microSD ExpressカードとmicroSDカードの違いについて、転送速度・容量・互換性の観点から詳しく解説します。
この記事を読むことで、microSD Expressカードが従来のmicroSDカードと比べて最大985MB/sという圧倒的な高速転送を実現する仕組みや、PCIe接続による技術的な進歩、対応機器の現状と互換性の問題点が理解できます。また、4K動画撮影やプロフェッショナル用途での性能差、価格帯の違い、購入時の選択基準まで網羅的に説明するため、あなたの用途に最適なメモリーカードを選択するための判断材料が得られます。
1. microSD ExpressカードとmicroSDカードの基本的な違い
microSD ExpressカードとmicroSDカードは、同じ物理的なサイズを持ちながらも、技術的な仕様と性能において大きな違いがあります。これらの違いを理解することで、用途に応じた最適な選択ができるようになります。
1.1 microSD Expressカードとは
microSD Expressカードは、SD Association(SDアソシエーション)が2018年に発表した次世代メモリーカード規格です。PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)とNVMe(Non-Volatile Memory Express)技術を採用することで、従来のmicroSDカードを大幅に上回る転送速度を実現しています。
この新しい規格では、理論上最大985MB/sの転送速度を達成可能で、従来のUHS-III規格の最大624MB/sを約60%上回る性能を持っています。microSD Expressカードは、高解像度動画撮影やプロフェッショナル用途において、ストレージの速度がボトルネックとなる問題を解決するために開発されました。
1.2 従来のmicroSDカードとの外観比較
外見上、microSD ExpressカードとmicroSDカードは同じ15mm×11mm×1mmのサイズを維持しており、一見すると区別することは困難です。しかし、詳細に観察すると重要な違いがあります。
項目 | microSD Expressカード | 従来のmicroSDカード |
---|---|---|
物理サイズ | 15mm×11mm×1mm | 15mm×11mm×1mm |
端子数 | 第2列に追加端子 | 従来の8端子のみ |
表面マーキング | PCIe/NVMe対応記載 | UHS規格記載 |
切り欠き形状 | 同一 | 同一 |
最も重要な違いは端子の配置で、microSD Expressカードには従来の8つの端子に加えて、PCIe接続用の追加端子が第2列に配置されている点です。これにより、対応機器では高速なPCIe接続を利用でき、非対応機器では従来のSD接続として動作する仕組みになっています。
1.3 規格策定の背景と目的
microSD Express規格の策定背景には、現代のデジタル機器が要求する高い性能への対応があります。4K動画撮影、8K動画撮影、高解像度写真の連続撮影、リアルタイムデータ処理など、従来のmicroSDカードでは処理能力が不足する用途が増加していました。
特に、プロフェッショナル向けのカメラ機器やドローン、産業用IoT機器では、データの書き込み速度がボトルネックとなり、撮影の取りこぼしやシステムの処理遅延が発生する問題が深刻化していました。このような課題を解決するため、SD Associationは既存のmicroSDカードとの互換性を保ちながら、大幅な性能向上を実現する新規格を開発したのです。
また、SSDの普及により、ユーザーは高速なストレージ性能に慣れ親しんでおり、小型デバイスにおいても同等の性能を求める声が高まっていました。microSD Express規格は、こうした市場の要求に応える形で誕生し、小型ストレージの新たな可能性を切り開く規格として注目されています。
2. 転送速度の大幅な向上
microSD Expressカードの最大の特徴は、従来のmicroSDカードと比較して圧倒的に高速な転送速度を実現していることです。この速度向上により、大容量データの読み書きや4K動画撮影、ゲームの快適なプレイなど、様々な用途での性能が大幅に改善されています。
2.1 microSD Expressカードの最大転送速度
microSD Expressカードは、最大985MB/sの転送速度を実現しています。これは従来のmicroSDカードと比較して約10倍もの高速化を達成した画期的な性能です。
具体的な速度性能を見ると、読み取り速度で最大985MB/s、書き込み速度でも数百MB/sの性能を発揮します。この高速性能により、1GBのファイルを約1秒程度で転送することが可能になり、大容量データの取り扱いが格段に効率的になります。
また、microSD Expressカードは将来的に最大4GB/sまでの転送速度向上が技術的に可能とされており、さらなる高速化への発展性も備えています。
2.2 従来のmicroSDカードとの速度比較
従来のmicroSDカードとmicroSD Expressカードの転送速度を比較すると、その性能差は一目瞭然です。
規格 | 最大読み取り速度 | 最大書き込み速度 | 1GBファイル転送時間(目安) |
---|---|---|---|
microSD Express | 985MB/s | 数百MB/s | 約1秒 |
UHS-II | 312MB/s | 260MB/s | 約3-4秒 |
UHS-I | 104MB/s | 90MB/s | 約10-12秒 |
Class 10 | 25MB/s | 10MB/s | 約40-100秒 |
この比較表からも分かるように、microSD Expressカードは従来の最高性能規格であるUHS-IIと比較しても約3倍以上、一般的なClass 10規格と比較すると約40倍もの高速化を実現しています。
実用的な観点から見ると、4K動画ファイル(1分間で約1GB)の転送において、従来のmicroSDカードでは数十秒から数分かかっていた作業が、microSD Expressカードなら数秒で完了します。
2.3 PCIe接続による高速化の仕組み
microSD Expressカードが従来のmicroSDカードと比較して圧倒的な高速化を実現できる理由は、PCIe(PCI Express)接続技術の採用にあります。
従来のmicroSDカードは、SDIOインターフェースを使用してデータ転送を行っていました。このSDIOインターフェースは、最大でも4本のデータラインを使用する並列転送方式でしたが、信号の干渉や電気的な制約により転送速度に限界がありました。
一方、microSD ExpressカードはPCIe 3.0規格を採用しており、シリアル転送方式による高速データ転送を実現しています。PCIeは元々パソコンの内部で高速SSDやグラフィックカードとの接続に使用されている技術で、レーン数に応じて転送速度を向上させる仕組みを持っています。
microSD ExpressカードではPCIe 3.0 x1レーン構成を採用しており、理論値で約985MB/sの転送速度を実現しています。この技術により、従来のSDIOインターフェースでは不可能だった高速データ転送が可能になりました。
さらに、PCIe接続では低レイテンシ(遅延時間の短縮)も実現されており、データアクセス時の応答性も大幅に向上しています。これにより、ゲームのロード時間短縮やアプリケーションの起動速度向上など、体感的な性能向上も期待できます。
3. 容量とパフォーマンスの違い
3.1 最大容量の比較
microSD ExpressカードとmicroSDカードの最大容量には大きな違いがあります。従来のmicroSDカードは最大2TBまでの容量に対応していますが、microSD Expressカードは理論上より大きな容量への拡張が可能となっています。
現在市場に流通しているmicroSDカードの容量展開は以下のようになっています。
カード種類 | 最大容量 | 一般的な容量展開 | 規格 |
---|---|---|---|
microSDカード | 2TB | 32GB~1TB | SDXC |
microSD Expressカード | 128TB(理論値) | 現在は限定的 | SD Express |
ただし、microSD Expressカードは2020年に発表された比較的新しい規格のため、現在市場で入手可能な製品の容量は限定的です。今後の技術発展により、より大容量の製品が登場することが期待されています。
3.2 ランダムアクセス性能の向上
microSD Expressカードの最大の特徴は、ランダムアクセス性能の大幅な向上です。従来のmicroSDカードがシーケンシャルアクセス(連続読み書き)を得意とするのに対し、microSD ExpressカードはPCIe接続により小さなファイルの読み書きも高速に処理できます。
ランダムアクセス性能の向上により、以下のような使用シーンで大きなメリットが得られます。
- アプリケーションの起動速度向上
- データベースファイルのアクセス高速化
- 複数の小さなファイルを同時に処理する場合の性能向上
- OSの動作安定性向上
従来のmicroSDカードでは、ランダムアクセス時に数十IOPS(Input/Output Operations Per Second)程度の性能でしたが、microSD Expressカードでは数千IOPSの性能を実現できる可能性があります。
3.3 4K動画撮影での性能差
4K動画撮影において、microSD ExpressカードとmicroSDカードの性能差は顕著に現れます。4K動画撮影では安定した高速書き込み性能が必要で、データレートが100MB/s以上になることも珍しくありません。
4K動画撮影時の要求性能を比較すると以下のようになります。
動画品質 | 必要書き込み速度 | microSDカード対応 | microSD Express対応 |
---|---|---|---|
4K/30fps | 60MB/s | ○(UHS-I Class 3) | ○ |
4K/60fps | 90MB/s | △(UHS-II必須) | ○ |
4K/120fps | 150MB/s以上 | × | ○ |
8K/30fps | 200MB/s以上 | × | ○ |
microSD Expressカードは理論上985MB/sの書き込み速度を実現できるため、将来的な8K動画撮影や高フレームレート撮影にも対応できる余裕があります。一方、従来のmicroSDカードは最新のUHS-II規格でも最大312MB/sとなり、高品質な動画撮影では限界があります。
また、書き込み速度の安定性も重要な要素です。microSD Expressカードは内部バッファやコントローラーの性能向上により、長時間の連続撮影でも安定した書き込み性能を維持できます。これにより、動画撮影中のフレームドロップやエラーの発生を大幅に削減できるのが特徴です。
4. 互換性と対応機器について
4.1 下位互換性の有無
microSD Expressカードの互換性について理解するには、まず接続方式の仕組みを把握することが重要です。microSD Expressカードは従来のmicroSDカードとは異なる接続方式を採用しているため、完全な下位互換性はありません。
microSD Expressカードは、従来のUHS-I/UHS-II接続に加えて、PCIe(PCI Express)とNVMe(Non-Volatile Memory Express)プロトコルを使用した第2レーンを搭載しています。この第2レーンにより、最大985MB/sという高速データ転送を実現しています。
ただし、microSD Expressカードには重要な特徴があります。カード自体に従来のmicroSDカード用の接続端子も併せ持っているため、既存のmicroSDカードスロットに物理的に挿入することは可能です。この場合、従来のUHS-I規格として動作し、最大104MB/sの転送速度で使用できます。
4.2 対応機器の現状
microSD Expressカードの本来の性能を発揮するには、専用の対応機器が必要です。2024年現在の対応機器の状況は以下の通りです。
機器カテゴリ | 対応状況 | 主な対応製品 | 備考 |
---|---|---|---|
デジタルカメラ | 限定的 | 一部の業務用カメラ | 8K動画撮影対応機種で採用開始 |
スマートフォン | 未対応 | なし | 今後の対応が期待される |
ノートパソコン | 限定的 | 一部のゲーミングノート | 高性能モデルから導入開始 |
カードリーダー | 少数 | USB3.2対応製品 | PCへの高速データ転送用 |
アクションカメラ | 未対応 | なし | 小型化の課題により対応遅れ |
現在のところ、microSD Expressカードの真の性能を活用できる機器は非常に限られているのが実情です。特に一般消費者向けの機器では、まだ本格的な普及には至っていません。
対応機器の普及が進まない主な理由として、以下の要因が挙げられます。機器側でPCIe接続に対応するための回路設計の複雑化、消費電力の増加、製造コストの上昇などが挙げられます。また、多くのユーザーにとって現在のmicroSDカードの性能で十分であることも、普及の遅れに影響しています。
4.3 既存のmicroSDカードスロットでの使用可否
既存のmicroSDカードスロットでmicroSD Expressカードを使用する場合の動作について詳しく解説します。
microSD Expressカードは既存のmicroSDカードスロットに挿入して使用することができますが、この場合は従来のUHS-I規格として動作します。つまり、高速なPCIe接続の恩恵は受けられず、最大転送速度は104MB/sに制限されます。
具体的な使用可能性は以下の通りです。
スロット規格 | 使用可否 | 動作速度 | 注意点 |
---|---|---|---|
UHS-I対応スロット | 可能 | 最大104MB/s | Express機能は無効 |
UHS-II対応スロット | 可能 | 最大312MB/s | UHS-II規格で動作 |
SD 2.0対応スロット | 可能 | 最大25MB/s | 大幅に速度制限 |
microSD Express対応スロット | 可能 | 最大985MB/s | 本来の性能を発揮 |
重要なのは、microSD Expressカードを従来のスロットで使用する場合、カードの価格に見合った性能向上は期待できないということです。高価なmicroSD Expressカードを購入しても、既存の機器では従来のmicroSDカードと同等の性能でしか動作しません。
また、一部の古い機器では、microSD Expressカードの認識に問題が生じる可能性があります。これは、カードの容量が大きすぎる場合や、ファイルシステムの対応に問題がある場合に発生することがあります。購入前には、使用予定の機器がmicroSD Expressカードに対応しているかを確認することをお勧めします。
現実的な選択として、既存の機器で使用する場合は、従来のUHS-I或いはUHS-II対応のmicroSDカードを選択する方がコストパフォーマンスに優れています。microSD Expressカードの導入は、対応機器への買い替えと合わせて検討するのが賢明です。
5. 接続規格とインターフェースの違い
microSD ExpressカードとmicroSDカードの最も大きな違いは、接続規格とインターフェースの根本的な変化にあります。この技術的な進歩により、従来では考えられなかった高速データ転送が実現されています。
5.1 PCIe接続とUHS接続の比較
microSD Expressカードは、PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)接続を採用していることが最大の特徴です。一方、従来のmicroSDカードはUHS(Ultra High Speed)接続を使用しています。
PCIe接続は、もともとコンピューターの内部でCPUと各種パーツを接続するために開発された高速インターフェースです。SSDやグラフィックカードなどの高性能パーツに使用されており、その技術をmicroSDカードサイズに応用したのがmicroSD Expressカードです。
項目 | microSD Expressカード | 従来のmicroSDカード |
---|---|---|
接続規格 | PCIe NVMe | UHS-I/UHS-II/UHS-III |
理論最大速度 | 985MB/s | 624MB/s(UHS-III) |
レーン数 | 1レーン | – |
通信方式 | シリアル通信 | パラレル通信 |
UHS接続は従来のSD規格を拡張したものですが、物理的な制約により転送速度の向上に限界があるのが現状です。PCIe接続では、この制約を根本的に解決し、飛躍的な性能向上を実現しています。
5.2 端子数と配線の違い
microSD ExpressカードとmicroSDカードの物理的な違いは、端子の配置と配線構造にも現れています。
従来のmicroSDカードは8つの端子を持ち、これらの端子でデータの送受信、電源供給、制御信号の伝達を行います。UHS-II対応カードでは、裏面に追加の端子列が設けられ、合計17の端子を使用してより高速な通信を実現しています。
一方、microSD Expressカードは、PCIe接続のための専用配線を内蔵していることが特徴です。外観上は従来のmicroSDカードと同じ端子数ですが、内部の配線構造が大きく異なります。PCIe用の差動ペア配線により、ノイズに強く高速なデータ転送が可能になっています。
この配線の違いにより、microSD Expressカードでは以下のような技術的なメリットが得られます。
- シングルエンド信号からディファレンシャル信号への変更によるノイズ耐性向上
- クロック信号の独立化による安定したデータ転送
- エラー検出・訂正機能の強化
5.3 電力消費の変化
接続規格の変更により、電力消費特性にも大きな変化が生じています。
従来のmicroSDカードの消費電力は、UHS-I規格で最大200mA、UHS-II規格で最大400mAとなっています。これに対し、microSD Expressカードは高性能化と引き換えに消費電力が増加している傾向にあります。
PCIe接続では、高速データ転送のために内蔵コントローラーの処理能力向上が必要となり、その結果として電力消費が増加します。しかし、SD Association(SD協会)では、モバイル機器での使用を考慮した電力効率の改善にも取り組んでいます。
実際の使用において、電力消費の違いが与える影響は以下の通りです。
使用シーン | microSD Expressカード | 従来のmicroSDカード |
---|---|---|
連続読み書き時 | 高負荷(発熱注意) | 中程度負荷 |
待機時 | 低電力モード対応 | 低消費電力 |
バッテリー駆動機器 | 使用時間短縮の可能性 | 従来通り |
このため、バッテリー駆動のカメラやスマートフォンでは、用途に応じた適切な選択が重要になります。高速転送が必要な作業では短時間でタスクを完了できるため、トータルでの電力効率が向上する場合もあります。
また、microSD Expressカードには電力管理機能が強化されており、使用状況に応じて動作モードを自動調整する機能も搭載されています。これにより、必要な時のみ高性能モードで動作し、通常時は省電力モードで動作することで、バッテリー消費を抑制する工夫がなされています。
6. 価格と入手性の現状
6.1 microSD Expressカードの価格帯
microSD Expressカードは、従来のmicroSDカードと比較して大幅に高い価格設定となっています。現在市場に出回っている製品を見ると、64GB容量のモデルで約8,000円から15,000円程度、128GB容量では15,000円から25,000円程度の価格帯が一般的です。
この高価格の背景には、PCIe接続技術の実装コストや新規格に対応するための製造技術の複雑さがあります。また、現時点では量産効果が十分に働いていないため、単価が高止まりしている状況です。
容量 | microSD Expressカード | 従来のmicroSDカード(UHS-I) | 価格差 |
---|---|---|---|
64GB | 8,000円~15,000円 | 1,500円~3,000円 | 約3~5倍 |
128GB | 15,000円~25,000円 | 2,500円~5,000円 | 約3~5倍 |
256GB | 30,000円~45,000円 | 4,000円~8,000円 | 約4~6倍 |
6.2 従来のmicroSDカードとのコスト比較
従来のmicroSDカード(UHS-I規格)と比較すると、microSD Expressカードは容量あたりの単価が3倍から6倍程度高い状況です。同じ128GB容量で比較した場合、高品質なUHS-I対応microSDカードが3,000円程度で購入できるのに対し、microSD Expressカードは最低でも15,000円程度の投資が必要となります。
ただし、転送速度を重視する用途では、このコスト差に見合う性能向上を期待できます。特に4K動画の撮影や大容量データの頻繁な転送を行う業務用途では、作業効率の向上により実質的なコストパフォーマンスが改善される可能性があります。
長期的な視点で見ると、技術の成熟と量産効果により価格は徐々に下がることが予想されますが、現時点では予算に余裕がある場合の選択肢として位置づけられています。
6.3 市場での流通状況
microSD Expressカードの市場流通は、2025年現在において非常に限定的な状況です。国内の主要な家電量販店やオンラインショップでの取り扱いは少なく、一部の専門店や海外製品を扱う販売店でのみ入手可能となっています。
主要メーカーでは、サンディスクやキングストンなどが先行して製品を発表していますが、実際の店頭在庫は不安定で、予約注文や取り寄せでの対応となるケースが多くなっています。特に容量の大きなモデルほど入手困難な傾向があります。
この流通状況の背景には、対応機器の普及が進んでいないことと、製造コストの高さから各メーカーが慎重な市場投入を行っていることがあります。現在は早期採用者向けの限定的な市場として展開されており、一般消費者が気軽に購入できる状況には至っていません。
しかしNintendo Swtich2へmicsoSD Expressが採用されたことで今後価格がより安価且つ安定供給されるようになると考えられます。
購入を検討する場合は、事前に在庫状況の確認と、使用予定の機器がmicroSD Express規格に対応しているかの確認が必要です。また、初期不良や互換性の問題に備えて、信頼できる販売店からの購入を推奨します。
7. 用途別の使い分けガイド
7.1 microSD Expressカードが適している用途
microSD Expressカードは、高速なデータ転送と大容量ストレージを必要とする用途に最適です。特に、プロフェッショナルな映像制作や高負荷なアプリケーションでその真価を発揮します。
8K動画撮影や高ビットレート4K動画の撮影では、従来のmicroSDカードでは書き込み速度が不足し、フレームドロップやエラーが発生する可能性があります。microSD Expressカードの高速書き込み性能により、連続撮影時の安定性が大幅に向上します。
プロ向けドローンでの長時間飛行撮影においても、microSD Expressカードの優位性は明確です。大容量ファイルの連続書き込みが必要な空撮業務では、データ損失のリスクを最小限に抑えることができます。
ゲーミング用途では、Nintendo Switch2やSteam Deckなどの携帯ゲーム機でのゲームロード時間短縮に効果的です。特に大容量ゲームのインストールや起動時間の改善が期待できます。
データベースやログファイルを扱うIoTデバイスでも、microSD Expressカードの高速ランダムアクセス性能が活かされます。工場設備の監視システムや車載機器でのリアルタイムデータ処理において、パフォーマンスの向上が見込めます。
7.2 従来のmicroSDカードで十分な用途
一般的な写真撮影やフルHD動画撮影では、従来のmicroSDカードで十分な性能を発揮します。デジタルカメラやスマートフォンでの日常的な撮影において、microSD Expressカードの高性能は必要以上となる場合が多いです。
音楽ファイルや電子書籍の保存用途では、転送速度よりも容量あたりのコストパフォーマンスが重要になります。従来のmicroSDカードの方が経済的で実用性が高いといえます。
スマートフォンの容量拡張や古いデジタル機器での使用では、従来のmicroSDカードが適しています。多くのスマートフォンは現在でもUHS-I規格に対応しており、microSD Expressカードの性能を活かしきれません。
防犯カメラやドライブレコーダーなど、連続録画が主な用途の機器では、耐久性と安定性が重視されます。これらの用途では、従来のmicroSDカードでも十分な性能を提供します。
7.3 購入時の選択基準
microSDカードを選択する際は、まず使用予定の機器がmicroSD Expressカードに対応しているかを確認することが最重要です。対応していない機器では、高価なmicroSD Expressカードを購入してもその性能を活かすことができません。
用途カテゴリ | 推奨カード | 重視すべき性能 | 目安価格帯 |
---|---|---|---|
8K/高ビットレート4K撮影 | microSD Express | 書き込み速度 | 高価格 |
プロゲーミング | microSD Express | ランダムアクセス速度 | 高価格 |
一般撮影・動画 | 従来型(UHS-I/II) | 容量とコスト | 中価格 |
データ保存・音楽 | 従来型(Class 10) | 容量とコスト | 低価格 |
予算と性能のバランスも重要な選択基準です。microSD Expressカードは従来品の3〜5倍の価格となることが多く、用途に見合った投資効果があるかを検討する必要があります。
将来性を考慮した選択も推奨されます。現在の機器では性能を活かしきれなくても、機器の買い替え時期が近い場合は、microSD Expressカードの導入を検討する価値があります。
ブランドと保証期間も選択基準として重要です。高性能なmicroSD Expressカードは精密な製品であるため、信頼性の高いメーカーからの購入を推奨します。特にプロ用途では、データ損失のリスクを最小限に抑えるため、長期保証付きの製品を選択することが賢明です。
用途に応じた適切な選択により、コストパフォーマンスを最大化しつつ、必要な性能を確保することが可能になります。
8. まとめ
microSD ExpressカードとmicroSDカードの最大の違いは転送速度にあります。microSD ExpressカードはPCIe接続により最大985MB/sの高速転送を実現し、従来のmicroSDカードの約10倍の性能を発揮します。容量面では両者とも128TBまで対応可能ですが、ランダムアクセス性能や4K動画撮影時の安定性ではmicroSD Expressカードが圧倒的に優れています。ただし、下位互換性があるため既存のmicroSDカードスロットでも使用できますが、その場合は従来のUHS-I速度に制限されます。価格は従来品の3〜5倍程度と高額で、対応機器もまだ限定的です。高速な動画編集や大容量データ転送が必要な用途ではmicroSD Expressカードを、一般的な写真撮影やファイル保存には従来のmicroSDカードが適しています。高性能なストレージを活用したゲーミングPC/クリエイターPCのパソコン選びで悩んだらブルックテックPCへ。
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