CPUクーラー「空冷」「水冷」の違いとメリット・デメリット 【パソコン選びで知っておきたい基礎知識】

パソコンの心臓部であるCPUの冷却は、安定動作のための重要な要素です。
本記事では、CPUクーラーの2大方式である「空冷」と「水冷」について、その仕組みから違い、メリット・デメリットまでを詳しく解説します。インテルCore i9/i7(Ultra9,Ultra7)やAMD Ryzen 9などの高性能CPUを搭載したゲーミングPCやクリエイター向けPCでは、適切な冷却方式の選択が特に重要になります。
コストパフォーマンスと信頼性を重視するなら空冷、最高レベルの冷却性能を求めるなら水冷が適していますが、それぞれに特徴があります。本記事を読めば、自分の用途に合った冷却方式を選択できるようになり、これからBTOパソコンを購入する方に特におすすめの内容となっています。

1. CPUクーラーとは何か 基本的な役割と重要性を解説

パソコンの心臓部であるCPU(Central Processing Unit)は、高負荷時に100度近い熱を発生させます。この熱を適切に排出し、CPUを適正温度に保つために必要不可欠な部品が「CPUクーラー」です。

1.1 CPUの発熱とクーラーの必要性

CPUは動作時に大量の電力を消費し、その電力のほとんどが熱として放出されます。例えば、Intel Core i9-13900Kは最大253Wもの電力を消費し、その大部分が熱となります。

適切な冷却なしでは、CPUは正常に動作できないだけでなく、最悪の場合、物理的な損傷を受ける可能性があります

1.2 オーバーヒートのリスクと対策

CPUの温度が90度を超えると、パソコンの動作が不安定になり、突然のシャットダウンやブルースクリーン、最悪の場合はCPUの永久的な損傷につながる可能性があります。

適切なCPUクーラーを選択することで、以下のような問題を防ぐことができます。

  • システムの不安定性
  • パフォーマンスの低下
  • 部品の寿命短縮
  • 突然のシャットダウン

1.3 実は冷えているように見えているだけ!?サーマルスロットリングを理解

多くのユーザーが見落としがちな「サーマルスロットリング」という現象があります。これは、CPUが高温になった際に、自動的に動作周波数を低下させて発熱を抑える保護機能です。

例えば、定格4.5GHzで動作するはずのCPUが、高温により3.0GHz程度まで性能を落とすことがあります。つまり、パソコンは動作していても、本来の性能を発揮できていない状態となります。

CPU温度動作状態性能への影響
30-50度理想的な動作温度最大性能を発揮
50-70度通常の動作温度影響なし
70-90度高温警戒域サーマルスロットリング発生の可能性
90度以上危険温度強制的な性能低下・シャットダウンの可能性

2. 空冷CPUクーラーと水冷CPUクーラーの基本的な違い

パソコンの心臓部であるCPUの冷却方式には、主に空冷と水冷の2種類があります。それぞれの方式には特徴的な仕組みがあり、冷却性能や構造に大きな違いがあります。

2.1 空冷CPUクーラーの仕組みと特徴

空冷CPUクーラーは、アルミニウムや銅などの金属製ヒートシンクと、それに取り付けられた冷却ファンで構成される冷却システムです。

CPUで発生した熱は、まずCPUに密着させた銅製やアルミニウム製のベースプレートに伝わります。その熱は、ヒートパイプと呼ばれる細い管を通じてヒートシンクへと運ばれます。ヒートシンクは複数の薄い金属板(フィン)で構成されており、表面積を大きくすることで効率的に熱を放出します。

ファンはヒートシンクに風を送り、熱を空気中に逃がします。日本メーカーのサイズ規格では、9cm、12cm、14cmファンが一般的で、ファンが大きいほど同じ回転数でも多くの風量を確保できます

2.2 水冷CPUクーラーの仕組みと特徴

水冷CPUクーラーは、冷却液(クーラント)を循環させることでCPUを冷却するシステムです。

構成要素役割
ウォーターブロックCPUに直接接触し、熱を吸収する部品
ラジエーター熱を帯びた冷却液を冷やす放熱器
ポンプ冷却液を循環させる装置
チューブ冷却液の通り道となる配管

水冷システムでは、まずウォーターブロックがCPUから熱を吸収します。その熱は冷却液に伝わり、ポンプの力でラジエーターまで運ばれます。ラジエーターでは、付属のファンによって冷やされた冷却液が再びウォーターブロックに戻る、という循環を繰り返します。

空冷に比べて水の熱容量が大きいため、急激な温度上昇を抑えられる特徴があります。また一体型水冷(AIO)と呼ばれる製品は、工場での組み立て済みのため、導入のハードルが比較的低くなっています。

ピラーレスケースを採用したケースが人気を集めていることもあり、PC内部をすっきりと見せたいということから水冷を選択される方も多く、見た目の魅力も特徴の一つとなっています。

3. 空冷CPUクーラーのメリットとデメリット

空冷CPUクーラーは、多くのデスクトップPCで採用されている冷却方式です。この章では、空冷CPUクーラーを選ぶ際に知っておくべきメリットとデメリットについて詳しく解説します。

3.1 メリット

3.1.1 比較的低価格で導入しやすい

空冷CPUクーラーの最大の魅力は、エントリーモデルであれば2,000円台から購入できるという価格の手軽さです。中級機でも5,000円前後、ハイエンドモデルでも15,000円程度で購入可能です。一部の静音クーラーは2~3万円と高価です。

3.1.2 メンテナンスが簡単

定期的な清掃は必要ですが、エアダスターで埃を吹き飛ばすだけの簡単なメンテナンスで済みます。パーツの交換も、ファンが寿命を迎えた際に新品と交換するだけです。

3.1.3 故障リスクが低い

構造がシンプルで可動部分が少ないため、長期間の使用でも故障しにくく、安心して使い続けることができます。特に冷却フィンとファンという単純な構造の製品は、5年以上問題なく使用できることも珍しくありません。

3.2 デメリット

3.2.1 製品をしっかり検証しないと冷却性能に限界があるものが多い

空冷クーラーは製品選びが非常に重要で、CPUの発熱量に対して適切な冷却能力を持つ製品を選ばないと性能不足に陥る可能性があります。特にIntel Core i9やAMD Ryzen 9シリーズなどの高性能CPUを使用する場合は、製品の選定に慎重になる必要があります。

3.2.2 大型化による取り付けスペースの問題

高い冷却性能を得るためにヒートシンクが大型化する傾向があり、PCケース内の空間を大きく占有してしまいます。特にマザーボード上のメモリスロットやPCIeスロットと干渉する可能性があるため、事前の互換性確認が重要です。

3.2.3 ファンノイズの発生

空冷クーラーはファンの回転による騒音が発生するため、完全な静音化は難しいという特徴があります。特に負荷が高い状況では、ファンの回転数が上昇することで騒音レベルが上がります。

安価な空冷クーラーは特に付属ファンの騒音が大きいことが多く、ファンの換装費用を含めるとクーラー本体だけの金額だけでは済まないこともあります。

4. 水冷CPUクーラーのメリットとデメリット

水冷CPUクーラーは、近年のハイエンドPCで人気の冷却方式です。その特徴を詳しく見ていきましょう。

4.1 メリット

4.1.1 高い冷却性能

水冷CPUクーラーの最大の特徴は、空冷方式と比較して高い冷却性能を簡単に発揮できる点です。水は空気と比べて熱伝導率が高く、CPUから発生する熱を効率的に排出できます。

4.1.2 省スペースですっきりとしたマシン製造が可能

ラジエーターをケース上部や前面に設置できるため、マザーボード周辺のスペースを広く確保できます。これにより、RAMやグラフィックボードの取り付けがスムーズになります。

4.1.3 製品によっては高い静音性を持つ

水冷システムでは、冷却液が熱を運びラジエーターに風を吹き付けて冷却を行います。そのため適切な水冷クーラーであればポンプの流量の調整とあわせて静音な環境を作ることも可能です。特にASETEKがOEMする最新モデルでは、ポンプノイズも大幅に低減されています。

4.2 デメリット

4.2.1 導入コストが高い

一般的な水冷CPUクーラーは2万円前後から、カスタム水冷の場合は5万円以上の費用がかかります。空冷式の2倍から10倍程度の価格差があり、コストパフォーマンスの面では課題があります。

4.2.2 メンテナンスが必要

密閉型の簡易水冷でも、3〜5年程度で冷却液の交換が推奨されます。カスタム水冷の場合は、以下のような定期的なメンテナンスが必要です:

  • 冷却液の交換(6ヶ月〜1年ごと)
  • 配管の点検(3ヶ月ごと)
  • ラジエーターの清掃(6ヶ月ごと)
  • ポンプの動作確認(毎月)

4.2.3 クーラント漏れ(水漏れ)のリスク

水冷システムは配管接続部からの漏れが発生する可能性があり、最悪の場合、電気系統のショートによる故障につながります。特に以下の箇所での漏れに注意が必要です:

  • ポンプとラジエーターの接続部
  • 各パーツの接続部
  • 経年劣化による配管の亀裂

最近の製品では漏れ対策として、電気を通さない特殊な冷却液の採用や、二重配管構造の採用などの工夫がされていますが、大手メーカー等のPCに組み込まれている安価な製品では対策されていない事も多く、水漏れによってPCが全損することもあります。

5. 用途別におすすめのCPUクーラー選び

CPUクーラーの選び方は、用途によって大きく異なります。ここでは、具体的な使用シーンごとに最適なCPUクーラーの選び方をご紹介します。

5.1 一般的なデスクトップPCでの使用

一般的なオフィスワークやウェブブラウジング、動画視聴などの用途であれば、必要以上に高性能なCPUクーラーを選ぶ必要はありません。

一般用途では、Intel純正クーラーやAMD純正クーラーでも十分な冷却性能を発揮できます

5.2 ゲーミングPCでの使用

ゲーミングPCでは、長時間の高負荷状態が続くため、安定した冷却性能が求められます。

ゲーミング用途では、オーバークロックを行わない場合でも、高性能な空冷クーラーか240mm規模の簡易水冷を選択することをお勧めします

5.3 ヘビーユースマシンでの使用

動画編集や3DCG制作、配信など、CPUに極めて高い負荷がかかる用途では、最高クラスの冷却性能が必要です。

プロフェッショナルな用途では、初期投資が高額でも長期的な安定性を重視し、信頼性の高い製品を選択することが重要です。特に動画編集やストリーミング配信では、CPUの発熱を効率的に抑制できる製品を選びましょう。

ケース内の空気の流れを考慮し、エアフローを最適化することで、さらなる冷却効果が期待できます。また、サーマルグリスの選択や定期的な清掃なども、冷却性能を維持する上で重要なポイントとなります。

6. ブルックテックPCでの取り組み

6.1 壊れにくいBTOパソコンメーカー 「ブルックテックPC」

ブルックテックPCは、3年故障率1%未満を実現している信頼性の高いBTOパソコンメーカーです。パーツの選定から組み立て、出荷前検査まで、すべての工程において品質管理を徹底しています。

特にCPUクーラーの選定においては、以下の3つの観点から厳密な検証を行っています:

検証項目具体的な内容
耐久性連続稼働テストによる性能検証
冷却性能フルロード時の温度推移データ収集
騒音レベル騒音計による数値化と評価

6.2 ブルックテックPCは安易に水冷を使用しない!

ブルックテックPCでは、一般利用のパソコンに対して原則として水冷クーラーを採用していません。その理由は次の通りです。

第一に、水冷システムは経年劣化によるクーラント液の減少や配管の劣化が避けられません。メンテナンスフリーを謳う製品であっても、3〜5年での性能低下は避けられない現実があります。

第二に、万が一の水漏れリスクです。たとえ0.1%の確率であっても、お客様の大切なデータやパソコン本体に重大な損傷を与えるリスクは極力排除するという方針を取っています。

ただし見た目を重視するPC等で水冷クーラーを組み込む際、大手BTOメーカーの殆どはトップへ設置することが多い中、ブルックテックPCでは可能な限りケーストップ(上部)ではなくフロントパネル(前面)かサイドパネル(側面)に設置することとしています。
この設置方法には手間がかかりますが、万が一の水漏れ時に全損リスクを軽減することが可能なため手間を惜しまず作業しています。

7. まとめ

CPUクーラーの選択は、パソコンの性能と信頼性を大きく左右する重要な要素です。空冷CPUクーラーは、比較的安価で故障リスクが低く、メンテナンスも容易という特徴があります。高性能空冷クーラーを選べば、一般的な用途からゲーミングPCまで十分な冷却性能を発揮できます。

一方、水冷CPUクーラーは高い冷却性能と省スペース性が魅力ですが、導入コストが高く、メンテナンスの手間やクーラント漏れのリスクがあります。発熱の大きいCPUでオーバークロックを行う場合を除き、一般的な用途では空冷クーラーで十分な性能が得られます。

ブルックテックPCでは、長年の経験から空冷CPUクーラーでの運用できることを前提に設計を行っています。これはパソコンの信頼性を最優先に考えた結果です。実際のテストでは、静音性においても最新の空冷クーラーの方が優れているケースが多く確認されています。

結論として、一般的なユースケースでは空冷CPUクーラーを選択することをお勧めします。コストパフォーマンスと信頼性を重視するなら、実績のある空冷クーラーが最適な選択となるでしょう。

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ブルックテックPCは「3年故障率1%未満」という圧倒的な耐久性を持つマシンを販売しており、映像編集を行うCG/VFXクリエイター,VTuber,音楽制作会社、プロゲーマー等幅広い用途と職種で利用されています。
BTOパソコンは知識がないと購入が難しいと思われがちですが、ブルックテックPCでは公式LINEやホームページのお問い合わせフォームの質問に答えるだけで、気軽に自分に合うパソコンを相談することが可能!
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