen X3DのCCD構成パターン

AMD Ryzen X3Dシリーズは、CPUのコア数やターゲット用途によって、異なるCCD構成を採用しています。CCDの構成パターンを理解することで、それぞれのモデルがどのような用途に最適化されているのかが見えてきます。ここでは、代表的な構成パターンとそれぞれの特徴について詳しく解説します。

3.1 シングルCCD構成のモデル

シングルCCD構成は、1つのCCDのみを搭載したシンプルな設計です。この構成を採用しているのは、主に8コア16スレッドまでのモデルで、代表的な製品にはRyzen 7 9800X3DやRyzen 7 7800X3Dがあります。

シングルCCD構成の最大の利点は、すべての処理が1つのCCD内で完結するため、CCD間でのデータ転送によるレイテンシが発生しないことです。ゲーム用途においては、この特性が非常に重要になります。なぜなら、ゲームの多くは8コア以下で最適化されており、複数のCCDにまたがって処理が分散されるとかえって性能が低下する可能性があるためです。

また、シングルCCD構成ではすべてのコアが3D V-Cacheの恩恵を均等に受けられるため、どのコアで処理が実行されても一貫した高いキャッシュ効率を維持できます。このため、OSやアプリケーション側でのスケジューリングを意識する必要が少なく、安定した性能を発揮しやすいという特徴があります。

消費電力の観点からも、シングルCCDは複数のCCDを搭載するモデルに比べて発熱を抑えやすく、冷却性能が限られた環境でも扱いやすいメリットがあります。

3.2 デュアルCCD構成のモデル

デュアルCCD構成は、2つのCCDを搭載することで12コア以上の多コア性能を実現した設計です。この構成を採用しているのは、Ryzen 9 7900X3D、Ryzen 9 7950X3D、そして新しく登場したRyzen 9 9900X3DやRyzen 9 9950X3Dなどの上位モデルです。

デュアルCCD構成では、2つのCCDがそれぞれ独立して動作し、IOダイを介して連携します。Ryzen 9 7950X3Dの場合は16コア32スレッド、Ryzen 9 7900X3Dの場合は12コア24スレッドという高いマルチスレッド性能を提供します。

この構成の利点は、動画編集や3Dレンダリング、コンパイルといった多コアをフル活用するワークロードで圧倒的な処理能力を発揮することです。複数のアプリケーションを同時に動かすマルチタスク環境でも余裕を持った処理が可能になります。

一方で、デュアルCCD構成には注意すべき点もあります。それは、CCD間でのデータ転送が発生する場合にレイテンシが増加する可能性があることです。特にゲームのようにレイテンシに敏感なアプリケーションでは、適切なスケジューリング設定が重要になります。

消費電力と発熱については、2つのCCDが動作するため、シングルCCD構成に比べて高い冷却性能が求められます。ただし、ゲーム時など片方のCCDのみを使用する場合は、もう一方のCCDは低電力状態に移行するため、実際の消費電力は用途によって大きく変動します。

構成タイプコア数主な利点適した用途
シングルCCD8コア以下低レイテンシ、均一なキャッシュアクセスゲーミング、一般用途
デュアルCCD12コア以上高いマルチスレッド性能クリエイティブ作業、マルチタスク

3.3 3D V-Cache搭載CCDと非搭載CCDの違い

デュアルCCD構成のRyzen X3Dシリーズには、非対称なチップレット構成が採用されています。2つのCCDのうち、一方には3D V-Cacheが搭載されていますが、もう一方には搭載されていません。この設計には明確な理由があります。

3D V-Cacheを搭載したCCD0は若干低いクロックで動作しますが、64MBの3D V-Cacheを追加することで合計96MBのL3キャッシュを持ち、キャッシュ依存型のワークロードで高い性能を発揮します。一方、CCD1はクロックスピードに最適化されており、Ryzen 9 7950Xと同じ5.7GHzのピークターボ周波数を実現しています。

この非対称構成により、ゲームのようなキャッシュ効率が重要なタスクは3D V-Cache搭載CCDで処理し、クロック速度が重要な処理は高クロックCCDで実行するという柔軟な最適化が可能になります。

AMDが両方のCCDに3D V-Cacheを搭載しなかった理由は、コストだけでなく、スレッドスケジューリングの効率低下という技術的課題があったためです。デュアル3D V-Cache構成では、スレッドがキャッシュを持つCCDに集中しすぎるため、もう一方のCCDが十分に活用されず、実使用環境での性能向上が限定的だったことが明らかにされています。

Windows 11やAMDのドライバーには、どのCCDに処理を割り当てるかを判断する機能が組み込まれています。ゲーム起動時には自動的に3D V-Cache搭載CCDに処理が集中するようスケジューリングされ、マルチスレッド性能が必要な場合は両方のCCDを活用します。

実際の性能差については、ゲームタイトルによって異なりますが、キャッシュ効率が高いゲームでは3D V-Cache搭載CCDと非搭載CCDの間で20%以上の性能差が出ることもあります。このため、ゲームプレイ時には適切なCCDが使用されているか確認することが重要です。

CCDタイプL3キャッシュ容量クロック速度得意な処理
3D V-Cache搭載CCD(CCD0)96MB(32MB + 64MB)やや控えめゲーミング、キャッシュ依存型処理
非搭載CCD(CCD1)32MB最大5.7GHzクロック速度重視の処理、マルチスレッド作業

この非対称構成により、Ryzen 9シリーズのX3Dモデルは、ゲーミング性能とクリエイティブ作業の両方を高い次元でバランスさせることに成功しています。ただし、最高のゲーミング性能だけを求めるのであれば、すべてのコアが3D V-Cacheの恩恵を受けられるシングルCCD構成のRyzen 7 9800X3Dのような製品が適しています。

4. CCDによって生まれる性能差

AMD Ryzen X3Dプロセッサにおいて、CCD(Core Complex Die)の構成や特性によって、実際のパフォーマンスには大きな違いが生まれます。この章では、CCDによって生まれる具体的な性能差について、ゲーミング性能、マルチスレッド性能、そしてレイテンシとキャッシュ効率という3つの観点から詳しく解説していきます。パソコンを選ぶ際に、これらの違いを理解しておくことで、用途に合った最適なプロセッサを選択できるようになります。

4.1 ゲーミング性能への影響

CCDの構成は、ゲーミング性能に最も顕著な影響を与える要素の一つです。Ryzen 7 7800X3DのようなシングルCCD構成のX3Dプロセッサは、非対称構成に向けた対応などは一切不要で、普通にOSをインストールしてそのまま利用可能です。これは、ゲームの処理が1つのCCD内で完結するため、データの移動や処理の切り替えが最小限で済むことを意味しています。

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X3Dで問題になるのは、CCDまたがりで、ゲームが速くなるのは8コアまでであり、余計なコア積んでると、回らなくなってゲーム性能落ちます。つまり、デュアルCCD構成のモデルでは、ゲーム処理が複数のCCD間を移動してしまうと、かえってパフォーマンスが低下する可能性があるのです。

一方、3D V-Cache搭載CCDと非搭載CCDが混在するデュアルCCD構成の場合、Windows側で適切にスレッドを管理する必要があります。大きく言って、2CCDのCPUでCCD0に負荷が集まるのは、Windowsの動作なので、ゲームの動作がどれもCCD0に集まらないなら、OSの入れ直しをした方が良いとされており、OSレベルでの最適化が重要になってきます。

CCD構成タイプゲーミング性能特徴
シングルCCD(X3D搭載)非常に高いCCD間の移動がなく、キャッシュを効率的に利用可能
デュアルCCD(片側X3D搭載)高い(設定次第)適切なスケジューリングが必要だが、マルチタスクにも対応
デュアルCCD(X3D非搭載)標準キャッシュ容量は少ないが、クロック周波数が高い

「Ryzen 9 9950X3D/9900X3D」のゲーミング性能に関しては「Ryzen 7 9800X3D」とほぼ同等であるとAMD関係者が明らかにしているように、コア数が多い上位モデルであっても、ゲーミング性能自体はシングルCCD構成の8コアモデルと大差がないことが分かります。これは、現代のゲームが8コア程度までしか効率的に活用できないためです。

4.2 マルチスレッド性能への影響

ゲーミング性能とは対照的に、マルチスレッド性能ではCCDの数が多いほど有利になります。デュアルCCD構成のプロセッサは、16コア32スレッドや12コア24スレッドといった高いコア数を実現できるため、動画編集、3Dレンダリング、配信といったマルチタスク処理において優れたパフォーマンスを発揮します。

シングルCCD構成のRyzen 7 9800X3Dは8コア16スレッドですが、9800X3Dのコア性能は1CCDで5900X並まで上がるとされており、シングルCCDでも従来の12コアモデルに匹敵する性能を実現しています。これは、アーキテクチャの改善とクロック周波数の向上によるものです。

デュアルCCD構成のメリットは、複数のアプリケーションを同時に実行する場合に顕著に現れます。たとえば、ゲームをプレイしながら配信ソフトを動かし、さらにバックグラウンドで動画エンコードを行うといった場合、16コアのデュアルCCD構成であれば、それぞれの処理を異なるコアに分散させることができ、安定したパフォーマンスを維持できます

プロセッサモデルCCD構成コア/スレッド数主な用途
Ryzen 7 9800X3DシングルCCD8コア/16スレッドゲーミング中心の用途
Ryzen 9 9900X3DデュアルCCD12コア/24スレッドゲーミング+クリエイティブ作業
Ryzen 9 9950X3DデュアルCCD16コア/32スレッドヘビーなマルチタスク環境

ただし、デュアルCCD構成では消費電力も増加します。Ryzen 9 7900X3Dと比べるとゲームプレイ時で95%高く、高負荷(マルチコア)時でも37%も高くなっているため、冷却システムや電源ユニットの選定にも注意が必要です。マルチスレッド性能が本当に必要かどうかを見極めて、適切なモデルを選択することが重要になります。

4.3 レイテンシとキャッシュ効率の違い

CCDの構成によって、データアクセスのレイテンシ(遅延時間)とキャッシュの効率にも大きな違いが生まれます。これは、プロセッサ全体のパフォーマンスに直結する重要な要素です。

X3Dモデルは大幅なキャッシュメモリの増強により、CPU高負荷時のゲーミング性能が大幅に向上し、例えばRyzen 7 7800Xのキャッシュメモリが36MBに対して、Ryzen 7 7800X3Dは104MBとなっています。キャッシュメモリが多ければ多いほど、より大きなデータを素早く処理することが可能になり、フレームレートの向上につながります

シングルCCD構成では、すべてのコアが同一のL3キャッシュにアクセスできるため、データの共有が非常に効率的です。一方、デュアルCCD構成では、CCD間でデータをやり取りする際に、IOダイを経由する必要があるため、わずかながらレイテンシが増加します。これは、特にキャッシュヒット率が重要となるゲームにおいて、パフォーマンスの差となって現れます。

3D V-Cache技術により、L3キャッシュが大幅に増量されたX3Dプロセッサでは、ゲーム中に頻繁にアクセスされるデータをキャッシュ内に保持できる確率が高まります。これにより、メインメモリへのアクセス頻度が減少し、結果として処理速度が向上するのです。

要素シングルCCD構成デュアルCCD構成
CCD内レイテンシ非常に低い低い
CCD間レイテンシなし中程度(IOダイ経由)
キャッシュ効率非常に高い高い(スケジューリング次第)
総キャッシュ容量96MB~104MB128MB~140MB

AMDはデュアル3D V-Cache構成をテストしたものの、スレッドスケジューリングの非効率性とコストパフォーマンスの観点から断念し、現時点では片方のCCDに集中する設計が、ゲーミング性能向上において最適であると結論づけたとされています。これは、単純にキャッシュ容量を増やせば良いというわけではなく、効率的なアクセスパターンを維持することが重要であることを示しています。

実際のゲームプレイにおいては、レイテンシの低さとキャッシュ効率の高さが、フレームレートの安定性や最小フレームレートの向上に貢献します。平均フレームレートだけでなく、最低フレームレートが高く保たれることで、体感的に滑らかなゲーム体験が得られるのです。この点において、シングルCCD構成のX3Dプロセッサは非常に優れた特性を持っていると言えます。

CCDの構成によって生まれる性能差を理解することで、ご自身の用途に最適なプロセッサを選択できます。ゲーミング性能を最優先するならシングルCCD構成、マルチタスク性能も重視するならデュアルCCD構成というように、明確な選択基準を持つことが、満足度の高いパソコン選びにつながります。

5. AMD Ryzen X3DのCCD管理とWindows設定

AMD Ryzen X3Dプロセッサでは、デュアルCCD構成のモデルにおいて、3D V-Cache搭載CCDと非搭載CCDの2つの異なる特性を持つCCDを適切に管理することが、性能を最大限に引き出すために重要です。ゲームなどのキャッシュを多く必要とする処理は3D V-Cache搭載CCD(CCD0)に、高クロックが必要な処理は非搭載CCD(CCD1)に振り分けることで、それぞれの特性を活かした最適なパフォーマンスを実現できます。

Windows環境では、AMDが提供する専用のドライバーやツールを活用することで、このCCDの振り分けを自動的に最適化できます。また、ユーザー自身がBIOS設定やWindowsの機能を使って手動で管理することも可能です。この章では、CCD管理のための具体的な設定方法を初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

5.1 Xbox Game Barによる最適化

Windows環境でAMD Ryzen X3DのCCDを自動的に最適化するために、Xbox Game Barが重要な役割を果たす基盤システムとして機能します。Xbox Game Barは、Microsoftストアから無料でダウンロードできるWindows標準のゲーム支援ツールですが、AMD Ryzen X3Dプロセッサにおいては、単なるゲーム録画ツール以上の意味を持ちます。

AMD Ryzen X3DのCCD最適化を有効にするためには、まずAMDチップセットドライバー(バージョン5.01.03.005以降)をインストールする必要があります。このドライバーには「3D V-Cache Performance Optimizer Driver」というコンポーネントが含まれており、これがゲーム処理を3D V-Cache搭載CCDへ自動的に振り分ける役割を担います。

設定手順としては、まずAMDの公式サイトから最新のチップセットドライバーをダウンロードしてインストールし、システムを再起動します。次に、Windowsセキュリティの設定で「デバイスセキュリティー」から「コア分離の詳細」を開き、「メモリ整合性」をオンにします。この設定はセキュリティ強化のためのものですが、CCD振り分け機能自体はこの設定がオフでも動作します。

続いて、システムのメンテナンスタスクを実行させる必要があります。アイドル状態で15分程度放置するか、管理者権限で起動したコマンドプロンプトまたはターミナルで「Cmd.exe /c start /wait Rundll32.exe advapi32.dll,ProcessIdleTasks」というコマンドを実行します。この作業は、システムがCCD構成を正しく認識するための準備段階となります。

その後、MicrosoftストアからXbox Game Barをダウンロードして最新版にアップデートします。Xbox Game Barを開いて「設定」から「フィードバック」へ進み、「その他の診断情報を表示」をクリックすると、「KGL Version Loaded」と「KGL Service Version」という項目が表示されます。これらの項目が確認できれば、CCD最適化システムが正常に動作する準備が整った証拠です。

最後に、デバイスマネージャーで「システムデバイス」を展開し、「AMD 3D V-Cache Performance Optimizer」というデバイスが存在していることを確認します。このデバイスが正しく認識されていれば、ゲーム起動時にWindowsが自動的に3D V-Cache搭載CCDへ処理を振り分けるようになり、特別な操作なしに最適なゲーミング性能を発揮できます。

設定項目設定内容目的
AMDチップセットドライバーバージョン5.01.03.005以降をインストール3D V-Cache Performance Optimizerの導入
メモリ整合性Windowsセキュリティからオンに設定セキュリティ強化(CCD振り分けには必須ではない)
メンテナンスタスクアイドル15分放置またはコマンド実行システムのCCD構成認識
Xbox Game Bar最新版にアップデート・診断情報確認CCD最適化システムの動作確認
デバイスマネージャーAMD 3D V-Cache Performance Optimizerの確認ドライバー正常動作の確認

5.2 プロセスラッシュやプロセスアフィニティの設定

Windowsの標準機能やサードパーティ製ツールを使って、特定のアプリケーションやゲームが使用するCPUコアを手動で指定する方法が「プロセスアフィニティの設定」です。この方法を活用することで、自動的なCCD振り分けが正しく機能しない場合でも、意図的に3D V-Cache搭載CCDへ処理を集中させることが可能になります。

Windowsのタスクマネージャーを使った基本的な設定方法は、まずゲームやアプリケーションを起動した状態でタスクマネージャーを開き(Ctrl+Shift+Escキー)、「詳細」タブを選択します。対象のプロセスを右クリックして「関係の設定」(または「アフィニティの設定」)を選択すると、使用するCPUコアを個別にチェックボックスで指定できます。

Ryzen 9 9950X3DやRyzen 9 9900X3DのようなデュアルCCD構成のモデルでは、CCD0が0番から7番(または15番)までのコア、CCD1が8番(または16番)から15番(または31番)までのコアに対応しています。ゲーム処理を3D V-Cache搭載CCD0に集中させたい場合は、0番から7番(または15番)のコアのみにチェックを入れて設定します。

ただし、タスクマネージャーでのアフィニティ設定は一時的なものであり、アプリケーションを再起動すると設定が失われてしまいます。恒久的な設定を行いたい場合は、「Process Lasso」というサードパーティ製ツールの使用が推奨されます。

Process Lassoは、プロセス管理の自動化に特化したフリーソフト(無料版と有料版があります)で、アプリケーションごとにプロセスアフィニティを記憶させ、起動のたびに自動的に適用する機能を持っています。Process Lassoをインストール後、対象のアプリケーションを右クリックして「CPU Affinity」から「Always」を選択し、使用するコアを指定すれば、以降は自動的にその設定が適用されます。

また、プロセス優先度の調整も重要です。ゲームプロセスの優先度を「高」または「リアルタイム」に設定することで、CPUリソースがゲームに優先的に割り当てられ、バックグラウンドプロセスの影響を最小限に抑えられます。ただし、リアルタイム優先度はシステムの安定性に影響を与える可能性があるため、基本的には「高」に設定することをおすすめします。

設定方法メリットデメリット推奨用途
タスクマネージャー追加ソフト不要・設定が簡単再起動時に設定が失われる一時的なテストや確認
Process Lasso設定を記憶・自動適用ソフトのインストールが必要恒久的な設定・複数アプリの管理
優先度設定(高)ゲームへリソース優先割り当てバックグラウンド処理が遅延ゲームプレイ中のパフォーマンス向上
優先度設定(リアルタイム)最大限のリソース確保システムが不安定になる可能性非推奨(特殊な用途のみ)

プロセスアフィニティの設定は、特に複数のゲームを異なる設定で管理したい場合や、AMDの自動最適化が期待通りに機能しないタイトルで有効です。ただし、すべてのゲームで手動設定が必要なわけではなく、基本的にはAMDの自動最適化に任せ、問題が発生した場合の対処法として活用するのが賢明です。

5.3 BIOS設定でのCCDコントロール

マザーボードのBIOS(UEFI)設定を使うことで、ハードウェアレベルでCCDを制御し、特定のCCDを完全に無効化したり、コア数を調整したりすることが可能です。この方法は、Windowsのソフトウェア設定よりも根本的な制御を実現し、特にゲーム特化の環境を構築したい上級者に適しています。

BIOS設定でCCDを制御する最も一般的な方法は、特定のCCDを無効化することです。例えば、Ryzen 9 9950X3DをRyzen 7 9800X3Dのような8コア構成にする「擬似化」を行う場合、非搭載の3D V-CacheのCCD1を無効化します。これにより、全ての処理が3D V-Cache搭載CCD0に集中し、ゲーム性能がさらに向上する可能性があります。

具体的な設定手順は、マザーボードメーカーによって若干異なりますが、基本的な流れは共通しています。PC起動時にDeleteキーやF2キーを押してBIOS画面に入り、詳細設定モード(Advanced Mode)に切り替えます。多くのマザーボードではF7キーで詳細モードに移行できます。

AMD Overclocking(または類似の名称)のセクションに進み、「Manual CPU Overclocking」または「CPU Core Configuration」といった項目を探します。ここに「CCD Control」や「Core Count Control」という設定があり、各CCDのコア数を個別に制御できます。

例えば、ASUS製マザーボードの場合、「CCD 01 Bit Map Down Core Control」という項目で、各コアのオン・オフを「1」または「0」で指定します。初期状態が「CCD01 1-1-1-1-1-1-1-1」(全8コア有効)となっている場合、これを「CCD01 0-0-0-0-0-0-0-0」(全8コア無効)に変更することで、CCD1を完全に無効化できます。設定後は「Bit Map Down Core Apply Change」を実行して変更を反映させ、設定を保存してBIOSを終了します。

MSI製マザーボードの一部モデルには、「X3D Gaming Mode」という専用機能が搭載されており、ワンクリックでゲーム最適化されたCCD設定を適用できます。この機能は、デュアルCCD構成時に3D V-Cache非搭載CCDやSMT(Simultaneous Multi-Threading)を自動的に無効化し、リソースをゲームへ集中的に割り当てる仕組みです。

BIOS設定項目設定内容効果
CCD Control特定CCDの有効・無効切り替えゲーム特化構成への変更(擬似8コア化など)
Bit Map Down Core Control各コアの個別制御(0=無効、1=有効)細かいコア数調整が可能
X3D Gaming Mode(MSI)ワンクリック最適化機能自動的にゲーム最適設定を適用
SMT Controlハイパースレッディングのオン・オフレイテンシ低減・ゲーム性能向上
CPPC Dynamic Preferred CoresAuto/Cache/Frequency選択処理振り分けの優先基準を設定

BIOS設定には「CPPC Dynamic Preferred Cores」という項目もあり、これを「Cache」に設定することで3D V-Cache搭載CCDを優先的に使用するよう指示できます。ただし、この設定を変更すると、Windowsタスクマネージャーから「3D V-Cache Performance Optimizer」が消えてしまう場合があり、自動最適化機能との兼ね合いに注意が必要です。基本的には「Auto」に設定しておくことをおすすめします。

注意点として、BIOS設定でCCDを無効化すると、マルチスレッド性能は低下します。ゲーム専用マシンであれば問題ありませんが、動画編集や3Dレンダリングなど多コアを活用する作業も行う場合は、用途に応じてBIOS設定を切り替える必要があります。また、メモリのオーバークロック設定と併用すると、システムが不安定になる場合があるため、CCD制御を行う際はメモリ設定を標準に戻すことが推奨されます。

BIOS設定でのCCD制御は、最も根本的かつ強力な最適化手段ですが、設定ミスはシステムの起動不良を招く可能性があるため、変更前には必ず現在の設定を記録し、BIOS設定のバックアップ機能があれば活用してください。初心者の方は、まずWindowsレベルでの設定から始め、必要に応じてBIOS設定へ進むことをおすすめします。

6. 主要なAMD Ryzen X3DモデルのCCD構成

AMD Ryzen X3Dシリーズは、モデルによってCCD構成が大きく異なります。この構成の違いが、ゲーミング性能やマルチスレッド性能に直接影響を与えるため、製品選びにおいて重要なポイントとなります。ここでは、最新世代の主要なRyzen X3Dモデルのそれぞれについて、CCD構成の特徴と性能の違いを詳しく解説していきます。

6.1 Ryzen 7 9800X3DのCCD構成

Ryzen 7 9800X3Dは、Zen 5アーキテクチャを採用する8コア/16スレッドCPUで、8基のCPUコアと32MBのL3キャッシュを備えるCCDに64MBの第2世代3D V-Cacheを組み合わせることで、合計96MBのL3キャッシュを実現しています。

このモデルの最大の特徴は、シングルCCD構成であるため、すべてのコアが3D V-Cacheの恩恵を受けられる点にあります。デュアルCCD構成のモデルとは異なり、コア間でのキャッシュアクセスの差が生じないため、ゲーミング性能において非常に優れたパフォーマンスを発揮します。

Ryzen 9000X3Dシリーズからは、CCDの上にキャッシュを配置する方式から下に配置する方式へと変更されました。この第2世代3D V-Cache技術により、発熱の大きいCCDとヒートスプレッダが直接接触するようになり、冷却効率が大幅に改善されています。

項目仕様
コア数/スレッド数8コア/16スレッド
CCD構成シングルCCD(1基)
3D V-Cache搭載CCD1基(全コアで利用可能)
L3キャッシュ合計96MB(32MB+64MB)
ベースクロック4.7GHz
ブーストクロック5.2GHz
TDP120W

最大動作温度は95℃とされ、Ryzen 7 7800X3Dの89℃から6℃上昇しており、冷却性能の向上により動作クロックの余裕が生まれています。また、X3Dモデルでは初めて手動オーバークロックをサポートしている点も大きな特徴です。

シングルCCD構成により、CCDをまたぐレイテンシが発生しないため、ゲーム用途においては上位モデルよりも優れたパフォーマンスを発揮するケースもあります。特にゲームタイトルが8コアまでしか効率的に活用できない場合、デュアルCCD構成のモデルよりも高いフレームレートを実現できる可能性があります。

6.2 Ryzen 9 9900X3DのCCD構成

Ryzen 9 9900X3Dは、12コア/24スレッドを搭載したデュアルCCD構成のモデルです。CCDの構成は3D V-Cacheを搭載するCCDと、搭載しない従来型CCDを組み合わせたハイブリッド方式となっています。

このモデルでは、片方のCCDに6コアと3D V-Cacheが搭載され、もう片方のCCDには6コアのみが搭載される非対称な構成となっています。この構成により、ゲーミング性能とマルチスレッド性能の両立を図っています。

項目仕様
コア数/スレッド数12コア/24スレッド
CCD構成デュアルCCD(2基)
3D V-Cache搭載CCD1基(CCD0:6コア)
非搭載CCD1基(CCD1:6コア)
L3キャッシュ合計128MB
ベースクロック4.4GHz
ブーストクロック5.5GHz
TDP170W

3D V-Cacheを搭載するCCD0はCCD1より若干低いクロックで動作しますが、64MBの3D V-Cacheを追加し、パフォーマンスを向上させます。CCD1はクロックスピードに最適化されています。

このハイブリッド構成により、ゲームなどキャッシュ容量が重要なワークロードではCCD0が優先的に使用され、マルチスレッド処理が必要な作業ではCCD1も活用されます。Windows 11のスレッドスケジューラやXbox Game Barが、適切にコアを振り分ける役割を担っています。

TDPが170Wに設定されており、最大動作温度も先代の89℃から95℃へと6℃上昇しているため、第2世代3D V-Cache技術による熱設計の改善が確認できます。

6.3 Ryzen 9 9950X3DのCCD構成

Ryzen 9 9950X3Dは、AMD Ryzen X3Dシリーズの最上位モデルで、16コア/32スレッドを搭載しています。9900X3Dと同様に、デュアルCCD構成で片方のCCDのみに3D V-Cacheが搭載されるハイブリッド方式を採用しています。

コア数が16コア/32スレッド、ベースクロックは4.3GHz、最大ブーストクロックは5.7GHzで、キャッシュメモリはL1が1,024KB、L2が16MB、L3が128MBという強力なスペックを誇ります。

項目仕様
コア数/スレッド数16コア/32スレッド
CCD構成デュアルCCD(2基)
3D V-Cache搭載CCD1基(CCD0:8コア)
非搭載CCD1基(CCD1:8コア)
L3キャッシュ合計128MB
ベースクロック4.3GHz
ブーストクロック5.7GHz
TDP170W

このモデルは、8コアずつを搭載した2つのCCDで構成されており、CCD0には3D V-Cacheが搭載され、CCD1は高クロック動作に最適化されています。この構成により、ゲーミング性能とクリエイティブ作業の両方で最高レベルのパフォーマンスを実現します。

前世代のRyzen 9 7950X3Dと比較すると、CCDの下にキャッシュメモリを配置する「第2世代3D V-Cache技術」を採用することで、発熱の大きいCCDとヒートスプレッダが直接接触するようになり、冷却効率が大幅に改善されています。

16コア構成により、動画編集や3Dレンダリング、配信しながらのゲームプレイなど、マルチスレッド性能が求められる重い作業でも余裕を持って対応できます。一方で、純粋なゲーミング性能だけを見た場合、8コアのRyzen 7 9800X3Dの方が優れるケースもあります。これは、ゲームタイトルによってはシングルCCD内で処理が完結した方が、CCDをまたぐレイテンシが発生しないためです。

用途に応じた選択が重要となるモデルで、ゲームだけでなくクリエイティブ作業も本格的に行いたいユーザーや、将来的なマルチスレッド性能の向上を見越して余裕のあるシステムを構築したいユーザーに最適な選択肢となります。

7. まとめ

AMD Ryzen X3DのCCDはチップレット設計における中核的なコンピュートダイであり、CPUコアとL3キャッシュを搭載した重要なパーツです。
特に3D V-Cache技術を搭載したCCDは、ゲーミング性能において大きなアドバンテージを発揮します。デュアルCCD構成のモデルでは、3D V-Cache搭載CCDと非搭載CCDが混在するため、Windows設定やBIOS設定による最適化が性能を最大限引き出すカギとなります。
Ryzen 7 9800X3DはシングルCCD構成でシンプルな運用が可能ですが、Ryzen 9 9900X3DやRyzen 9 9950X3DはデュアルCCD構成のため、用途に応じた適切な設定が求められます。CCDの仕組みを理解することで、自分の使い方に最適なモデル選びや設定調整が可能になり、AMD Ryzen X3Dの真の性能を体感できるでしょう。ゲーミングPC/クリエイターPCのパソコン選びで悩んだらブルックテックPCへ。

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