静圧と負圧の違いとは?パソコンの冷却を最適化する基礎知識と実践テクニック

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パソコンの冷却について調べていると必ず目にする「静圧」と「負圧」という言葉。この2つの違いを正しく理解することで、パソコンの冷却効率を大幅に向上させることができます。
本記事では静圧と負圧の基本的な概念から、それぞれのメリット・デメリット、そして実際のファン配置まで、パソコン冷却の最適化に必要な知識を網羅的に解説します。ゲーミングPC、静音PC、ワークステーションなど、用途に応じた最適な冷却構成もご紹介しますので、パソコンの温度管理に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。適切な冷却構成を選ぶことで、パソコンの安定性向上と長寿命化を実現できます。

1. パソコン冷却における静圧と負圧の基本概念

パソコンの冷却システムを理解する上で、静圧と負圧という概念は非常に重要です。これらはケース内部のエアフローを左右する要素であり、パソコンの性能や寿命に直接影響を与えます。適切な冷却構成を選ぶためには、まずこの2つの基本的な概念をしっかりと理解することが必要です。

多くのパソコン初心者の方は、「ファンをたくさん付ければ冷える」と考えがちですが、実際にはファンの配置や数のバランスによって、ケース内部の気圧状態が変化し、冷却効果も大きく変わります。この章では、静圧と負圧の基本的な仕組みと、それぞれがパソコン冷却においてどのような役割を果たすのかを詳しく解説していきます。

1.1 静圧とは何か

静圧とは、ケース内部に流入する空気の量が排出される空気の量よりも多い状態を指します。具体的には、吸気ファンの風量が排気ファンの風量を上回ることで、ケース内部の気圧が外部よりも高くなる状態です。

この状態では、ケース内部から外部へ向かって常に空気が押し出されようとする力が働きます。そのため、ケースの隙間や通気口から空気が外へ流れ出る傾向があります。静圧構成では、吸気口以外からの空気の侵入が起こりにくく、フィルターを通過した清浄な空気のみがケース内部を循環することになります。

静圧の状態を作り出すには、以下のような構成が一般的です。

ファン構成詳細
吸気ファン前面に120mmまたは140mmファンを2~3基配置
排気ファン背面に120mmファンを1基配置
風量比吸気ファンの合計風量が排気ファンの1.2~1.5倍程度

静圧状態では、ケース内の空気が常に外へ押し出されているため、ホコリや微細なゴミが隙間から侵入しにくいというメリットがあります。ダストフィルター付きの吸気口から取り込まれた清浄な空気のみが内部を循環するため、パーツへのホコリの付着を最小限に抑えることができます。

1.2 負圧とは何か

負圧とは、ケース内部から排出される空気の量が流入する空気の量よりも多い状態を指します。排気ファンの風量が吸気ファンの風量を上回ることで、ケース内部の気圧が外部よりも低くなる状態です。

この状態では、ケース内部が真空状態に近づこうとする力が働くため、外部からケース内部へ向かって空気が引き込まれます。吸気口だけでなく、ケースの隙間やPCIスロットのカバー部分、配線用の開口部など、あらゆる隙間から空気が流入する特徴があります。

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負圧の状態を作り出すには、以下のような構成が用いられます。

ファン構成詳細
吸気ファン前面に120mmファンを1基のみ配置
排気ファン背面と上部に120mmファンを計2~3基配置
風量比排気ファンの合計風量が吸気ファンの1.3~2倍程度

負圧状態では、熱い空気を強制的に排出する力が強いため、発熱の大きいパーツ周辺の熱気を効率的に外へ逃がすことができます。特にグラフィックボードやCPU周辺の熱を素早く排出できるため、瞬間的な高負荷時の冷却には有効です。

ただし、フィルターを通さない空気がケース内に入り込むため、ホコリの侵入リスクは静圧構成よりも高くなります。そのため、定期的な清掃やメンテナンスの頻度を高める必要があります。

1.3 パソコン冷却における静圧と負圧の役割

静圧と負圧は、それぞれ異なる冷却特性を持ち、パソコンの使用環境や目的に応じて使い分けることが重要です。どちらが優れているということではなく、自分のパソコンの構成や使用目的に合った気圧バランスを選択することが最適な冷却への第一歩となります。

静圧構成は、クリーンな環境を維持しながら安定した冷却を実現する役割を担います。長時間の連続稼働が求められるワークステーションや、メンテナンスの頻度を減らしたいユーザーに適しています。吸気口にダストフィルターを装着することで、ケース内部への異物混入を防ぎながら効率的な冷却が可能です。

一方、負圧構成は、瞬間的な高負荷時の熱を素早く排出する役割を果たします。ゲーミングPCのように、短時間で急激に温度が上昇するような使用環境では、熱気を強制排気する負圧構成が効果を発揮します。ただし、ホコリ対策としては、ケースの隙間を減らしたり、定期的な清掃を行ったりする必要があります。

近年では、静圧と負圧の中間である「バランス型」を採用するユーザーも増えています。吸気ファンと排気ファンの風量をほぼ同等にすることで、両方のメリットを取り入れながらデメリットを軽減する構成です。

構成タイプ主な役割適した用途
静圧構成クリーンな環境維持と安定冷却ワークステーション、長時間稼働PC
負圧構成高負荷時の迅速な熱排出ゲーミングPC、オーバークロック環境
バランス構成両方のメリットの調和汎用PC、マルチタスク環境

パソコン冷却において重要なのは、単にファンの数を増やすことではなく、ケース内の気圧バランスを意識した構成を作ることです。静圧と負圧の特性を理解し、自分のパソコンの発熱状況や設置環境に合わせて最適な構成を選ぶことで、パーツの寿命を延ばし、安定した動作を実現できます。

また、ケース内のエアフローは単純な直線的な流れではなく、パーツの配置やケーブルの取り回しによって複雑に変化します。そのため、静圧や負圧の概念を基本としながらも、実際のケース内部の状況に応じて柔軟にファン構成を調整することが、真に効果的な冷却システムを構築するポイントとなります。

2. 静圧と負圧の違いを理解する

パソコンの冷却を最適化するためには、静圧と負圧の違いを正確に理解することが欠かせません。この2つの概念は、ケース内部のエアフロー特性を決定づける重要な要素です。どちらの構成を選ぶかによって、冷却性能だけでなくメンテナンス性や静音性にも大きな影響を与えます。ここでは、それぞれの特徴を具体的に比較しながら解説していきます。

2.1 エアフローの方向性による違い

静圧構成と負圧構成の最も基本的な違いは、ケース内部に流入する空気量と排出される空気量のバランスにあります。このバランスが、ケース内部の気圧状態を決定します。

静圧構成では、吸気ファンの風量が排気ファンの風量を上回るように設定されています。例えば、フロントに120mmファンを3基搭載し、リアに120mmファンを1基だけ配置するような構成です。この場合、ケース内部に外部よりも多くの空気が送り込まれるため、内部の気圧が外部よりも高くなります。結果として、ケース内部から外部へ向かう気流が自然発生し、隙間やスリットから空気が押し出されます。

一方、負圧構成では排気ファンの風量が吸気ファンの風量を上回ります。リアとトップに合計3基のファンを配置し、フロントには1基だけ搭載するような設定です。この構成では、ケース内部から多くの空気が排出されるため、内部の気圧が外部よりも低くなります。すると、ケースの隙間やスリットから外部の空気が自然に吸い込まれる現象が起こります。

構成タイプファンバランス内部気圧主な気流の方向
静圧構成吸気>排気外部より高い内部から外部へ押し出される
負圧構成吸気<排気外部より低い外部から内部へ吸い込まれる
バランス構成吸気≒排気外部とほぼ同じファンが作る気流のみ

エアフローの方向性は、PCケース全体の冷却効率に直結します。静圧構成では計画的に設置した吸気口から確実に外気を取り込めるため、フィルターを通した清浄な空気だけをケース内に導入できます。負圧構成では排気効率が高いため、熱がこもりにくく、特に高発熱パーツ周辺の熱気を素早く排出できる利点があります。

2.2 冷却効率への影響の違い

静圧構成と負圧構成では、冷却効率に異なる特性が現れます。どちらが優れているかは一概には言えず、PCケースの設計や搭載するパーツによって最適な選択が変わります。

静圧構成の冷却効率の特徴は、計画的なエアフローを構築しやすい点にあります。吸気ファンから取り込まれた冷気が、CPUクーラーやグラフィックボードなどの発熱パーツを順番に通過し、最終的に排気口から排出される一方向の気流を作り出せます。この構成では、各パーツに確実に新鮮な外気が供給されるため、安定した冷却性能を発揮します。特に、フロントパネルが密閉されているケースや、水冷ラジエーターを搭載している場合には、静圧を高めることで冷却効率が向上します。

負圧構成は、熱気の排出効率に優れている点が大きな特徴です。ケース内で発生した熱気が滞留する前に素早く排出されるため、局所的な高温スポットが発生しにくくなります。特に、グラフィックボードやVRMなど、特定のパーツから集中的に熱が発生する環境では、負圧構成が効果的に働きます。ケース全体が排気口のように機能するため、排気ファン近くだけでなく、ケース全体から熱気が抜けていきます。

実際の温度差については、適切に構成された静圧と負圧では大きな差は生まれません。むしろ重要なのは、ケース内部でのエアフローの乱れをいかに少なくするかという点です。ケーブルが整理されていない場合や、大型のCPUクーラーが気流を妨げている場合には、どちらの構成でも冷却効率が低下します。

評価項目静圧構成負圧構成
計画的なエアフロー優れるやや劣る
熱気の排出速度やや劣る優れる
高密度ケースでの効率優れる普通
水冷ラジエーター使用時優れるやや劣る
局所的な高温対策普通優れる

冷却効率を最大化するためには、単純に静圧か負圧かを選ぶだけでなく、ファンの配置位置や回転数、ケース内のパーツレイアウトを総合的に考慮する必要があります。例えば、フロントに水冷ラジエーターを配置する場合は静圧を高めた方が効率的ですが、トップに水冷ラジエーターを配置する場合は負圧構成の方が熱気を効果的に排出できることがあります。

2.3 ホコリの侵入リスクの違い

静圧構成と負圧構成で最も顕著に違いが現れるのが、ホコリの侵入に関する特性です。この違いは、長期的なメンテナンス性に大きく影響します。

静圧構成では、ケース内部の気圧が外部より高いため、隙間やスリットから外気が侵入することがありません。全ての吸気はファンが設置された吸気口からのみ行われるため、これらの吸気口にダストフィルターを設置すれば、ケース内部へのホコリの侵入を効果的に防げます。つまり、フィルターが設置されていない隙間からホコリが入り込む心配がないのです。

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実際の使用環境では、PCケースには様々な隙間が存在します。拡張スロットのカバー、前面パネルと本体の接合部、電源ユニット周辺の通気口、背面のケーブル引き出し口などです。静圧構成では、これらの隙間全てから内側に向かう気圧がかかっているため、ホコリが侵入する物理的な力が働きません。むしろ、これらの隙間から少量の空気が外に押し出される形になります。

対照的に、負圧構成ではケース内部の気圧が外部より低いため、フィルターが設置されていない全ての隙間から空気が吸い込まれます。この空気と一緒に、室内のホコリがケース内部に侵入してしまいます。特に、床に近い位置に設置されたデスクトップPCでは、床面付近に漂うホコリが多いため、負圧構成での使用には注意が必要です。

侵入箇所静圧構成での状態負圧構成での状態
フィルター付き吸気口主要な吸気経路(フィルタリング済み)吸気経路の一部(フィルタリング済み)
拡張スロット隙間空気が押し出される(ホコリ侵入なし)空気が吸い込まれる(ホコリ侵入あり)
前面パネル隙間空気が押し出される(ホコリ侵入なし)空気が吸い込まれる(ホコリ侵入あり)
背面ケーブル穴空気が押し出される(ホコリ侵入なし)空気が吸い込まれる(ホコリ侵入あり)

ホコリの蓄積は、冷却性能の低下だけでなく、故障のリスクも高めます。ホコリが冷却ファンに蓄積すると回転効率が落ち、異音の原因にもなります。また、ヒートシンクやグラフィックボードの冷却フィンにホコリが詰まると、放熱性能が著しく低下します。さらに、マザーボード上に堆積したホコリは湿気を含むと導電性を持ち、ショートの原因になることもあります。

ただし、負圧構成であっても、適切なメンテナンス計画を立てれば問題なく運用できます。月に一度程度、圧縮空気でケース内部を清掃する習慣をつければ、ホコリの蓄積を防げます。また、PCケースを床から離して机の上に設置する、空気清浄機を併用するなどの工夫も有効です。

静圧構成を選択する場合でも、吸気口のダストフィルターは定期的な清掃が必要です。フィルターにホコリが詰まると吸気効率が落ち、ファンに負担がかかって騒音が増加します。フィルターは取り外しが簡単な設計になっているケースが多いため、2週間から1ヶ月に一度程度、掃除機で吸い取るか水洗いするとよいでしょう。

3. 静圧構成のメリットとデメリット

静圧構成とは、ケース内への吸気量が排気量を上回る状態を指します。この構成では、ケース内の気圧が外気よりも高くなるため、意図しない隙間からの空気の流入を防ぐことができます。パソコンの冷却性能を最適化するためには、静圧構成の特性を正しく理解し、自分の使用環境に適しているかを判断することが重要です。

3.1 静圧構成の利点

静圧構成の最大の利点は、ホコリの侵入を効果的に抑制できる点にあります。ケース内の気圧が高いため、フィルターが設置されていない隙間やスリットから外気が侵入することがありません。すべての空気がフィルター付きの吸気口を通過するため、ケース内部を清潔に保ちやすくなります。

特にホコリの多い環境でパソコンを使用する場合、静圧構成は大きなメリットを発揮します。リビングルームやペットを飼育している部屋、床に近い場所にパソコンを設置している場合でも、定期的なメンテナンス頻度を減らすことができます。

また、静圧構成ではエアフローの方向を制御しやすいという特徴があります。吸気ファンから入った空気が確実にケース内を通過し、排気口から排出されるため、CPUやGPUなどの発熱部品に効率的に冷気を届けることができます。

利点具体的な効果特に有効な環境
ホコリ侵入の抑制フィルター未設置箇所からの侵入を防止ホコリの多い環境、ペット飼育環境
エアフロー制御意図した空気の流れを維持できる高性能パーツを搭載したシステム
メンテナンス頻度の低減内部清掃の間隔を延ばせる清掃が困難な設置場所
パーツの長寿命化ホコリ付着による劣化を防止長期間安定稼働が必要な用途

さらに、静圧構成は冷却ファンやヒートシンクへのホコリ付着を最小限に抑えるため、冷却性能の長期的な維持にも貢献します。ホコリが蓄積すると放熱効率が低下し、パーツの温度上昇や騒音増加の原因となりますが、静圧構成ではこうした問題を軽減できます。

3.2 静圧構成の欠点

静圧構成にはいくつかの欠点も存在します。まず、吸気ファンを多く配置する必要があるため、初期コストが高くなる傾向があります。十分な静圧を確保するには、排気ファンよりも吸気ファンの数を増やすか、より高性能なファンを選択する必要があります。

また、吸気ファンの数が多いことで消費電力と騒音レベルが上昇する可能性があります。特に高回転で動作するファンを複数使用する場合、静音性を重視するユーザーにとっては気になる要素となるでしょう。

静圧構成では、ケース内の気圧が高い状態を維持するため、ケースの密閉性が求められる点も注意が必要です。サイドパネルに大きな開口部がある場合や、ケースの気密性が低い場合、静圧構成の効果が十分に発揮されません。

欠点具体的な影響対策
初期コストの増加多数の吸気ファンが必要段階的なファン追加、コストパフォーマンスの高いファン選択
消費電力の上昇複数ファン稼働による電力増加省電力ファンの選択、回転数制御の活用
騒音レベルの増加多数のファン動作音静音性の高いファン選択、低回転設定
ケースの選択肢制限密閉性の高いケースが必要静圧構成に適したケース選定

さらに、静圧構成では吸気口に設置したダストフィルターにホコリが蓄積しやすく、定期的な清掃が不可欠です。フィルターが目詰まりすると吸気効率が低下し、結果として冷却性能が悪化する可能性があります。フィルターの清掃を怠ると、静圧構成のメリットが損なわれてしまいます。

3.3 静圧構成が向いているケース

静圧構成は特定の使用環境や目的において、その真価を発揮します。まず、ホコリの多い環境でパソコンを使用する場合には、静圧構成が最適です。リビングルーム、カーペット敷きの部屋、ペットを飼育している環境では、空気中に浮遊するホコリや毛が多いため、静圧構成によるホコリ侵入防止効果が大きなメリットとなります。

長時間連続稼働するワークステーションやサーバー用途にも静圧構成は適しています。24時間365日稼働するシステムでは、ホコリの蓄積による冷却性能の低下が深刻な問題となりますが、静圧構成であれば清潔な状態を長期間維持できます。

また、高性能なCPUやGPUを搭載したハイエンドシステムでは、確実な冷却が求められます。静圧構成では意図したエアフローを維持しやすいため、発熱量の多いパーツを効率的に冷却できます。特にオーバークロックを行う場合や、動画編集や3Dレンダリングなどの負荷の高い作業を行う場合には、静圧構成のメリットが顕著に現れます。

使用環境・目的静圧構成が適している理由推奨ファン構成例
ホコリの多い環境フィルター経由での吸気によりホコリ侵入を防止前面吸気3基、背面排気1基
長時間連続稼働メンテナンス頻度を減らし安定稼働を実現前面吸気2基、天面吸気1基、背面排気1基
ハイエンドシステム確実なエアフロー制御で高い冷却性能を維持前面吸気3基、側面吸気1基、背面排気1基
設置場所の制約床置きなど清掃が困難な場所でも清潔を維持前面吸気2基、底面吸気1基、背面排気1基

パソコンの設置場所に制約がある場合にも静圧構成が有効です。デスクの下や床に直接設置する場合、ホコリを吸い込みやすい環境となりますが、静圧構成とダストフィルターの組み合わせにより、内部への侵入を最小限に抑えることができます。

さらに、メンテナンスの頻度を減らしたいユーザーにとっても静圧構成は魅力的です。ケース内部の清掃は時間と手間がかかる作業ですが、静圧構成であればホコリの侵入が少ないため、清掃の間隔を延ばすことができます。ただし、ダストフィルターの清掃は定期的に行う必要がある点には注意が必要です。

4. 負圧構成のメリットとデメリット

負圧構成とは、ケース内の排気ファンの風量が吸気ファンよりも多い状態を指します。この構成では、ケース内の空気が積極的に外へ排出され、その結果として自然にケース外部から新鮮な空気が隙間を通じて流入します。負圧構成には独自の利点と注意点があり、PCの使用環境や目的によって採用の適否が変わってきます。

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4.1 負圧構成の利点

負圧構成の最大の利点は、熱源から直接熱気を排出できる効率の良さにあります。CPUやGPUといった発熱量の多いパーツ付近に排気ファンを配置することで、熱くなった空気を素早くケース外へ逃がすことができます。

また、負圧構成では排気ファンを多く配置するため、ケース内の淀んだ空気が滞留しにくくなります。特にケース背面や天板に排気ファンを設置することで、熱は自然に上昇する性質を利用した効率的な排熱が可能です。CPUクーラーやグラフィックカードから放出された熱気が、すぐに排気経路へと導かれるため、パーツ周辺の温度上昇を抑えられます。

さらに、負圧構成はシンプルなファン構成で実現できるというコスト面での利点もあります。吸気ファンを最小限にして排気ファンに重点を置くことで、購入するファンの数を抑えながらも、一定の冷却効果を得ることができます。これはパソコン自作初心者にとっても取り組みやすい構成です。

負圧構成の主な利点具体的な効果
効率的な熱気排出発熱パーツから直接排気できるため冷却効率が高い
空気の淀み防止ケース内に熱気が滞留しにくい
コストパフォーマンス少ないファン数でも一定の冷却効果を実現
設置の簡便さ複雑なファン配置を考える必要が少ない

4.2 負圧構成の欠点

負圧構成の最も大きな欠点は、ホコリや塵がケース内に侵入しやすいことです。排気が吸気を上回るため、ケースの隙間やスリット、拡張スロットのカバーなど、あらゆる開口部から空気が吸い込まれます。この際、フィルターが設置されていない箇所からホコリも一緒に入り込んでしまいます。

ホコリの侵入は単なる見た目の問題だけではありません。パーツの冷却フィンやヒートシンクにホコリが堆積すると、放熱効率が著しく低下します。特にグラフィックカードのファンや電源ユニットの内部にホコリが溜まると、冷却性能の低下だけでなく、故障のリスクも高まります。定期的な清掃を怠ると、パーツの寿命を縮める原因となってしまいます。

また、負圧構成ではエアフローのコントロールが難しいという技術的な課題もあります。吸気が計画的に行われないため、どこからどのように空気が入ってくるかを正確に把握することが困難です。その結果、冷却が必要な箇所に十分な風量が届かない可能性があります。

さらに、負圧による空気の流入音が発生することもあります。ケースの隙間から空気が勢いよく吸い込まれる際に、笛のような音や風切り音が生じることがあり、静音性を重視する環境では問題となる場合があります。

負圧構成の主な欠点具体的な影響対策の必要性
ホコリの侵入フィルター未設置箇所から塵が入り込む高い(定期清掃が必須)
冷却効率の低下リスクホコリ堆積による放熱性能の悪化高い
エアフロー制御の困難さ吸気経路が不明確で最適化が難しい中程度
騒音の発生隙間から空気が流入する際の音使用環境による

4.3 負圧構成が向いているケース

負圧構成は、高性能パーツを搭載し発熱量が多いゲーミングPCやワークステーションに適しています。特にハイエンドのグラフィックカードや多コアCPUを使用する環境では、熱気を素早く排出する能力が重要になるため、負圧構成の利点を活かせます。

また、定期的なメンテナンスが可能な環境であれば、負圧構成の欠点であるホコリ問題にも対処できます。月に1回程度ケース内を清掃できる方や、パソコンの管理に積極的に取り組める方には、負圧構成が選択肢となります。エアダスターやブロワーを使った清掃を習慣化できれば、負圧構成でも良好な状態を維持できます。

さらに、排気ファンを多く配置できる大型ケースを使用している場合も、負圧構成が効果を発揮します。天板や背面、側面など複数箇所に排気ファンを設置できるケースでは、ケース全体から効率よく熱気を逃がすことができ、負圧のメリットを最大化できます。

オーバークロックなど、通常よりも高い負荷をかけて使用する場合にも、負圧構成は有効です。発熱量が通常よりも増える状況では、積極的な排気が温度管理に貢献します。ただし、この場合は温度モニタリングツールで各パーツの温度を常に監視し、冷却が適切に機能しているか確認することが重要です。

一方で、ホコリの多い環境や、長期間メンテナンスができない状況では、負圧構成は避けるべきです。また、静音性を最優先する場合も、負圧による流入音が発生する可能性があるため、別の構成を検討した方が良いでしょう。

使用環境負圧構成の適性理由
ハイエンドゲーミングPC適している発熱量が多く積極的な排気が有効
定期メンテナンス可能な環境適しているホコリ問題に対処できる
大型ケース使用適している複数の排気ファンを配置可能
オーバークロック環境適している高い排熱性能が求められる
ホコリの多い環境適していない塵の侵入リスクが高まる
静音性重視の環境適していない流入音が発生する可能性
長期間メンテナンス不可適していないホコリ堆積による性能低下

5. 最適なパソコン冷却を実現するファン配置

パソコンの冷却性能を最大限に引き出すには、ファンの配置が極めて重要です。単にファンの数を増やせば良いというわけではなく、吸気と排気のバランス、ケース内のエアフローの流れ、各パーツの発熱位置を考慮した戦略的な配置が求められます。この章では、効果的なファン配置の基本から、ケースサイズに応じた具体的な構成方法まで、実践的な知識を詳しく解説していきます。

5.1 吸気ファンと排気ファンの基本配置

パソコンケース内のエアフローを構築する上で、吸気ファンと排気ファンの配置は冷却システムの基礎となります。物理法則に基づいた配置を行うことで、効率的な熱の排出が可能になります。

5.1.1 エアフローの基本原則

ケース内の空気の流れを設計する際は、暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降するという自然対流の原理を活用することが重要です。この原理に逆らわない配置をすることで、ファンの動作効率が高まり、消費電力や騒音を抑えながら高い冷却性能を実現できます。

一般的に推奨される基本配置は、ケース前面と下部に吸気ファンを、背面と上部に排気ファンを設置する構成です。この配置により、冷たい外気がケース前面から入り、CPU、GPU、メモリなどの発熱パーツを順に冷やしながら、温められた空気が自然と上昇して背面や天面から排出される流れが生まれます。

5.1.2 吸気ファンの最適な配置位置

吸気ファンは、外部から新鮮な冷気をケース内に取り込む役割を担います。最も効果的な配置は、ケース前面の下部から中段にかけてです。この位置に配置することで、HDDやSSD、電源ユニット、そしてマザーボード全体に冷気を供給できます。

前面に120mmファンを2基または140mmファンを2基配置するのが一般的な構成です。ケースのサイズが大きい場合は3基以上配置することも可能です。また、GPUの直下に吸気ファンを配置できるケースでは、グラフィックカードの冷却効率が大幅に向上します。特に高性能なGPUを搭載する場合、この配置は非常に効果的です。

5.1.3 排気ファンの効果的な配置方法

排気ファンは、ケース内で温められた空気を外部に排出する重要な役割を果たします。最も基本となるのは背面上部への配置で、ほとんどのPCケースで120mmまたは140mmファンが1基標準装備されています。

CPUクーラーの直後に排気ファンを配置することで、プロセッサから発生する熱を効率的に排出できます。さらに冷却性能を高めたい場合は、天面にも排気ファンを追加します。天面には120mmファンを2基、または140mmファンを2基配置できるケースが多く、これによりケース内の熱だまりを効果的に解消できます

5.1.4 ファン配置における注意点

ファンを配置する際は、エアフローの流れが短絡しないよう注意が必要です。例えば、前面の吸気ファンと背面の排気ファンが近すぎる位置にあると、吸い込んだ冷気がケース内の発熱パーツを十分に冷やす前に排出されてしまいます。

また、CPUクーラーのファン向きも重要です。タワー型CPUクーラーを使用する場合、ファンは前面から背面に向かって空気を送る向きに取り付けることで、ケース全体のエアフローと調和します。トップフロー型のCPUクーラーの場合は、天面排気ファンとの距離を考慮し、適切な隙間を確保する必要があります。

5.2 ケースサイズ別の推奨ファン構成

PCケースのサイズによって、搭載できるファンの数や配置可能な位置が異なります。ケースサイズに応じた適切なファン構成を選択することで、限られたスペースでも最大限の冷却効果を得られます。

5.2.1 Mini-ITXケースのファン構成

コンパクトなMini-ITXケースは、搭載できるファン数に制限があるため、限られたファンで効率的な冷却を実現する必要があります。一般的には、背面に92mmまたは120mmの排気ファンが1基装備されているケースが多く、これが基本構成となります。

冷却性能を高めたい場合は、底面に吸気ファンを追加する方法が効果的です。多くのMini-ITXケースでは底面に120mmファンを1〜2基搭載できる設計になっています。この構成により、GPUやCPUに直接新鮮な空気を供給できるため、小型ケースでも十分な冷却性能を確保できます

搭載位置ファンサイズ推奨枚数役割
背面92mm〜120mm1基排気
底面120mm1〜2基吸気
側面120mm0〜1基吸気または排気

5.2.2 MicroATXケースのファン構成

MicroATXケースは、Mini-ITXよりも余裕があり、標準的な冷却構成を実現しやすいサイズです。基本構成として、前面に120mmファンを1〜2基、背面に120mmファンを1基配置するのが一般的です。

前面に2基の吸気ファンを配置し、背面に1基の排気ファンを配置することで、軽い正圧構成が実現できます。この構成は、ホコリの侵入を抑えながら十分な冷却性能を提供します。高性能なパーツを搭載する場合は、天面に排気ファンを1基追加することで、冷却能力をさらに向上させられます。

5.2.3 ミドルタワーケースのファン構成

ミドルタワーケースは最も一般的なサイズで、柔軟なファン構成が可能です。標準的な構成として、前面に120mmまたは140mmファンを2〜3基、背面に120mmまたは140mmファンを1基配置します。

バランスの取れた冷却を実現するには、前面に吸気ファンを3基、背面と天面に排気ファンを各1基ずつ配置する構成が推奨されます。この構成では、吸気と排気のバランスが取れ、ケース内全体に均一なエアフローが形成されます。ゲーミングPCや高負荷な作業を行うワークステーションでは、天面にさらに1基追加して排気能力を強化すると効果的です。

搭載位置ファンサイズ推奨枚数構成例
前面120mm / 140mm2〜3基全て吸気
背面120mm / 140mm1基排気
天面120mm / 140mm1〜2基排気
底面120mm / 140mm0〜2基吸気(オプション)

5.2.4 フルタワーケースのファン構成

フルタワーケースは最大級のサイズで、多数のファンを搭載できる設計になっています。このサイズのケースでは、複数の高性能パーツや大型の簡易水冷システムを搭載することが多いため、強力な冷却システムの構築が可能です。

標準的な構成として、前面に140mmファンを3〜4基、背面に140mmファンを1基、天面に140mmファンを2〜3基配置します。さらに底面にも140mmファンを2基追加できるケースもあり、非常に強力な冷却能力を実現できます。

フルタワーケースでは、前面と底面から大量の冷気を取り込み、背面と天面から排出する強力なエアフローを構築できます。ただし、ファンの数が多すぎると騒音が大きくなるため、実際の発熱量に応じて必要十分な数に調整することが重要です

5.3 バランス型エアフローの構築方法

静圧構成と負圧構成のそれぞれにメリットとデメリットがありますが、多くの場合、両者のバランスを取った構成が最も実用的です。バランス型エアフローは、冷却性能とホコリ対策を両立させ、安定した動作環境を提供します。

5.3.1 バランス型エアフローの基本概念

バランス型エアフローとは、吸気ファンと排気ファンの風量をほぼ同等にすることで、ケース内の気圧を外気圧に近い状態に保つ構成です。厳密に完全な均衡を取る必要はなく、わずかに正圧寄り(吸気がやや多い)にすることで、ホコリの侵入を抑えつつ効率的な冷却を実現できます。

この構成では、ケース内の特定の場所に熱が溜まることを防ぎ、全体的に安定した温度分布を作り出せます。また、ファンの回転数を抑えても十分な冷却効果が得られるため、静音性の面でも優れています。

5.3.2 ファン風量の計算方法

バランス型エアフローを構築するには、各ファンの風量を考慮する必要があります。ファンの風量はCFM(立方フィート毎分)またはm³/h(立方メートル毎時)で表記されます。吸気ファンの合計風量と排気ファンの合計風量が近い値になるよう調整します。

例えば、前面に120mmファン(各50CFM)を2基配置し、背面に120mmファン(50CFM)を1基、天面に120mmファン(50CFM)を1基配置した場合、吸気は100CFM、排気も100CFMとなり、完全なバランスが取れます。実際には、吸気を110〜120CFM程度にして排気を100CFMにするなど、わずかに正圧寄りにすることが推奨されます

5.3.3 ファン回転数による調整

同じファンでも回転数によって風量が変化するため、マザーボードのBIOS設定やファンコントローラーを使用して、各ファンの回転数を調整することでバランスを取ることができます。多くのマザーボードでは、ファンコントロール機能が搭載されており、温度に応じて自動的に回転数を調整する設定が可能です。

初期設定として、吸気ファンを60〜70%の回転数、排気ファンを50〜60%の回転数に設定し、実際の温度を確認しながら微調整していくのが効果的です。負荷をかけた状態でCPUやGPUの温度を監視し、目標温度を超える場合は排気ファンの回転数を上げ、温度に余裕がある場合は騒音低減のために全体の回転数を下げます。

5.3.4 ケース構造に応じた調整ポイント

ケースの構造によっては、メッシュパネルや通気口の面積が異なるため、同じファン構成でも実際のエアフローバランスは変わってきます。前面がガラスパネルや密閉度の高いデザインのケースでは、前面ファンの風量が制限されるため、回転数を上げるか、ファンの枚数を増やす必要があります。

メッシュタイプの前面パネルを持つケースでは、空気抵抗が少ないため、比較的低い回転数でも十分な吸気が可能です。一方、サイドパネルに大きな通気口があるケースでは、そこから自然に吸気されるため、前面ファンの風量を抑えめにしてもバランスが取れます。

5.3.5 実践的なバランス調整の手順

実際にバランス型エアフローを構築する際は、以下の手順で進めると効率的です。まず、全てのファンを標準的な回転数(50〜60%程度)で動作させ、ケース内各部の温度を測定します。温度測定には、マザーボード付属のソフトウェアや、HWiNFOなどのモニタリングツールを使用します。

次に、CPU、GPU、マザーボードのVRM部分など、主要な発熱箇所の温度が適切な範囲に収まっているか確認します。CPUは負荷時に80℃以下、GPUは85℃以下を目安とし、これを超える場合は排気を強化します。逆に温度に十分な余裕がある場合は、騒音低減のためにファンの回転数を下げられます。

また、ケース内の気圧状態を確認する簡易的な方法として、ケースの隙間から出入りする空気の流れを確認する方法があります。正圧の場合は隙間から空気が外に流れ出し、負圧の場合は外から吸い込まれます。わずかに空気が外に流れ出る程度が理想的なバランスです。

5.3.6 季節や環境による調整

室温の変化によってもケース内の温度は影響を受けるため、季節に応じてファン構成を調整することも有効です。夏場は室温が高くなるため、ファンの回転数を全体的に上げる必要があります。逆に冬場は室温が低いため、回転数を下げて静音性を重視した運用が可能になります。

エアコンの効いた部屋でPCを使用する場合と、空調のない部屋で使用する場合でも最適なファン設定は異なります。使用環境に応じて、複数のファンプロファイルを用意しておき、状況に応じて切り替えられるようにしておくと便利です。多くのマザーボードでは、複数のファンカーブ設定を保存できる機能が搭載されています。

6. パソコン冷却を最適化する実践テクニック

静圧と負圧の理論を理解したら、次は実際のパソコンで冷却性能を最大限に引き出すための実践テクニックを身につけましょう。ここでは、すぐに実践できる具体的な方法を詳しく解説していきます。

6.1 ファンの回転数調整方法

ファンの回転数を適切に調整することで、冷却性能と静音性のバランスを最適化できます。回転数が高すぎると騒音が大きくなり、低すぎると冷却性能が不足してしまいます。

ファンの回転数調整には主に3つの方法があります。BIOS/UEFIから設定する方法が最も基本的で、マザーボードメーカーが提供する設定画面からファンカーブを細かく設定できます。ファンカーブとは、CPU温度やケース内温度に応じてファンの回転数を自動的に変化させる設定のことです。

2つ目の方法は、専用ソフトウェアを使用する方法です。ASUSのAI Suite、MSIのMSI Center、GIGABYTEのSystem Information Viewerなど、マザーボードメーカーが提供するユーティリティソフトを使えば、Windows上で簡単にファン制御ができます。これらのソフトウェアでは、プリセットモードとして「静音モード」「標準モード」「パフォーマンスモード」などが用意されており、初心者でも簡単に設定できます。

3つ目は、ファンコントローラーを使用する方法です。5.25インチベイや3.5インチベイに取り付けるタイプのファンコントローラーを使えば、物理的なダイヤルやボタンで直接ファンの回転数を調整できます。複数のファンを個別に制御したい場合に特に便利です。

温度範囲推奨ファン回転数用途
40℃未満30~40%アイドル時・軽作業時
40~60℃50~70%通常作業・ウェブブラウジング
60~75℃70~90%ゲームプレイ・動画編集
75℃以上90~100%高負荷作業・レンダリング

ファンカーブを設定する際は、急激に回転数が変化しないように注意しましょう。温度変化に対して緩やかに回転数が変化するように設定することで、ファンの音の変化が気にならなくなります。また、最低回転数は30%程度に設定し、完全に停止させないことをお勧めします。

6.2 ケース内のケーブル整理術

ケース内のケーブル配線は、見た目だけでなく冷却性能に直接影響する重要な要素です。適切なケーブル整理によってエアフローの妨げを最小限に抑えることができます。

まず基本となるのが裏配線の活用です。最近のPCケースの多くは、マザーボードトレイの裏側にケーブルを通すスペースが設けられています。電源ユニットからのケーブルやフロントパネルのケーブルは、できる限り裏側を通して配線しましょう。これにより、ケース正面から見たときにケーブルがほとんど見えず、エアフローも改善されます。

結束バンドやマジックテープを使ったケーブルのまとめ方も重要です。複数のケーブルをバラバラにするのではなく、適度にまとめることで風の通り道を確保できます。ただし、きつく束ねすぎると熱がこもりやすくなるため、少し余裕を持たせて束ねることがポイントです。

使用しないケーブルの処理も忘れてはいけません。特に非モジュラー式の電源ユニットを使用している場合、使わないケーブルが多数発生します。これらは裏配線スペースに収納するか、ドライブベイの空きスペースに収めるなどして、メインチャンバーには出さないようにしましょう。

グラフィックボードやCPU補助電源のケーブルは特に太く硬いため、配線経路を慎重に決める必要があります。これらのケーブルは最短距離で接続するのではなく、ファンの前を避け、ケースの端に沿わせるように配線すると良いでしょう。

SATAケーブルやUSB 3.0の内部ケーブルなどの細いケーブルも、束ねずに放置するとエアフローの妨げになります。これらも結束バンドでまとめ、マザーボードトレイの裏側やケース下部に配線することで、吸気の流れを妨げないようにできます。

6.3 ダストフィルターの活用と清掃

ダストフィルターは、ホコリの侵入を防ぎながら冷却性能を維持するための重要なパーツです。定期的な清掃とメンテナンスによって長期的な冷却性能を確保できます。

ダストフィルターには主に3つのタイプがあります。メッシュタイプは通気性が高く、エアフローへの影響が少ないのが特徴です。スポンジタイプは細かいホコリもキャッチできますが、目詰まりしやすいため頻繁な清掃が必要です。マグネット式フィルターは着脱が簡単で、清掃の手間を大幅に削減できます。

ダストフィルターは、吸気ファンがある場所すべてに取り付けることが理想的です。フロント、ボトム、サイドパネルなど、外気を取り込む場所には必ずフィルターを設置しましょう。一方、排気ファンの位置にはフィルターを取り付ける必要はありません。排気側にフィルターを付けると、かえってエアフローの抵抗となってしまいます。

清掃の頻度は使用環境によって異なりますが、一般的な目安として以下を参考にしてください。

使用環境清掃頻度特徴
クリーンな室内2~3ヶ月に1回ホコリが少ない環境
一般的な室内1~2ヶ月に1回標準的な住宅環境
ペットのいる環境2週間~1ヶ月に1回毛やホコリが多い
工場・作業場1~2週間に1回粉塵が多い環境

清掃方法は、まずフィルターをケースから取り外します。多くの場合、工具不要で着脱できる設計になっています。取り外したフィルターは、掃除機で表面のホコリを吸い取るか、水洗いします。水洗いする場合は、中性洗剤を使って優しく洗い、完全に乾燥させてから取り付けることが重要です。濡れたまま取り付けると、ホコリが付着しやすくなり、最悪の場合は電子部品に水分が付着する恐れがあります。

フィルターの清掃と同時に、ケース内部のホコリも除去しましょう。エアダスターを使ってファンやヒートシンクに付着したホコリを吹き飛ばします。この際、ファンの羽根を手で押さえながら行うと、ファンが高速回転して故障するのを防げます。

6.4 温度モニタリングツールの使い方

冷却の最適化には、現在の温度状態を正確に把握することが不可欠です。温度モニタリングツールを活用することで、冷却システムの効果を数値で確認できます。

HWiNFO64は、最も詳細な情報を提供する無料ツールの一つです。CPU、GPU、マザーボード、ストレージなど、あらゆるコンポーネントの温度を同時に監視できます。センサー画面では、現在値だけでなく最小値、最大値、平均値も表示されるため、長時間の使用パターンを分析するのに適しています。

Core Tempは、CPUの温度監視に特化したシンプルなツールです。各コアの温度を個別に表示し、タスクトレイにリアルタイムで温度を表示できます。CPUの温度管理を重視する方に最適です。

MSI Afterburnerは、もともとグラフィックボードのオーバークロックツールですが、温度モニタリング機能も優れています。ゲーム中にオーバーレイ表示でリアルタイムの温度やフレームレートを確認できるため、ゲーミングPCユーザーに特に人気があります。

温度監視で注目すべき指標は以下の通りです。

コンポーネント正常温度範囲警告温度対策が必要な状況
CPU(アイドル時)30~45℃50℃以上クーラーの取り付け確認
CPU(高負荷時)60~80℃85℃以上冷却システムの見直し
GPU(アイドル時)30~50℃55℃以上ファン設定の確認
GPU(高負荷時)65~85℃90℃以上ケース内エアフロー改善
マザーボード30~50℃60℃以上ケース内温度の低減

温度ログを記録しておくことも重要です。HWiNFO64などのツールでは、温度データをCSVファイルとして保存できます。これにより、時間経過による温度変化や、特定の作業での温度上昇パターンを分析できます。例えば、動画レンダリング中のCPU温度推移を記録すれば、冷却システムの改善前後での効果を客観的に比較できます。

温度モニタリングで異常を発見した場合は、まずファンの回転数を確認します。ファンが正常に動作しているか、設定通りの回転数になっているかをチェックしましょう。次に、サーマルスロットリングが発生していないか確認します。サーマルスロットリングとは、温度が高すぎる場合にCPUやGPUが自動的に性能を下げて発熱を抑える機能です。頻繁にサーマルスロットリングが発生している場合は、冷却システムの改善が必要です。

ストレステストツールと組み合わせることで、より詳細な温度特性を把握できます。Prime95やOCCTなどのCPUストレステストツール、FurMarkなどのGPUストレステストツールを使用すれば、最大負荷時の温度を確認できます。ただし、これらのツールは非常に高い負荷をかけるため、長時間の実行は避け、温度を監視しながら慎重に実施してください。

7. 用途別おすすめ冷却構成

パソコンの使用目的によって最適な冷却構成は異なります。ゲームプレイ、静音性重視、クリエイティブ作業など、それぞれの用途に応じた冷却戦略を選択することで、パフォーマンスと快適性を両立させることができます。ここでは代表的な3つの用途について、具体的な冷却構成を詳しく解説します。

7.1 ゲーミングPC向けの冷却構成

ゲーミングPCでは高性能なグラフィックスカードとCPUが同時に高負荷で動作するため、大量の熱を効率的に排出する冷却構成が必須となります。特に長時間のゲームプレイでは安定した冷却性能が求められます。

ゲーミングPCに最適な冷却構成は、やや正圧寄りのバランス型エアフローです。前面に吸気ファンを2~3基、背面と天板に排気ファンを各1基配置することで、ケース内全体に効率的なエアフローを形成できます。グラフィックスカードの発熱が特に大きいため、側面に追加の吸気ファンを設置すると冷却効率がさらに向上します。

ファン配置位置推奨ファン数ファンサイズ回転数目安
前面(吸気)2~3基120mm または 140mm1000~1200rpm
背面(排気)1基120mm1200~1500rpm
天板(排気)1~2基120mm または 140mm1000~1200rpm
側面(吸気)0~1基120mm800~1000rpm

ファンの選択においては、エアフロー重視型のファンを吸気に、静圧重視型のファンを排気に配置すると効果的です。特にグラフィックスカード周辺の温度が高くなりやすいため、ケース下部からの吸気を確保することも重要です。

CPUクーラーには240mm以上の簡易水冷クーラーまたは大型の空冷クーラーを推奨します。簡易水冷を使用する場合、ラジエーターは天板または前面に設置し、ケース全体のエアフローと干渉しないように配置してください。ゲーム中のCPU温度を70度以下、GPU温度を80度以下に保つことが理想的な目標となります。

7.2 静音PC向けの冷却構成

静音性を重視したPCでは、冷却性能を維持しながらファンノイズを最小限に抑える工夫が必要です。低回転で大量の空気を動かせる大型ファンと、防音材を活用した構成が基本となります。

静音PCには正圧構成が最適です。前面に140mmの大型ファンを2基設置し、背面に120mmファンを1基配置する構成が基本となります。大型ファンは同じ風量でも回転数を低く抑えられるため、静音性が大幅に向上します。全てのファンを500~800rpmの低回転で動作させることで、ほぼ無音に近い静かな環境を実現できます。

構成要素推奨仕様静音化のポイント
前面吸気ファン140mm × 2基500~700rpmで動作、静音性重視モデルを選択
背面排気ファン120mm × 1基600~800rpmで動作、ゴム製防振パッド使用
CPUクーラー大型空冷クーラー120mm以上のファン搭載、低回転動作
ケース防音材付き吸音材が側面パネルに装着されているモデル

CPUクーラーには大型の空冷クーラーを推奨します。ツインタワー型の空冷クーラーは放熱面積が広く、ファンを低回転で動作させても十分な冷却性能を発揮します。簡易水冷クーラーは製品によって大きなポンプ音が発生するため、静音性を最優先する場合は避けた方が無難です。

ファンコントローラーやマザーボードのBIOS設定を活用して、温度に応じたファンカーブを設定することも重要です。低負荷時は最小回転数で動作させ、温度が上昇した場合のみ段階的に回転数を上げる設定にすることで、静音性と冷却性能のバランスを取ることができます。

ケースの選択も静音化には欠かせません。側面パネルに吸音材が装着されたケースを選ぶことで、ファンの動作音やハードディスクの振動音を効果的に抑制できます。ただし、密閉性が高すぎると冷却効率が低下するため、適度な通気性を確保できるケースを選びましょう。

7.3 クリエイター向けワークステーションの冷却構成

動画編集、3Dレンダリング、CADなどのクリエイティブ作業では、長時間にわたる高負荷動作が続くため、安定した冷却性能と静音性を両立させた構成が求められます。特にレンダリング作業中は全てのコアが100%稼働することも多く、徹底した冷却対策が必要です。

クリエイター向けワークステーションには、バランス型から正圧寄りの冷却構成が適しています。前面に吸気ファンを3基、背面と天板に排気ファンを各1~2基配置し、ケース内全体に均一なエアフローを形成します。マルチコアCPUの発熱量が大きいため、CPUクーラーには360mmの大型簡易水冷クーラーまたはハイエンド空冷クーラーの使用を推奨します。

作業内容推奨冷却構成特に注意すべき点
動画編集正圧バランス型、簡易水冷推奨CPUとGPUの同時冷却、長時間安定動作
3Dレンダリング強めの正圧構成、大型クーラー必須全コア高負荷時の温度管理、VRM冷却
CAD・設計バランス型、静音性も考慮グラフィックスカード冷却、安定性重視
写真編集軽めの正圧構成、静音重視ストレージの温度管理、ホコリ対策

特に注意が必要なのは、マザーボードのVRM(電源回路)の冷却です。ハイエンドCPUを搭載したワークステーションでは、VRMが高温になりやすく、これが原因でシステムの不安定化やパフォーマンス低下を招くことがあります。ケース内のエアフローを最適化し、VRMに直接風が当たるように配慮することが重要です。

複数のストレージを搭載する場合は、ハードディスクやSSDの温度管理にも注意が必要です。特にNVMe SSDは高速動作時に発熱しやすいため、ヒートシンク付きのモデルを選ぶか、マザーボード付属のヒートシンクを必ず使用してください。

レンダリング作業中は全てのコンポーネントが高負荷で動作するため、温度モニタリングツールを常時起動して、各部の温度を監視することをお勧めします。CPU温度は80度以下、GPU温度は85度以下を維持できるよう、必要に応じてファンカーブを調整してください。

クリエイター向けワークステーションでは作業の性質上、静音性も重要な要素となります。日中の作業時には冷却性能を優先し、夜間や録音作業時には静音モードに切り替えられるよう、複数のファンプロファイルを用意しておくと便利です。ファンコントローラーやマザーボードの設定で、ワンタッチで切り替えられるようにしておきましょう。

8. まとめ

パソコン冷却における静圧と負圧はそれぞれ異なる特性を持つエアフロー構成です。静圧は吸気ファンが多く内部に空気を送り込む構成で、冷却性能が高い反面ホコリが溜まりやすいという特徴があります。一方、負圧は排気ファンが多く内部の熱気を効率的に排出する構成で、ケース内が負圧になることでホコリの管理がしやすくなります。
最適な冷却構成はパソコンの用途や設置環境によって異なります。ゲーミングPCでは高い冷却性能を求めて静圧寄りの構成が、静音PCでは低回転ファンと負圧構成の組み合わせが効果的で、適切なエアフロー設計によりパソコンの安定動作と長寿命化を実現できます。
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