次世代Wi-Fi規格であるWi-Fi6EとWi-Fi7の違いについて迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、両規格の通信速度、使用周波数帯域、同時接続台数などの技術的な違いを詳しく解説し、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく比較します。一般家庭での利用からゲーミング、オフィス利用まで、用途別の選び方や対応機器の選定ポイントも紹介するため、あなたの環境に最適なWi-Fi規格を判断できるようになります。結論として、現在の利用用途と予算を考慮すれば、Wi-Fi6Eは安定性とコストパフォーマンスに優れ、Wi-Fi7は将来性と最高性能を求める方に適しています。
1. Wi-Fi6EとWi-Fi7の基本概要
Wi-Fi技術は私たちの生活に欠かせないインフラとなっており、常に進化を続けています。現在注目されているのが、次世代無線LAN規格であるWi-Fi6EとWi-Fi7です。これらの規格は従来のWi-Fi規格と比較して大幅な性能向上を実現しており、特に高速通信や多台数同時接続において優れた能力を発揮します。
両規格の理解を深めるためには、それぞれの特徴と従来規格との位置づけを正確に把握することが重要です。ここでは基本的な概要から詳しく解説していきます。
1.1 Wi-Fi6Eとは何か
Wi-Fi6E(IEEE 802.11ax-2021)は、Wi-Fi6の拡張版として2021年に標準化された無線LAN規格です。最大の特徴は6GHz帯域を新たに利用できるようになったことで、従来の2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、より広い周波数帯域を活用できます。
6GHz帯域は比較的新しい周波数帯のため混雑が少なく、安定した高速通信を実現できます。理論上の最大通信速度は約9.6Gbpsに達し、従来のWi-Fi規格と比較して大幅な性能向上を実現しています。
日本国内では2022年9月から6GHz帯の利用が開始されており、対応機器も徐々に普及が進んでいます。特にビジネス用途や高性能を求める個人ユーザーを中心に注目を集めています。
1.2 Wi-Fi7とは何か
Wi-Fi7(IEEE 802.11be)は、2024年に標準化が完了した最新の無線LAN規格です。Wi-Fi6Eをさらに上回る性能を持つ次世代規格として位置づけられており、理論上の最大通信速度は約46Gbpsという驚異的な数値を実現しています。
Wi-Fi7の革新的な技術として、MLO(Multi-Link Operation)機能があります。この技術により、複数の周波数帯域を同時に使用することで、通信の安定性と速度の両方を大幅に向上させることができます。
また、320MHz幅のチャネルボンディングや4096-QAM変調方式の採用により、従来規格では実現できなかった超高速通信を可能にしています。現在は対応機器の製品化が始まったばかりですが、今後数年間で急速な普及が予想されています。
1.3 従来のWi-Fi規格との位置づけ
Wi-Fi6E、Wi-Fi7と従来規格の関係性を理解するために、主要なWi-Fi規格の進化を整理してみましょう。
規格名 | IEEE規格 | 最大通信速度 | 使用周波数帯 | 標準化年 |
---|---|---|---|---|
Wi-Fi4 | 802.11n | 600Mbps | 2.4GHz、5GHz | 2009年 |
Wi-Fi5 | 802.11ac | 6.9Gbps | 5GHz | 2013年 |
Wi-Fi6 | 802.11ax | 9.6Gbps | 2.4GHz、5GHz | 2019年 |
Wi-Fi6E | 802.11ax-2021 | 9.6Gbps | 2.4GHz、5GHz、6GHz | 2021年 |
Wi-Fi7 | 802.11be | 46Gbps | 2.4GHz、5GHz、6GHz | 2024年 |
この表からも分かるように、Wi-Fi6EとWi-Fi7は従来規格から大幅な性能向上を実現しています。特に通信速度の向上は顕著で、4K・8K動画のストリーミングやVR・ARアプリケーション、クラウドゲーミングなど、高帯域を必要とする用途での利用が期待されています。
Wi-Fi6Eは既存のWi-Fi6技術に6GHz帯域を追加した拡張版という位置づけですが、Wi-Fi7は全く新しい技術を多数採用した革新的な規格です。そのため、Wi-Fi7の方がより高い性能を発揮する一方で、対応機器の価格や普及速度に違いが生じています。
現在のインターネット環境においては、多くの家庭やオフィスでWi-Fi6が主流となっていますが、より高性能を求める用途や将来性を考慮した場合、Wi-Fi6EやWi-Fi7への移行を検討する価値があります。特に高性能パソコンやゲーミングデバイスを使用する環境では、これらの新規格の恩恵を大きく受けることができるでしょう。
2. Wi-Fi6EとWi-Fi7の技術的な違い
Wi-Fi6EとWi-Fi7は、どちらも次世代のワイヤレス通信規格として注目されていますが、技術的な仕様には大きな違いがあります。最新のWi-Fi規格を選ぶ際は、通信速度や周波数帯域、同時接続台数、遅延時間などの技術的な違いを理解することが重要です。ここでは、それぞれの規格の技術的な特徴を詳しく比較していきます。
2.1 通信速度の違い
Wi-Fi6EとWi-Fi7の最も分かりやすい違いは、理論上の最大通信速度です。Wi-Fi6Eは最大9.6Gbpsの通信速度を実現できる一方、Wi-Fi7では最大46Gbpsという驚異的な速度を達成しています。
規格 | 最大通信速度 | 実用速度の目安 | 4K動画ストリーミング |
---|---|---|---|
Wi-Fi6E | 最大9.6Gbps | 1-3Gbps | 複数台同時視聴可能 |
Wi-Fi7 | 最大46Gbps | 5-15Gbps | 8K動画も余裕で対応 |
Wi-Fi7の通信速度は、Wi-Fi6Eの約5倍に達するため、大容量ファイルの転送や複数のデバイスでの同時利用において、その差は顕著に現れます。特に、動画編集やゲーミング、VR・AR体験などの用途では、この速度差が作業効率に大きく影響することになります。
2.2 使用周波数帯域の違い
周波数帯域の活用方法も、両規格の重要な違いの一つです。Wi-Fi6Eは従来の2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、新たに6GHz帯を利用できるようになりました。一方、Wi-Fi7はこれらの帯域をより効率的に活用する技術を搭載しています。
Wi-Fi6Eの6GHz帯は、他の無線機器との干渉が少なく、クリーンな電波環境を提供します。この帯域では160MHzの広いチャネル幅を利用でき、安定した高速通信が可能になります。
Wi-Fi7では、MLO(Multi-Link Operation)技術により、複数の周波数帯域を同時に使用することができます。例えば、5GHz帯と6GHz帯を同時に利用することで、通信の安定性と速度の両方を向上させることが可能です。この技術により、一つの帯域で混雑が発生しても、他の帯域に自動的に切り替えて通信を継続できます。
2.3 同時接続台数の違い
現代の家庭やオフィスでは、スマートフォン、タブレット、パソコン、IoTデバイスなど、多数のデバイスがWi-Fiに接続されています。この点においても、Wi-Fi6EとWi-Fi7には明確な違いがあります。
Wi-Fi6Eは、MU-MIMO(Multi-User Multiple-Input Multiple-Output)技術により、最大8台のデバイスと同時通信が可能です。さらに、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)技術により、帯域幅を効率的に分割して複数のデバイスに割り当てることができます。
Wi-Fi7では、MU-MIMOが16台のデバイスまで同時対応できるように拡張されており、より多くのデバイスとの効率的な通信が可能になっています。また、改良されたOFDMA技術により、小さなデータパケットでも効率的に処理できるようになり、IoTデバイスが多数接続される環境でも安定した通信を維持できます。
技術 | Wi-Fi6E | Wi-Fi7 | 利用場面での効果 |
---|---|---|---|
MU-MIMO | 最大8台同時 | 最大16台同時 | 家族全員のデバイス利用 |
OFDMA | 基本対応 | 改良版 | IoTデバイス大量接続 |
BSS Coloring | 対応 | 強化版 | 近隣Wi-Fi干渉軽減 |
2.4 遅延時間の違い
遅延時間(レイテンシー)は、特にオンラインゲーミングやリアルタイムビデオ会議において重要な要素です。Wi-Fi6Eでは平均的な遅延時間が20-30ミリ秒程度まで改善されていますが、Wi-Fi7ではさらなる低遅延を実現しています。
Wi-Fi7では、遅延時間を5-10ミリ秒まで短縮することが可能で、これはプロゲーマーレベルでも満足できる水準です。この超低遅延は、Multi-Link Operation技術による複数帯域の同時利用と、改良されたQoS(Quality of Service)制御によって実現されています。
また、Wi-Fi7では「Deterministic Latency」と呼ばれる技術により、遅延時間の変動を最小限に抑えることができます。これにより、VR・ARアプリケーションや産業用IoTなど、安定した低遅延が求められるアプリケーションでも安心して利用できます。
パソコンでの作業においても、この遅延時間の違いは重要です。クラウドベースのアプリケーションやリモートデスクトップを使用する際、遅延が少ないほどストレスのない作業環境を実現できます。特に、動画編集や3Dモデリングなどの重い処理を行う場合、ネットワーク遅延の改善は作業効率の大幅な向上につながります。
3. Wi-Fi6Eのメリット・デメリット
Wi-Fi6Eは従来のWi-Fi規格に新たな6GHz帯域を追加した規格として、多くの注目を集めています。この新しい規格には優れた特徴がある一方で、いくつかの制約も存在します。ここでは、Wi-Fi6Eを導入する前に知っておくべきメリットとデメリットについて詳しく解説します。
3.1 Wi-Fi6Eのメリット
Wi-Fi6Eが持つ主要な利点は、新しい6GHz帯域の活用により実現される性能向上にあります。従来の2.4GHz帯と5GHz帯に加えて6GHz帯が使用できることで、ワイヤレス通信環境が大幅に改善されます。
3.1.1 6GHz帯による混雑回避
6GHz帯域は現在ほとんど使用されていない周波数帯のため、電波干渉が極めて少ない環境でインターネット接続が可能です。従来の2.4GHz帯や5GHz帯は、多くの機器が同じ周波数を使用するため混雑が発生しやすく、通信速度の低下や接続の不安定さが問題となっていました。
6GHz帯では、これらの混雑した周波数帯を避けることができるため、マンションやオフィスビルなど、多くのWi-Fiネットワークが密集する環境でも安定した通信が実現できます。特に都市部では周辺のWi-Fiネットワークからの干渉が深刻な問題となっていますが、Wi-Fi6Eならこの問題を効果的に解決できます。
3.1.2 安定した高速通信
Wi-Fi6Eは理論上最大通信速度が9.6Gbpsという従来規格を大幅に上回る高速通信を実現します。6GHz帯域では利用可能なチャンネル幅が広く、160MHzの広帯域チャンネルを使用することで、大容量データの高速転送が可能になります。
項目 | Wi-Fi6 | Wi-Fi6E |
---|---|---|
最大通信速度 | 9.6Gbps | 9.6Gbps |
使用周波数帯 | 2.4GHz、5GHz | 2.4GHz、5GHz、6GHz |
利用可能チャンネル数 | 限定的 | 大幅増加 |
この高速通信により、4K動画のストリーミング再生、大容量ファイルのクラウドへのアップロード、オンラインゲームなど、高い帯域幅を必要とする用途でも快適に利用できます。
3.1.3 対応機器の普及状況
Wi-Fi6Eは2021年頃から対応製品が市場に登場し始めており、現在では多くのメーカーからルーターやスマートフォンなどの対応機器が販売されています。特にハイエンドスマートフォンやゲーミングノートパソコンでは、Wi-Fi6E対応が標準的になってきています。
iPhoneでは2022年発売のiPhone14 Proシリーズから、AndroidスマートフォンではSamsung Galaxy S21シリーズやGoogle Pixelシリーズなど、主要メーカーの製品でWi-Fi6E対応が進んでいます。パソコン分野でも、Intel製Wi-Fi6Eチップを搭載したモデルが増加しており、導入のハードルは着実に下がっています。
3.2 Wi-Fi6Eのデメリット
Wi-Fi6Eには優れた特徴がある一方で、導入前に理解しておくべき制約や課題も存在します。これらのデメリットを把握することで、より適切な判断ができるでしょう。
3.2.1 電波到達距離の制限
Wi-Fi6Eの最大の制約は、6GHz帯域の電波到達距離が従来の周波数帯と比較して短いという点です。一般的に、周波数が高くなるほど電波の直進性が強くなり、障害物による減衰も大きくなります。
具体的には、2.4GHz帯では壁や床を通り抜けやすく広範囲をカバーできますが、6GHz帯では同じ出力でも到達距離が約30~50%程度短くなります。このため、広い住宅や複数階にまたがる建物では、6GHz帯のメリットを十分に活用できない場合があります。
また、木材や石膏ボードなどの建材でも電波の減衰が大きくなるため、ルーターの設置場所をより慎重に検討する必要があります。メッシュWi-Fiシステムの導入や、複数のアクセスポイントの設置が必要になる場合もあります。
3.2.2 対応機器のコスト
Wi-Fi6E対応機器は、従来のWi-Fi6対応機器と比較して価格が高く設定されている場合が多いです。特にルーターでは、Wi-Fi6E対応モデルはWi-Fi6対応モデルよりも1.5~2倍程度高額になることが一般的です。
機器タイプ | Wi-Fi6対応 | Wi-Fi6E対応 | 価格差 |
---|---|---|---|
家庭用ルーター | 15,000~30,000円 | 25,000~50,000円 | 約1.5~2倍 |
ゲーミングルーター | 30,000~60,000円 | 50,000~100,000円 | 約1.5~2倍 |
ノートパソコン | 追加費用なし | 5,000~15,000円追加 | オプション料金 |
この価格差は、6GHz帯対応のために追加される無線チップやアンテナのコストが主な要因です。また、Wi-Fi6E対応のスマートフォンやパソコンも、同等スペックのWi-Fi6対応モデルと比較して高価格になる傾向があります。
さらに、Wi-Fi6Eの恩恵を最大限に受けるためには、ルーターだけでなく接続する全ての機器がWi-Fi6Eに対応している必要があります。家庭内の複数の機器を一度にアップグレードする場合、総コストは相当な金額になる可能性があります。
4. Wi-Fi7のメリット・デメリット
Wi-Fi7は最新のワイヤレス通信規格として、従来の規格を大幅に上回る性能を実現しています。ここでは、Wi-Fi7を導入することで得られるメリットと、現段階で考慮すべきデメリットについて詳しく解説します。
4.1 Wi-Fi7のメリット
Wi-Fi7は次世代ワイヤレス通信として、多くの革新的な機能を搭載しています。特に高速通信、安定性、低遅延の3つの観点で大幅な改善を実現しています。
4.1.1 最大通信速度の大幅向上
Wi-Fi7の最も注目すべき特徴は、理論値最大46Gbpsという圧倒的な通信速度です。これはWi-Fi6Eの約4倍、Wi-Fi6の約5倍の速度に相当します。
規格 | 最大通信速度 | Wi-Fi7との比較 |
---|---|---|
Wi-Fi7 | 46Gbps | 基準 |
Wi-Fi6E | 9.6Gbps | 約4.8倍遅い |
Wi-Fi6 | 9.6Gbps | 約4.8倍遅い |
この高速化により、4K・8K動画のストリーミング、大容量ファイルの転送、オンラインゲームなどが従来よりもスムーズに行えます。特に複数のデバイスで同時に高画質動画を視聴する場合でも、帯域不足によるバッファリングが大幅に減少します。
320MHz幅のチャネル幅に対応することで、従来の160MHz幅と比較して2倍のデータ量を同時に送信できるようになりました。これにより、実際の使用環境でも体感できるレベルでの速度向上を実現しています。
4.1.2 MLO技術による安定性向上
MLO(Multi-Link Operation)技術は、複数の周波数帯を同時に使用することで通信の安定性を飛躍的に向上させる革新的な機能です。
従来のWi-Fi規格では、2.4GHz、5GHz、6GHzのいずれか1つの周波数帯のみを使用していました。しかし、Wi-Fi7のMLO技術により、これらの周波数帯を同時に活用できるようになります。
MLO技術の具体的なメリットは以下の通りです
- 一つの周波数帯で障害が発生しても、他の周波数帯で通信を継続
- 各周波数帯の空いているチャネルを自動選択して最適な通信環境を維持
- 負荷分散により各周波数帯の混雑を回避
- 冗長性確保によるネットワーク障害時の復旧時間短縮
この技術により、オンライン会議中の接続切断や、ゲーム中のラグによる影響を大幅に軽減できます。特にテレワークが普及した現在において、安定したネットワーク環境は業務効率に直結する重要な要素となっています。
4.1.3 超低遅延の実現
Wi-Fi7は遅延時間を従来規格の約半分まで削減することで、リアルタイム性が重要なアプリケーションでの使用体験を大幅に改善します。
用途 | Wi-Fi6Eでの遅延 | Wi-Fi7での遅延 | 改善効果 |
---|---|---|---|
オンラインゲーム | 15-20ms | 5-10ms | 競技レベルでのプレイが可能 |
ビデオ通話 | 50-100ms | 20-50ms | 自然な会話が可能 |
ライブ配信 | 200-500ms | 100-200ms | 視聴者との双方向性向上 |
特にFPSゲームやMOBAなどの競技性の高いオンラインゲームでは、数ミリ秒の遅延差が勝敗を左右することがあります。Wi-Fi7の低遅延特性により、有線接続に匹敵するレスポンス性能を無線環境で実現できます。
また、VRやARアプリケーションにおいても、動作とディスプレイ表示の同期性が向上し、酔いや違和感の軽減につながります。これにより、これまで有線接続が必須とされていた用途でも、無線接続での利用が実用的になります。
4.2 Wi-Fi7のデメリット
Wi-Fi7の優れた性能に対して、現段階では導入時に考慮すべきいくつかの課題があります。これらのデメリットを理解した上で導入を検討することが重要です。
4.2.1 対応機器の価格が高額
Wi-Fi7対応機器は現在のところ高価格帯に位置しており、導入コストが大きな負担となる可能性があります。
機器種類 | Wi-Fi6E対応製品 | Wi-Fi7対応製品 | 価格差 |
---|---|---|---|
無線LANルーター | 15,000-50,000円 | 50,000-150,000円 | 約2-3倍 |
ノートパソコン | +10,000-20,000円 | +30,000-50,000円 | 約2-3倍 |
スマートフォン | +5,000-15,000円 | +20,000-40,000円 | 約3-4倍 |
特に企業や店舗で複数台の機器を導入する場合、初期投資額が大幅に増加します。例えば、20台のパソコンをWi-Fi7対応にアップグレードする場合、従来規格と比較して追加で60万円から100万円程度のコストが発生する可能性があります。
また、Wi-Fi7の性能を最大限活用するためには、ルーターだけでなく接続するすべてのデバイスがWi-Fi7に対応している必要があります。段階的な導入を行う場合でも、計画的な予算確保が重要になります。
4.2.2 普及までの時間
Wi-Fi7は2024年に正式標準化されたばかりで、対応機器の種類や選択肢が限られている状況です。
現在のWi-Fi7対応機器は主にハイエンド製品に限定されており、以下のような制約があります
- 対応ルーターの機種数が少なく、選択肢が限定的
- スマートフォンやタブレットでの対応機種が高価格帯に集中
- IoT機器やスマート家電の対応が進んでいない
- メーカーごとの実装差により性能のばらつきが存在
普及が進むまでの期間中は、Wi-Fi7の先進的な機能を十分に活用できない場面が多く発生します。特にMLO技術などの新機能は、対応機器が少ない現状では実用性が限定的です。
また、Wi-Fi7対応機器を購入しても、インターネット回線の速度やプロバイダーのサービス品質が性能のボトルネックになる場合があります。家庭用光回線の多くは1Gbpsが上限となっているため、Wi-Fi7の高速性能を完全に活かせない環境も多く存在します。
技術サポートやトラブルシューティングの情報も、普及初期段階では限定的です。問題が発生した際の解決策や最適化方法に関する情報が不足しているため、導入後の運用で困難を感じる可能性があります。
5. どちらを選ぶべきか用途別の選び方
Wi-Fi6EとWi-Fi7は、それぞれ異なる特徴を持つため、利用用途や環境に応じて最適な選択が変わります。ここでは、具体的な使用シーンごとに、どちらの規格が適しているかを詳しく解説します。
5.1 一般家庭での利用の場合
一般的な家庭でのインターネット利用においては、Wi-Fi6Eが現実的で十分な選択肢となります。動画視聴、SNS利用、メール送受信といった日常的な用途では、Wi-Fi6Eの性能で十分に快適な通信環境を実現できます。
家庭での接続機器数は通常10台程度であり、Wi-Fi6Eの同時接続性能で問題なく対応可能です。また、対応機器の普及も進んでおり、コストパフォーマンスを重視する家庭には最適です。
項目 | Wi-Fi6E | Wi-Fi7 |
---|---|---|
家庭利用の適合性 | 非常に高い | オーバースペック |
コストパフォーマンス | 優秀 | やや高額 |
機器の選択肢 | 豊富 | 限定的 |
ただし、将来的な技術の進歩を見据えて長期的に使用したい場合や、4K・8K動画の配信を頻繁に行う家庭では、Wi-Fi7の導入も検討する価値があります。
5.2 ゲーミングや動画配信の場合
オンラインゲームや動画配信を行うユーザーには、Wi-Fi7が圧倒的に有利です。特に遅延時間の短縮は、競技性の高いゲームにおいて勝敗を左右する重要な要素となります。
Wi-Fi7のMLO(Multi-Link Operation)技術により、複数の周波数帯を同時に使用することで、安定した高速通信を維持できます。これにより、配信中のフレームドロップや音声の途切れを大幅に削減できます。
プロゲーマーやストリーマーにとって、1msでも短い遅延時間は競争力向上に直結します。また、4K以上の高画質配信においても、Wi-Fi7の高い帯域幅が威力を発揮します。
ただし、予算に制約がある場合は、Wi-Fi6Eでも十分にゲーミングや配信活動を楽しむことが可能です。特に、有線接続と併用することで、Wi-Fi6Eでも安定した通信環境を構築できます。
5.3 オフィスや店舗での利用の場合
ビジネス環境では、接続デバイス数と通信の安定性が重要な判断基準となります。中小規模のオフィスではWi-Fi6Eが最適で、大規模なオフィスや多くの顧客が利用する店舗ではWi-Fi7の導入を検討すべきです。
オフィスでの一般的な業務(メール、ウェブ閲覧、クラウドサービス利用)には、Wi-Fi6Eの性能で十分対応できます。また、導入コストを抑えながら、現在の業務効率を向上させることができます。
環境 | 推奨規格 | 理由 |
---|---|---|
小規模オフィス(~20名) | Wi-Fi6E | コスト効率と性能のバランス |
中規模オフィス(20~50名) | Wi-Fi6E | 十分な同時接続性能 |
大規模オフィス(50名以上) | Wi-Fi7 | 高い同時接続性能が必要 |
カフェ・レストラン | Wi-Fi7 | 多数の顧客デバイス対応 |
一方、多くの顧客が同時にインターネットを利用するカフェや商業施設では、Wi-Fi7の高い同時接続性能が顧客満足度の向上に直結します。また、将来的なデジタル化の進展を見据えた投資としても価値があります。
5.4 予算を重視する場合
コストパフォーマンスを最優先に考える場合は、Wi-Fi6Eが圧倒的に有利です。ルーター本体の価格差だけでなく、対応デバイスの価格も考慮する必要があります。
Wi-Fi6E対応機器は市場に多く流通しており、価格競争により手頃な価格で購入できます。一方、Wi-Fi7対応機器はまだ高価格帯に位置しており、総合的な導入コストが高くなる傾向があります。
予算に制約がある場合でも、Wi-Fi6Eを選択することで、現在の通信環境を大幅に改善できます。特に、Wi-Fi5以前の規格から買い替える場合は、Wi-Fi6Eでも十分に性能向上を実感できるでしょう。
ただし、長期的な視点で考えると、Wi-Fi7への投資が結果的にコストパフォーマンスに優れる場合もあります。使用期間や将来的な拡張性を総合的に判断することが重要です。
6. 対応機器の選び方と注意点
Wi-Fi6EやWi-Fi7の性能を最大限に活用するためには、適切な対応機器の選択が重要です。ここでは、ルーターから端末まで、購入前に知っておきたいポイントを詳しく解説します。
6.1 ルーターの選び方
Wi-Fi6EやWi-Fi7対応ルーターを選ぶ際は、まず利用環境に応じた仕様を確認することが大切です。家庭用では、接続予定の端末数や利用面積を考慮して選択しましょう。
Wi-Fi6E対応ルーターの選び方のポイントとして、6GHz帯の電波出力や対応チャンネル数を確認することが重要です。電波出力が強いほど安定した通信が期待できますが、消費電力も高くなる傾向があります。
項目 | Wi-Fi6E | Wi-Fi7 | 確認ポイント |
---|---|---|---|
最大通信速度 | 6.9Gbps程度 | 46Gbps程度 | 実効速度を重視 |
同時接続台数 | 100台程度 | 200台以上 | 家族構成に応じて選択 |
価格帯 | 2万円~8万円 | 5万円~15万円 | 予算とのバランス |
消費電力 | 20W~40W | 30W~60W | 電気代への影響 |
Wi-Fi7対応ルーターでは、MLO(Multi-Link Operation)機能の対応状況を必ず確認してください。この機能により、複数の周波数帯を同時に使用して通信の安定性を向上させることができます。
また、アンテナ数やMIMO技術の対応状況も重要な選択基準です。4×4 MIMOや8×8 MIMO対応モデルは、複数端末の同時通信時により優れた性能を発揮します。
6.2 スマートフォンやパソコンの対応状況
端末側の対応状況を把握することで、Wi-Fi6EやWi-Fi7の恩恵を実際に受けられるかどうかが決まります。現在市場に流通している主要端末の対応状況を整理してみましょう。
スマートフォンの対応状況では、iPhone 15シリーズからWi-Fi6E対応となり、Android端末では2022年以降のフラッグシップモデルが主に対応しています。Wi-Fi7については、2024年以降に発売される一部の高性能端末から対応が始まっています。
端末カテゴリ | Wi-Fi6E対応開始時期 | Wi-Fi7対応開始時期 | 主要対応機種 |
---|---|---|---|
iPhone | 2023年(iPhone 15シリーズ) | 未対応 | iPhone 15 Pro/Pro Max |
Android | 2022年 | 2024年 | Galaxy S24、Xperia 1 V |
ノートパソコン | 2021年 | 2024年 | Intel AX210搭載モデル |
デスクトップPC | 2021年 | 2024年 | マザーボード標準搭載 |
パソコンにおいては、Wi-Fiチップの種類によって対応状況が異なります。Intel AX210やAX211チップ搭載モデルはWi-Fi6Eに対応し、BE200シリーズからWi-Fi7対応となっています。
既存端末でのアップグレード方法として、デスクトップパソコンではPCIe接続のWi-Fiカードを増設することで対応が可能です。ノートパソコンの場合は、M.2スロット対応のWi-Fiモジュール交換ができる機種もありますが、技術的な知識が必要となります。
6.3 購入前に確認すべきポイント
Wi-Fi6EやWi-Fi7対応機器を購入する前に、いくつかの重要なポイントを確認することで、購入後の満足度を高めることができます。
互換性の確認は最も重要な要素の一つです。新しい規格のルーターを導入しても、接続する端末が対応していなければ性能向上は期待できません。現在利用している端末の仕様を事前に調べておきましょう。
電波の届く範囲についても注意が必要です。特に6GHz帯は2.4GHzや5GHz帯と比較して直進性が強く、障害物に弱い特性があります。木造住宅では問題ありませんが、鉄筋コンクリート造の建物では電波が届きにくい場合があります。
確認項目 | Wi-Fi6E | Wi-Fi7 | 対策方法 |
---|---|---|---|
建物構造での影響 | 6GHz帯は障害物に弱い | 同様の特性 | 中継器の活用 |
他機器との干渉 | 6GHz帯は干渉少 | MLOで回避可能 | チャンネル設定の最適化 |
消費電力 | 従来比20%増 | 従来比40%増 | 省電力モード活用 |
発熱対策 | 適度な通風必要 | より多くの通風必要 | 設置場所の検討 |
将来性を考慮した選択も重要です。Wi-Fi6Eは現在普及期にあり、対応機器も豊富になってきています。一方、Wi-Fi7は最新技術として高い性能を誇りますが、対応機器の価格が高く、普及にはもう少し時間がかかる見込みです。
セキュリティ機能についても確認が必要です。WPA3対応は最低限として、ファームウェアのアップデート頻度やサポート期間も購入前に調べておきましょう。メーカーによってサポート体制に差があるため、長期間安心して利用できるかどうかを判断材料に含めてください。
7. まとめ
Wi-Fi6EとWi-Fi7は、それぞれ異なる特徴を持つ次世代Wi-Fi規格です。Wi-Fi6Eは6GHz帯の追加により混雑回避と安定した通信を実現し、現在の対応機器も充実しているため、すぐに恩恵を受けたい方におすすめです。
一方、Wi-Fi7は最大通信速度の大幅向上とMLO技術による安定性向上が魅力ですが、対応機器はまだ限定的で価格も高めです。一般家庭であればWi-Fi6Eで十分な性能を得られますが、ゲーミングや動画配信など高いパフォーマンスが必要な用途では、予算に余裕があればWi-Fi7を検討する価値があります。
どちらを選ぶにしても、ルーターだけでなくパソコンやスマートフォンなどの対応機器も重要です。ゲーミングPC/クリエイターPCのパソコン選びで悩んだらブルックテックPCへ。
【パソコン選びに困ったらブルックテックPCの無料相談】
ブルックテックPCは「3年故障率1%未満」という圧倒的な耐久性を持つマシンを販売しており、映像編集を行うCG/VFXクリエイター,VTuber,音楽制作会社、プロゲーマー等幅広い用途と職種で利用されています。
BTOパソコンは知識がないと購入が難しいと思われがちですが、ブルックテックPCでは公式LINEやホームページのお問い合わせフォームの質問に答えるだけで、気軽に自分に合うパソコンを相談することが可能!
問い合わせには専門のエンジニアスタッフが対応を行う体制なので初心者でも安心して相談と購入が可能です。
パソコンにおける”コスパ”は「壊れにくいこと」。本当にコストパフォーマンスに優れたパソコンを探している方や、サポート対応が柔軟なPCメーカーを探している方はブルックテックPCがオススメです!