パソコンを購入するとき「APU」と「CPU」の違いに悩んだことはありませんか?
この記事では、コンピューターの頭脳とも言えるAPUとCPUの違いを初心者にもわかりやすく解説します。APUはグラフィック処理機能を内蔵した処理装置で、CPUは演算処理に特化した装置です。それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解することで、自分の用途に最適な選択ができるようになります。コスパ重視なら省スペース設計のAPUが、高い処理性能を求めるならCPU+独立GPUの組み合わせが適しています。ベンチマークデータに基づいた性能比較や、具体的な選び方まで徹底解説しますので、この記事を読めば「どちらを選ぶべきか」の答えが明確になるでしょう。
1. APUとCPUの基本概念
パソコンを選ぶ際、処理装置の種類によってパフォーマンスや価格が大きく変わります。特に「APU」と「CPU」という言葉を目にすることが多いですが、これらの違いを正確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。ここでは、APUとCPUの基本的な概念と違いについて詳しく解説します。
1.1 CPUとは何か
CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)は、コンピューターの頭脳とも言える部品です。OSの動作やアプリケーションの実行など、ほぼすべての計算処理をこのCPUが担当しています。
CPUは主に以下の要素で構成されています。
- 演算装置(ALU:Arithmetic Logic Unit)
- 制御装置(Control Unit)
- レジスタ(Register)
- キャッシュメモリ
現代のCPUは、複数のコア(処理ユニット)を持つマルチコア構造が一般的です。コア数が多いほど、同時に複数の処理を効率よく実行できます。
CPUはコンピューターの処理性能を左右する最も重要なパーツの一つで、インテルの「Core iシリーズ」やAMDの「Ryzen」シリーズが代表的な製品です。
1.2 APUとは何か
APU(Accelerated Processing Unit:アクセラレーテッド・プロセッシング・ユニット)は、AMDが開発した、CPUとGPU(Graphics Processing Unit:グラフィックス処理装置)を統合したプロセッサーです。
APUは次の要素で構成されています。
- CPU部分(計算処理コア)
- GPU部分(グラフィックス処理コア)
- 共有メモリコントローラー
- その他の専用処理ユニット
技術的には、APUという名称はAMDの登録商標であり、同社が2011年に発表した統合型プロセッサーを指します。現在では「Ryzen」シリーズにおいて「Gモデル」として展開されている製品がAPUに相当します。
APUの最大の特徴は、CPUとGPUが一つのチップに統合されていることで、別途グラフィックボードを搭載しなくても基本的な画像処理が可能な点です。
1.3 APUとCPUの根本的な違い
APUとCPUの最も基本的な違いは、グラフィックス処理機能の有無です。以下の表で、その主な違いを比較してみましょう。
比較項目 | CPU | APU |
---|---|---|
グラフィックス機能 | 基本的になし(一部のインテルCPUには内蔵GPUあり) | あり(統合GPU搭載) |
主な用途 | 汎用計算処理、高負荷タスク | 統合処理(計算処理+基本的なグラフィックス処理) |
追加GPU | 必要(グラフィック処理を行う場合) | 不要(基本的なグラフィック処理の場合) |
消費電力 | 単体では低め | CPUとGPU機能を統合しているため比較的高め |
システム構成 | CPU + 独立GPU(必要な場合) | APUのみで基本動作可能 |
代表的な製品 | AMD Ryzen 9 7950X、Intel Core i9-13900K | AMD Ryzen 7 5700G、AMD Ryzen 5 5600G |
厳密には、現在のインテルCPUの多くも内蔵グラフィックス機能を持っています(Intel HD Graphics、Intel Iris Xeなど)。しかし、AMDが「APU」と呼ぶ製品は、より高性能なRadeonグラフィックスを統合している点が特徴です。
APUは実質的には「CPU+GPU」を一つのチップに統合したもので、これにより以下のメリットが生まれます。
- 省スペース設計が可能
- パーツ点数の削減によるコスト削減
- CPU-GPU間のデータ転送の効率化
- 電力効率の最適化
一方で、独立したGPUと比較すると、APU内蔵のグラフィックス性能には制限があります。高負荷のグラフィックス処理を必要とするゲームや3DCG制作などの用途では、CPU+独立GPUの構成の方が高いパフォーマンスを発揮します。
つまりAPUとCPUの選択は、用途や予算に応じて検討すべき重要なポイントなのです。ブルックテックPCでは、お客様の用途に最適なプロセッサーを搭載したパソコンをご提案しています。
この基本概念を理解した上で、次章ではAPUの構造と特徴についてより詳しく見ていきましょう。
2. APUの構造と特徴
パソコンの頭脳部分を理解するうえで重要なAPU。ここではAPUの内部構造や特徴について詳しく解説します。APUはCPUとGPUが一体となった革新的なプロセッサであり、その仕組みを知ることでパソコン選びの視野が広がるでしょう。
2.1 APUの内部構成
APU(Accelerated Processing Unit)は、CPU(中央処理装置)とGPU(グラフィックス処理装置)が1つのダイ(半導体チップ)に統合されたプロセッサです。この統合設計により、従来のCPU+独立GPUの構成と比較して、いくつかの重要な特徴が生まれています。
APUの内部構成の主な特徴は以下の通りです:
- CPU部分(演算コア)
- GPU部分(グラフィックスコア)
- 共有メモリコントローラ
- キャッシュメモリ
- データバス
APUの最大の特徴は、CPU部分とGPU部分が同じチップ上に存在し、メモリを共有できる点です。これにより、従来のCPUとディスクリートGPU間のデータ転送の遅延が大幅に削減され、処理効率が向上します。
例えば、AMDの最新Ryzen APUでは、CPUコアとRadeonグラフィックスコアが同一チップ上に配置され、DDR4/DDR5メモリを共有することで、スムーズなデータ連携を実現しています。
また、最新のAPUでは以下のような進化も見られます。
- 3Dスタッキング技術による高速メモリの統合
- AI処理に特化したニューラルプロセッシングユニット(NPU)の搭載
- 電力効率を高めるための先進的な電力管理機能
2.2 AMDのAPU製品ラインナップ
APUという用語は、AMD社が正式に使用している名称で、同社の統合グラフィックス搭載プロセッサを指します。AMDは長年にわたりAPU製品を展開しており、現在も進化を続けています。
最新のAMD APU製品ラインナップは以下のように分類されます。
シリーズ名 | ターゲット市場 | 特徴 | 代表的なモデル |
---|---|---|---|
Ryzen 7000Gシリーズ | デスクトップ | 高性能統合グラフィックス搭載 | Ryzen 7 7700G |
Ryzen 7000U/Hシリーズ | ノートPC | 省電力・モバイル向け | Ryzen 7 7840U |
Ryzen Z1シリーズ | ゲーミングハンドヘルド | 携帯ゲーム機向け最適化 | Ryzen Z1 Extreme |
AMDの最新APUは、ZenアーキテクチャのCPUコアとRDNAアーキテクチャのGPUコアを組み合わせており、エントリーからミドルレンジのゲームを内蔵グラフィックスだけでプレイできる性能を持っています。
例えば、Ryzen 7 7700Gは8コア16スレッドのCPU部分と、Radeon 780Mグラフィックス(RDNA 3アーキテクチャ、12グラフィックスコア)を搭載し、軽量なeスポーツタイトルなら快適にプレイできる性能を備えています。
AMDによると、最新のRyzen 7000シリーズAPUは、従来モデルと比較して最大30%のグラフィックス性能向上を実現しているとのことです。
2.3 インテルのCPU内蔵グラフィックスとの違い
インテルも長年にわたり、CPUに統合されたグラフィックス機能を提供していますが、同社はこれを「APU」とは呼ばず、「統合グラフィックス」や「内蔵GPU」などと表現しています。AMDのAPUとインテルの内蔵グラフィックス搭載CPUには、設計思想や性能面でいくつかの違いがあります。
主な違いは以下の通りです。
項目 | AMDのAPU | インテルの内蔵グラフィックス |
---|---|---|
グラフィックスアーキテクチャ | Radeon(RDNA系) | Intel Xe/UHD/Iris |
グラフィックス性能の位置づけ | 高いグラフィック性能重視 | 基本機能としてのグラフィックス |
ゲーミング性能 | 比較的高い(エントリー〜ミドルクラス) | 基本的なゲーム向け(最新Xeグラフィックスは性能向上) |
メモリ共有方式 | HSA(Heterogeneous System Architecture)対応 | 従来型の共有メモリ方式 |
AMD APUの最大の強みは、同価格帯のインテルCPU内蔵グラフィックスと比較して、より高いグラフィックス処理能力を持つ点です。特にゲーム性能においては、一般的にAMD APUの方が優位性を持っています。
一方、インテルの最新CPU(第12/13世代Core)に搭載されるIris Xeグラフィックスは、従来のUHDグラフィックスから大幅に性能が向上しており、AMD APUとの差は以前より縮まっています。特に、Intel Arc GPUのアーキテクチャを活用したXeグラフィックスは、一部のゲームやクリエイティブ作業でも実用的な性能を発揮します。
ベンチマークテストによると、AMDのRyzen 7 7700GのRadeon 780MグラフィックスはインテルのCore i7-13700KのIris Xe Graphics 770と比較して、1080p解像度のゲームで平均約30-40%高いフレームレートを記録しています。
ブルックテックPCでは、用途に応じて最適なプロセッサを搭載したBTOパソコンやオーダーメイドPCをご提案しています。グラフィックス性能重視ならAMD APU搭載モデル、総合的なバランスを重視するならインテル内蔵グラフィックスモデルなど、お客様のニーズに合わせたマシンを幅広く取り扱っているため、自分で選ぶのが難しい場合は公式LINEやお問い合わせフォームからお問い合わせください。
2.3.1 APU・内蔵グラフィックスの進化と将来性
APUや内蔵グラフィックスは年々進化しており、現在のテクノロジートレンドは以下のような方向に向かっています。
- 3D積層技術による高速オンチップメモリの実装
- CPUとGPU間の統合度向上によるさらなる効率化
- AI処理に特化したNPU(ニューラルプロセッシングユニット)の統合
- レイトレーシングなど高度なグラフィックス技術の内蔵GPU対応
将来のAPUはディスクリートGPUに迫る性能を持つ可能性があり、特に中〜低価格帯のゲーミングPCにおいては、APUのみで十分な性能を発揮することが期待されています。
特にAMDは次世代APUでさらなるグラフィックス性能向上を目指しており、現在のディスクリートGPUの一部を代替できるレベルの統合グラフィックスの実現に取り組んでいます。この進化によって、コンパクトなPC設計や省電力設計がさらに進むことが期待されています。
3. CPUの構造と特徴
パソコン選びをする際に必ず目にするCPU。「コンピューターの頭脳」と呼ばれるこの重要なパーツの構造と特徴を詳しく解説します。APUとの違いを理解するためにも、まずはCPUの基本をしっかり押さえておきましょう。
3.1 CPUの内部構成
CPUは「Central Processing Unit(中央処理装置)」の略で、コンピューターの演算処理や制御を担う核心部分です。最新のCPUは非常に複雑な内部構造を持っていますが、主要な構成要素は以下の通りです。
構成要素 | 役割 |
---|---|
コア | 演算処理を行う基本ユニット。マルチコアCPUは複数のコアを持ち、同時に複数の処理が可能 |
キャッシュメモリ | 頻繁に使用するデータを一時的に保存する高速メモリ。L1、L2、L3と階層構造になっている |
コントロールユニット | 命令の解読と実行制御を担当 |
演算論理ユニット(ALU) | 数値計算や論理演算を実行 |
メモリコントローラー | CPUとRAMの間のデータ転送を管理 |
現代のCPUは、Intel社やAMD社が主に製造しています。一般的なCPUにはグラフィック処理専用の回路はなく、純粋に演算処理に特化した設計となっています。これがAPUとの最も大きな違いです。
最新のIntel第14世代Core i9プロセッサーを例にとると、最大24コア(8Pコア+16Eコア)という構成で、複雑な処理を複数同時に行うことができます。一方、AMD Ryzen 9 7950Xは16コア32スレッドという構成で、どちらも高性能な処理能力を持っています。
3.2 CPUの性能指標
CPUの性能を判断する際に重要な指標がいくつかあります。これらを理解することで、自分の用途に合ったCPUを選びやすくなります。
3.2.1 クロック周波数
CPUの動作速度を表す基本的な指標で、単位はGHz(ギガヘルツ)です。例えば3.5GHzのCPUは、1秒間に35億回の基本演算が可能ということになります。しかし、現代のCPU性能はクロック周波数だけでは測れないことに注意が必要です。
単純にクロック周波数が高いからといって、必ずしも性能が良いわけではありません。アーキテクチャ(設計構造)の違いによって、同じクロック周波数でも実際の処理能力は大きく異なることがあります。
3.2.2 コア数とスレッド数
コア数は物理的な処理ユニットの数を、スレッド数は同時に処理できる命令の数を表します。例えば、8コア16スレッドのCPUは、8つの物理コアで16の処理を同時に実行できます。
マルチタスク処理や、複数のコアを利用できるソフトウェアを使用する場合は、コア数が多いCPUが有利です。動画編集やCG制作、最新のゲームなどはマルチコアの恩恵を受けられます。
用途 | 推奨コア数 | 理由 |
---|---|---|
一般的なオフィス作業 | 4コア以上 | 複数のアプリケーションを同時に使用する場合でも快適に動作 |
ゲーミング | 6〜8コア | 最新ゲームは複数コアを活用する設計が増加 |
動画編集・3DCG制作 | 8コア以上 | レンダリングなどの重い処理を複数コアで分散処理 |
サーバー・専門的作業 | 12コア以上 | 大量のデータ処理や仮想化環境での使用に対応 |
3.2.3 キャッシュメモリ
CPUのキャッシュメモリは、高速にアクセスできる一時的なデータ保存領域です。L1、L2、L3の3段階に分かれており、L1が最も高速で容量が小さく、L3は比較的大容量ですが若干速度が劣ります。
キャッシュメモリが大きいほど、繰り返し使用するデータをより多く保持できるため、特に大量のデータを処理する場合に性能向上につながります。最新のハイエンドCPUでは、L3キャッシュが64MB以上あるモデルも登場しています。
3.2.4 TDP(熱設計電力)
TDPは「Thermal Design Power」の略で、CPUが発生する熱量の指標となります。単位はW(ワット)で表され、この値が高いほど発熱量も大きく、より強力な冷却システムが必要になります。
通常、高性能なCPUほどTDP値も高くなる傾向があります。例えばIntel Core i9-14900Kは電源設定により125Wから253Wの間で設定可能で、最大性能を発揮させるには強力な冷却が必要です。一方、低電力設計のモバイル向けCPUは15W程度のTDPで動作します。
PCを長時間使用する環境では、TDPと冷却性能のバランスを考慮することが重要です。適切な冷却が行われないと、CPUは熱暴走を防ぐために自動的に性能を抑制する「サーマルスロットリング」という状態になり、本来の性能を発揮できなくなります。
3.2.5 アーキテクチャ
CPUのアーキテクチャとは、その内部設計や構造のことを指します。同じ製造プロセスやコア数であっても、アーキテクチャが異なれば性能や効率が大きく変わります。
例えば、IntelのCore iシリーズは「Raptor Lake」(第13・14世代)、AMDのRyzenシリーズは「Zen 4」(第7世代)といったアーキテクチャを採用しています。新しい世代のアーキテクチャほど、同じクロック周波数でもIPC(Instructions Per Clock:1クロックあたりの処理量)が向上しているため効率が良くなっています。
アーキテクチャの進化により、単純な処理速度だけでなく、電力効率や特定の計算(AI処理や暗号化など)に特化した専用回路が追加されるなど、様々な進化が行われています。
以上がCPUの基本的な構造と性能指標です。次章ではAPUとCPUの性能を様々な観点から比較していきます。CPUを理解することで、APUとの違いがより明確になり、自分の用途に最適な選択ができるようになるでしょう。
4. APUとCPUの性能比較
APUとCPUの違いを理解するには、性能面での比較が重要です。この章では処理速度、グラフィック性能、消費電力、コストパフォーマンスなど、様々な角度から両者を比較していきます。
4.1 処理速度の違い
CPU単体とAPUのCPU部分を比較すると、同じ世代・同価格帯では一般的にCPU単体の方が処理速度で優位に立ちます。これは主に次の理由によるものです。
- APUは限られたダイ(半導体チップ)面積をCPUコアとGPUコアで分け合うため、CPUコアに割ける物理的なスペースが少なくなる
- 発熱の関係上、同じパッケージ内にCPUとGPUが統合されているため、パフォーマンスを抑える必要がある
- CPU単体製品は高性能志向のユーザー向けに設計されているため、より高いクロック周波数や多くのコア数が用意されている
例えば、AMDの最新Ryzenシリーズで比較すると、APUのRyzen 7 7840HSと純粋なCPUのRyzen 7 7700Xでは、マルチコア性能でおよそ15-20%の差があります。
プロセッサー | コア/スレッド | ベースクロック | ブーストクロック | Cinebenchスコア(マルチ) |
---|---|---|---|---|
Ryzen 7 7840HS (APU) | 8/16 | 3.8GHz | 5.1GHz | 約18,000 |
Ryzen 7 7700X (CPU) | 8/16 | 4.5GHz | 5.4GHz | 約22,000 |
この性能差は、とくに高負荷の作業(動画編集や3Dレンダリングなど)において顕著になります。ただし、一般的なウェブブラウジングやオフィス作業では体感できるほどの差にはならないことが多いです。
4.2 グラフィック処理能力の比較
グラフィック処理能力は、APUの最大の強みです。CPU単体には基本的にグラフィック機能がないか、あってもごく基本的な表示能力しかありません。
最新のAMD Ryzen APUに搭載されているRadeon グラフィックスは、エントリーレベルの専用グラフィックボードに匹敵する性能を持っています。例えば、Ryzen 7 7840HSに搭載されているRadeon 780Mは、NVIDIA GeForce GTX 1650に近い性能を発揮します。
グラフィックス | タイプ | CU/EU数 | 1080pゲーム性能目安 |
---|---|---|---|
Radeon 780M (APU内蔵) | 統合GPU | 12 CU | 中~低設定で40-60fps |
Intel UHD 770 (CPU内蔵) | 統合GPU | 32 EU | 低設定で20-30fps |
NVIDIA GeForce GTX 1650 | 専用GPU | 896 CUDAコア | 中設定で60-90fps |
一方、インテルのCPUに内蔵されているUHDグラフィックスはAMDのAPUに比べて性能が低く、最新ゲームをプレイするには不十分です。日常的な作業や軽めのゲームであれば問題なく動作しますが、本格的なゲームプレイには専用グラフィックボードが必要になります。
APUは特にエントリーレベルのゲーミングPCや小型PC向けに、追加のグラフィックカードなしでも適度なゲーム体験を提供できる点が大きな強みとなっています。
4.3 消費電力とコスパの違い
APUとCPU+独立GPUの組み合わせでは、消費電力とコストパフォーマンスに大きな違いがあります。
4.3.1 消費電力の比較
APUは1つのパッケージにCPUとGPUの機能を統合しているため、CPU+独立GPUの構成よりも省電力です。例えば
- Ryzen 7 7840HS APU: TDP 45W(CPU+GPU機能含む)
- Ryzen 7 7700X CPU: TDP 105W + GeForce GTX 1650: TDP 75W = 合計約180W
この差は特にノートパソコンやミニPCなど、バッテリー駆動や発熱に制約のあるシステムで重要になります。消費電力が低いということは、バッテリー寿命の延長や冷却システムの簡素化、そして電気代の節約にもつながります。
4.3.2 コストパフォーマンスの比較
初期投資額の観点では、APUは明らかに有利です。
構成 | 概算価格 (2023年時点) |
---|---|
Ryzen 7 7840HS APU | 約45,000円 |
Ryzen 7 7700X CPU + GeForce GTX 1650 | 約60,000円 (CPU: 40,000円 + GPU: 20,000円) |
ただし、性能面では独立GPUのほうが上位モデルにアップグレードできる余地があるため、長期的な拡張性を考えるとCPU+GPUの構成が有利な場合もあります。予算が限られていて、かつ軽~中程度のゲームやクリエイティブ作業を行いたいユーザーにとっては、APUは非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
コストパフォーマンスという観点では、エントリーレベルのシステムではAPUが優位に立ちますが、高い性能を求める場合はCPU+独立GPUの組み合わせが結果的にコスパが良くなることもあります。
4.4 ベンチマークテスト結果
実際のベンチマーク結果から、APUとCPU+GPUの組み合わせの性能差を見てみましょう。
4.4.1 一般用途のベンチマーク
一般的なPC使用(ウェブブラウジング、オフィス作業、軽い画像編集など)では、APUとCPUの性能差はそれほど大きくありません。PCMark 10のスコアで比較すると
構成 | PCMark 10スコア |
---|---|
Ryzen 7 7840HS APU | 約7,200 |
Ryzen 7 7700X CPU | 約8,100 |
この程度の差は実際の使用感ではほとんど体感できません。日常的な作業ではどちらも十分快適に動作します。
4.4.2 ゲーム性能のベンチマーク
ゲーム性能では、特に高負荷のタイトルでより大きな差が現れます。
フルHD解像度(1920×1080)での人気ゲームのフレームレート比較
ゲームタイトル | 設定 | Ryzen 7 7840HS (APU) | Ryzen 7 7700X + GTX 1650 | Ryzen 7 7700X + RTX 3060 |
---|---|---|---|---|
フォートナイト | 中設定 | 85-95 fps | 110-120 fps | 180 fps |
VALORANT | 中設定 | 120+ fps | 140+ fps | 250 fps |
サイバーパンク2077 | 低設定 | 25-35 fps | 40-50 fps | 70-80 fps |
このデータから分かるように、eスポーツタイトルなどの比較的軽いゲームではAPUでも十分なフレームレートが得られますが、最新の高負荷ゲームでは独立GPUの優位性が明確になります。特に上位の独立GPU(RTX 3060など)を使用すると、APUとは大きな性能差が生まれます。
3DMark Time Spyのようなグラフィック特化ベンチマークでも同様の傾向が見られます。
構成 | 3DMark Time Spyスコア |
---|---|
Ryzen 7 7840HS APU (Radeon 780M) | 約2,900 |
Ryzen 7 7700X + GTX 1650 | 約4,500 |
Ryzen 7 7700X + RTX 3060 | 約10,000 |
総合的に見ると、APUは軽~中程度のゲームや一般作業では十分な性能を発揮しますが、より高負荷な作業や最新のハイエンドゲームでは独立GPUを搭載したシステムの方が明らかに優れています。
APUの最新モデルは以前に比べて大幅に性能が向上しており、特にAMDのRyzen APUは統合グラフィックス性能の面で業界をリードしています。しかし、あくまで独立GPUの入門モデルと比べられるレベルであり、中~上級のゲーマーやプロフェッショナルなクリエイターには物足りない可能性があります。
※実際の性能は使用するシステム構成やソフトウェアバージョンによって変動する可能性があります。
5. APUを選ぶべき人・用途
パソコンを購入する際、プロセッサの選択は非常に重要です。特にAPUは特定のユーザーや用途に適した選択肢となります。この章ではAPUのメリットや向いている用途について詳しく解説していきます。
5.1 APUのメリット
APUには独自のメリットがあり、特定のニーズを持つユーザーにとって最適な選択となります。
メリット | 詳細 |
---|---|
コストパフォーマンス | CPUとGPUを別々に購入するよりも総コストを抑えられる |
省スペース | 独立したグラフィックカードが不要なため、コンパクトなPC構成が可能 |
消費電力の効率 | 一般的にCPU+独立GPUの組み合わせより電力消費が少ない |
発熱量の低減 | 一体型設計により熱設計が最適化されている |
設定の簡便さ | 追加のドライバやハードウェア設定が少なく済む |
特に注目すべき点として、AMDの最新Ryzen APUシリーズは、以前の世代と比較して大幅に統合グラフィックス性能が向上しています。例えばRyzen 7 5700Gは、Vega 8グラフィックスを搭載し、軽いゲームなら十分に楽しめる性能を提供します。
また、APUはCPUとGPUの間のデータ転送が同じチップ内で行われるため、独立型のGPUとCPUの組み合わせに比べて遅延が少なく、効率的なデータ処理が可能です。
5.2 APUに向いている用途
APUは様々な用途に適していますが、特に以下のような使用シーンで真価を発揮します。
5.2.1 日常的なコンピューティング
Webブラウジング、動画視聴、オフィスソフトの使用など、一般的な作業には最新のAPUで十分に対応できます。Microsoft Office製品やGoogle Workspaceなどの生産性ツールはスムーズに動作し、複数のブラウザタブを開いての作業も快適に行えます。
5.2.2 軽いゲーミング
最新のAPUはかなり強力なグラフィック性能を備えており、以下のようなゲームを適切な設定で楽しむことが可能です。
- Minecraft
- League of Legends
- Counter-Strike: Global Offensive(中程度の設定)
- Fortnite(低~中設定)
- Valorant
例えば、AMDのRyzen 5 5600Gは720p~1080pの解像度で多くの人気ゲームをプレイできる性能を持っています。PCゲームのライブラリにはこうした要求の低いタイトルも多く、カジュアルゲーマーにとってAPUは魅力的な選択肢です。
5.2.3 コンパクトPC/HTPCの構築
APUはミニPCやホームシアターPC(HTPC)の構築に最適です。これらのコンパクトなシステムでは、独立したグラフィックカードを搭載するスペースが限られているため、CPU一体型のグラフィック性能が重宝されます。
例えば、小型のMini-ITXケースを使ったホームエンターテイメントシステムを構築する場合、APUを使用することでスペースを節約しながら4K動画の再生や軽いゲームを楽しむことができます。
5.2.4 エネルギー効率が重要な環境
APUは独立GPUを使用する構成と比較して消費電力が少ないため、ノートパソコンやバッテリー駆動のシステム、あるいは電力コストを抑えたいユーザーに適しています。AMDの最新APUは65W TDPを実現しており、同等の処理能力を持つCPU+GPU構成と比べてエネルギー効率に優れています。
5.3 予算重視のユーザーにとってのAPU
限られた予算でパソコンを組み立てたいユーザーにとって、APUは非常に魅力的な選択肢となります。
5.3.1 初期投資の削減
APUを選択することで、以下のようなコスト削減が可能です。
- 独立したグラフィックカードの購入費用が不要
- 電源ユニットも比較的小容量のもので十分
- 冷却システムも比較的シンプルなもので対応可能
例えば、2025年現在のエントリークラスのグラフィックカードであるGeForce RTX3050でも約3~4万円程度の費用がかかりますが、Ryzen 5 5600G(約2万円)のようなAPUを選べば、その費用を節約できます。また将来的に余裕ができたときにグラフィックカードを追加することも可能です。
5.3.2 段階的なアップグレードパス
APUを選ぶことで、現時点では予算内に収まるシステムを構築し、後日追加予算が確保できた時点で独立したグラフィックカードを追加するという段階的なアップグレード計画が可能になります。これは特に学生や若いPC愛好家にとって実用的なアプローチです。
AMDのAPUはPCIe 3.0または4.0スロットを備えたマザーボードと互換性があるため、後から高性能なグラフィックカードを追加してゲーミング性能を向上させることが可能です。この柔軟性は予算重視のユーザーにとって大きなメリットとなります。
5.3.3 総所有コスト(TCO)の削減
APUを使用したシステムは消費電力が少ないため、長期的な電気代も抑えられます。例えば、APUを使用したシステムは一般的に50〜100W程度の消費電力ですが、中程度のCPUと独立GPUの組み合わせでは200W以上消費することも珍しくありません。
1日8時間の使用を想定した場合、この差は年間で数千円の電気代の違いになります。さらに、発熱量が少ないため冷却システムへの負荷も軽減され、ファンの寿命も延びる可能性があります。
最新のAMD Ryzen 5 7600Gなどは前世代よりもさらに電力効率が向上しており、性能あたりの電力消費量が改善されています。これにより、長期的な運用コストの削減につながります。
以上のように、APUはコストパフォーマンスを重視するユーザー、コンパクトなシステムを構築したいユーザー、そして将来的なアップグレードを視野に入れている初心者ユーザーにとって理想的な選択肢と言えるでしょう。
6. CPUを選ぶべき人・用途
コンピューターの心臓部とも言えるCPUは、システム全体の性能を大きく左右します。APUと比較した際のCPUの特徴を理解することで、自分に最適な選択ができるようになります。ここではCPUを選ぶべき人や用途について詳しく見ていきましょう。
6.1 CPUのメリット
CPUには、APUと比較して明確な優位点があります。これらのメリットを把握することで、CPUが最適な選択肢となるケースが見えてきます。
メリット | 詳細説明 |
---|---|
純粋な演算性能の高さ | グラフィック機能を内蔵していない分、全てのリソースを演算処理に振り向けられる |
拡張性の高さ | 高性能なディスクリートGPUと組み合わせることで、用途に最適化したシステムを構築可能 |
冷却効率の良さ | APUと比べて発熱が集中しないため、より高いクロック周波数で安定動作しやすい |
製品選択肢の多さ | ハイエンドからローエンドまで幅広いラインナップから選べる |
CPUの最大の強みは、処理に特化した設計による高い演算性能です。Intel Core i9やAMD Ryzen 9シリーズなど、ハイエンドCPUはマルチコア・マルチスレッド処理に優れ、複雑な計算処理を素早く実行できます。
また、外部GPUとの組み合わせによる拡張性の高さも大きなメリットです。用途に応じて最適なグラフィックカードを選択でき、将来的なアップグレードパスも確保できます。
6.2 CPUに向いている用途
CPUの性能を最大限に活かせる用途は多岐にわたります。特に以下のような場面ではCPUの選択が最適解となるでしょう。
- 高負荷のクリエイティブ作業
- 動画編集(Adobe Premiere Pro、DaVinci Resolveなど)
- 3DCG制作(Blender、Maya、3ds Maxなど)
- 音楽制作・オーディオ処理
- プログラミングと開発作業
- 大規模なコードのコンパイル
- 仮想マシンの実行
- データベース処理
- 科学技術計算・シミュレーション
- 数値解析
- 気象シミュレーション
- 統計処理
- ハイエンドゲーミング
- 高フレームレート(144Hz以上)を求めるeスポーツ
- 大規模オープンワールドゲーム
- 配信・録画しながらのゲームプレイ
特に注目すべきは、最近のゲームタイトルの多くが、CPU性能に依存する部分が増えている点です。『Cyberpunk 2077』や『Microsoft Flight Simulator』などの大規模タイトルでは、複雑な物理演算やAI処理により、高性能なCPUが要求されます。
6.3 高性能を求めるユーザーにとってのCPU
特に以下のようなユーザーにとって、CPUを選択することは大きなメリットがあります。
6.3.1 プロフェッショナルクリエイター
動画編集やCG制作などのクリエイティブ作業を職業とする方にとって、CPUの処理能力は直接的に作業効率に影響します。例えば、4K動画の書き出し時間がCPUの性能により大きく変わるため、ハイエンドCPUへの投資は時間コストの削減につながります。
Adobe Creative Cloudの公式システム要件によれば、Premiere ProやAfter Effectsなどの動画編集ソフトでは、Intel Core i7/i9(Ultra7/Ultra9)やAMD Ryzen 7/9といった高性能CPUが推奨されています。
6.3.2 エンスージアスト/ハイエンドゲーマー
ゲーミングにおいても、特に高フレームレートや高解像度でのプレイを求めるユーザーには、強力なCPUが必要です。eスポーツタイトルでは、競争優位性を得るために240Hz以上のリフレッシュレートでプレイするケースも増えており、これには高性能CPUとGPUの組み合わせが欠かせません。
ゲームジャンル | CPU重要度 | 最適なCPUクラス |
---|---|---|
eスポーツタイトル (CS:GO、Valorantなど) | 非常に高い | Core i5-13600K以上 Ryzen 5 7600X以上 |
オープンワールドRPG (Cyberpunk 2077など) | 高い | Core i7-13700K以上 Ryzen 7 7700X以上 |
シミュレーション (Flight Simulatorなど) | 非常に高い | Core i9-13900K Ryzen 9 7950X |
最新のハイエンドCPUでは、Intel Core i9-13900KやAMD Ryzen 9 7950Xなどが最高峰の性能を誇り、これらのCPUは24コア以上のマルチコア構成で、マルチタスク処理や高負荷アプリケーションの実行に圧倒的なパフォーマンスを発揮します。
6.3.3 将来性を重視するユーザー
PCの長期使用を考えるユーザーにとって、CPU単体を選ぶメリットは拡張性にもあります。ディスクリートGPUを使用するシステムでは、将来的にグラフィックカードのみをアップグレードすることで、システム全体の性能を向上させることが可能です。
また、CPUとディスクリートGPUの組み合わせは電力管理の面でも利点があります。負荷に応じて各パーツが独立して動作するため、タスクに最適な電力配分が可能になり、結果的に効率的な電力利用につながるケースがあります。
まとめると、CPUを選ぶべきなのは、高い演算性能や拡張性を求めるユーザー、特にプロフェッショナルな作業やハイエンドゲーミングを行う方々です。初期投資は若干高くなる可能性がありますが、長期的な視点では最適な選択となることが多いでしょう。
7. APUとCPUの選び方
パソコンを購入したりパーツをアップグレードしたりする際、APUとCPUのどちらを選ぶべきか迷うことがあります。ここでは具体的な選択基準や考慮すべきポイントを詳しく解説します。選び方を理解することで、自分の用途やニーズに最適なプロセッサを選択できるようになりましょう。
7.1 用途に合わせた選択基準
APUとCPUを選ぶ際は、まず何のために使うのかという用途を明確にすることが重要です。用途によって最適な選択肢が変わってきます。
用途 | おすすめ | 理由 |
---|---|---|
オフィス作業/Web閲覧 | APU | コストパフォーマンスが高く、統合グラフィックスで十分対応可能 |
カジュアルゲーム | APU | 最新のAPUは軽〜中程度のゲームを快適に動作可能 |
動画編集(趣味レベル) | APU | 統合GPUがエンコード支援を提供し、コスト抑制可能 |
ハイエンドゲーミング | CPU+専用GPU | より高いグラフィック性能と処理能力が必要 |
プロ向け動画編集/3DCG | CPU+専用GPU | 複雑なレンダリングと高速処理に対応 |
サーバー/データベース | CPU | マルチコア性能とスレッド処理能力が重視される |
日常的な作業やカジュアルなゲームプレイを主な用途とする場合、AMDの「Ryzen 5 5600G」などのAPUは優れた選択肢です。一方、高負荷のゲームやクリエイティブ作業が多い場合は、「Core i7-14700K」や「Ryzen 7 7800X3D」などの高性能CPUと専用GPUの組み合わせを検討しましょう。
実際のパフォーマンス差については、PCMark 10のベンチマークによると、同価格帯のAPUとCPU+エントリーGPUを比較した場合、一般的なPC作業では約5〜15%のパフォーマンス差にとどまるケースが多いことがわかっています
7.2 予算と将来性を考慮した選択
次に考慮すべき重要な要素は予算と将来的なアップグレード計画です。システム全体の予算バランスを考えながら選択するのがポイントです。
7.2.1 予算別のおすすめ選択
限られた予算での構成:このような予算では、APUを選択するメリットが大きくなります。例えば、AMD Ryzen 5 5600GやRyzen 7 5700Gを選べば、別途グラフィックカードを購入する必要がなく、予算をメモリやストレージなど他のパーツに回せます。
中程度の予算での構成:この予算帯では、エントリーからミドルレンジのCPUと独立したGPUの組み合わせが検討できます。Intel Core i5-13400FやAMD Ryzen 5 7600と、NVIDIA GeForce RTX 3060やRadeon RX 6600XTクラスのGPUの組み合わせが現実的な選択肢となります。
余裕のある予算での構成:高予算であれば、ハイエンドCPU(Intel Core i7/i9シリーズやAMD Ryzen 7/9シリーズ)と高性能GPUの組み合わせが最適です。将来的な拡張性も高く、長期間にわたって高いパフォーマンスを発揮します。
7.2.2 将来のアップグレードを見据えた選択
長期的な視点からプロセッサを選ぶことも重要です。現在APUを選んだ場合でも、将来的にグラフィックボードを追加することで性能をアップグレードできます。その際のポイントは次の通りです:
- マザーボードのPCIeスロットが十分な世代と速度をサポートしているか確認する
- 電源ユニットが将来的なGPU追加に対応できる容量と出力を持っているか
- CPUソケットがいつまでサポートされるかを確認する(特にIntelはソケット変更が頻繁)
AMDの最新Ryzenプロセッサでは、ソケットAM5が2025年以降もサポートされる予定であることが発表されています(AMD公式サイト, 2023)。これは将来的なCPUアップグレードが可能であることを意味します。
7.3 製品選びのチェックポイント
実際にAPUやCPUを選ぶ際には、以下のポイントを確認しましょう。
7.3.1 APU選びの重要ポイント
- 内蔵グラフィックスの性能(CU数やコアクロック)
- CPU部分のコア数とスレッド数
- TDP(消費電力と発熱量)
- 対応メモリ規格と最大速度(APUは高速メモリの恩恵を受けやすい)
例えば、AMD Ryzen 7 5700GはVega 8グラフィックスを搭載し、8コア16スレッドのCPU性能と合わせて、統合型プロセッサとしては優れたバランスを持っています。DDR4-3200MHzのメモリをデュアルチャネルで使用することで、グラフィック性能を最大限に引き出せます。
7.3.2 CPU選びの重要ポイント
- シングルコア性能とマルチコア性能のバランス
- PCIeレーン数と世代(GPUやNVMe SSDとの接続に影響)
- キャッシュメモリの容量
- オーバークロックの可否(K/Xシリーズなど)
最新の調査によると、ゲーム用途ではシングルコア性能が特に重要であり、Intel Core i5-14600KやAMD Ryzen 7 7800X3Dなどはゲーミングに優れたパフォーマンスを発揮するCPUとして多くのレビューサイトで推奨されています
製品シリーズ | 想定ユーザー | 特徴 |
---|---|---|
AMD Ryzen G-Series(APU) | 予算重視/エントリーユーザー | コスパ重視の統合グラフィックス搭載モデル |
Intel Core i3/i5 | 一般ユーザー/カジュアルゲーマー | 日常使用からゲームまで幅広く対応するバランス型 |
AMD Ryzen 5/7 | ゲーマー/コンテンツクリエイター | マルチタスク性能とゲーミング性能を両立 |
Intel Core i7/i9 | ハイエンドゲーマー/プロフェッショナル | 高いシングルコア性能とマルチスレッド性能 |
AMD Ryzen 9/Threadripper | プロフェッショナル/ワークステーション | 多コア・多スレッドに優れた高性能モデル |
ここ数年のプロセッサ市場では、AMDとIntelの競争が激化しており、消費者にとっては価格対性能比の良い製品が増えています。特に2023年以降、両社の中〜上位モデルはゲームと作業の両方で高いパフォーマンスを実現しており、以前よりも選択肢が広がっています。
7.3.3 リテールCPUとOEM/トレイCPUの違い
購入形態にも注意が必要です。リテール品は付属のCPUクーラーがあり初心者には扱いやすい一方、OEM/トレイ品は自分で適切なCPUクーラーを選ぶ必要があります。最近のハイエンドCPUでは、標準クーラーの性能が不足するケースも多いため、別途高性能なCPUクーラーの購入を検討すべきでしょう。
特にAMD Ryzen 7000シリーズやIntel第14世代Coreシリーズのハイエンドモデルは、高いTDP値を持つため、空冷の場合は大型のタワー型クーラーや、水冷クーラーの検討をおすすめします。
APUとCPUどちらを選ぶにしても、自分の用途と予算を明確にし、将来のアップグレード可能性も考慮して選ぶことが、長く快適に使い続けるパソコンシステムを構築するポイントです。パーツ選びに迷ったときは、各メーカーの公式サイトでの互換性情報の確認やBTOパソコンショップでの相談も有効な方法です。
8. よくある質問
APUとCPUについて理解を深めたところで、多くの方が疑問に思う点について詳しく解説します。パソコン選びの参考にしてください。
8.1 APUだけでゲームはプレイできる?
結論から言うと、APUだけでもゲームをプレイすることは可能です。ただし、どのようなゲームをどの品質でプレイしたいかによって、満足度は大きく変わります。
APUに搭載されているグラフィックス機能は、最新のAAA級タイトルを最高設定でプレイするには不十分ですが、次のようなゲームであれば十分に楽しめます。
- eスポーツタイトル(League of Legends、CS:GO、Valorantなど)
- インディーゲーム
- 数年前のゲームタイトル
- グラフィック要求の低いゲーム
例えば、AMDの最新APUであるRyzen 7 8700Gであれば、「Fortnite」をフルHD解像度、中~低設定で60fpsを超えるパフォーマンスで動作させることができます。
APUモデル | 想定ゲームプレイ性能 | 対応可能なゲームの例 |
---|---|---|
AMD Ryzen 7 8700G | 1080p 中~高設定 | Fortnite, CS:GO, Valorant, GTA V |
AMD Ryzen 5 8600G | 1080p 中~低設定 | League of Legends, CS:GO, Minecraft |
Intel Core i7(Iris Xe搭載) | 1080p 低設定 | eスポーツタイトル, 軽量ゲーム |
ただし、「Cyberpunk 2077」や「Assassin’s Creed Valhalla」のような要求の高いAAA級タイトルを快適にプレイするには、専用のグラフィックカードを搭載したシステムが必要です。
パソコンゲーム初心者や、ゲームがメインの用途でない方には、APUのみのシステムが予算を抑えつつゲームも楽しめる選択肢となるでしょう。
8.2 APUとCPU+GPUどちらがコスパがいい?
APUとCPU+GPU構成のコスパを比較すると、用途や予算によって最適な選択は変わります。
8.2.1 APUが有利なケース
限られた予算内でシステムを構築したい場合、APUは非常に魅力的な選択肢です。例えば自作PCで予算が10万円以下の場合、CPU+GPU構成よりもAPUを選んだ方がバランスの良いシステムを組むことができます。
APUの価格帯と、同等のゲーミング体験を得るためのCPU+GPU構成の価格を比較してみましょう。
構成 | 主要コンポーネント | 概算価格(2023年現在) | 備考 |
---|---|---|---|
APU構成 | Ryzen 7 8700G + マザーボード + メモリ | 約6万円 | これにケース、電源、ストレージが加わります |
CPU+GPU構成 | Ryzen 5 + GeForce GTX 1650 + マザーボード + メモリ | 約9万円 | これにケース、電源、ストレージが加わります |
また、APUは次のようなメリットもあります。
- 省スペース構成が可能(小型PCに向いている)
- 消費電力が抑えられる
- ゲーム以外の用途で十分な性能
- 後からGPUを追加するアップグレードが可能
8.2.2 CPU+GPUが有利なケース
一方、ゲームを主目的とするユーザーや、動画編集などクリエイティブな作業を頻繁に行うユーザーにとっては、CPU+GPU構成の方がコスパが良くなります。15~20万円以上の予算がある場合は特にそうでしょう。
例えば、「RTX 4060」などのミドルレンジGPUを搭載したシステムは、どんなAPUよりも数倍以上のグラフィック性能を発揮します。価格は高くなりますが、得られる性能は大幅に向上します。
パソコンの使用期間も考慮すると、CPU+GPU構成の方が長期的には価値が高くなるケースが多いでしょう。特に3年以上の使用を考えている場合は、将来性も考慮して選ぶことをおすすめします。
8.3 APUからCPU+GPU構成へのアップグレード方法
APUでシステムを組んだ後、さらに高い性能が必要になった場合、グラフィックカードを追加してアップグレードすることができます。そのプロセスを説明します。
8.3.1 アップグレード前の確認事項
グラフィックカードを追加する前に、以下の点を確認しましょう。
- 電源ユニットの容量:GPUは消費電力が高いため、少なくとも500W以上、高性能GPUなら650W以上の電源を推奨します。
- PCケースのサイズ:物理的にGPUが収まるスペースがあることを確認します。
- マザーボードのPCIeスロット:空きスロットがあること、バージョンが適合していることを確認します。
- 冷却とエアフロー:GPUを追加すると発熱が増すため、十分な冷却対策が必要です。
8.3.2 アップグレード手順
APUからGPUへのアップグレードは、比較的シンプルな作業です。基本的な手順は次のとおりです。
- 電源を切り、電源ケーブルを抜きます。
- PCケースを開け、PCIeスロットにアクセスします。
- グラフィックカードをPCIeスロットに挿入し、固定します。
- 必要に応じて電源からGPUに電源ケーブルを接続します。
- ケースを閉じ、電源をつなぎ直します。
- PCを起動し、グラフィックカードのドライバをインストールします。
- BIOSでディスプレイ出力をAPUからGPUに切り替えます(自動で切り替わる場合もあります)。
アップグレード後、モニターケーブルは必ずグラフィックカードの出力ポートに接続してください。マザーボードのディスプレイ出力(APU用)ではなく、GPUからの出力を使用することで、追加したグラフィックカードの性能を活用できます。
ブルックテックPCでは、当店でPCをご購入頂く方に用途や予算に合わせた構成のアドバイスやアップグレードの有料サポートも行っていますので、迷った際はぜひご相談ください。
9. まとめ
本記事では、APUとCPUの違いについて詳しく解説してきました。APUはCPUとGPU機能が一体化されたプロセッサーで、コスト効率に優れ、省スペース設計が可能な点が最大の特徴です。一方、CPUは演算処理に特化しており、別途グラフィックカードと組み合わせることで高い処理能力を発揮します。
APUは予算を抑えたエントリーモデルや、軽いゲームプレイ、日常的な動画視聴やブラウジングに最適です。特にAMDのRyzen 5 5600GやRyzen 7 5700Gなどは、コストパフォーマンスに優れた選択肢と言えるでしょう。一方、高負荷のゲームやクリエイティブ作業には、Core i9やRyzen 9などの高性能CPUと専用グラフィックカードの組み合わせが適しています。
自分の用途や予算に合わせて選ぶことが重要ですが、将来的なアップグレードも視野に入れると、まずは良質なCPUを選び、後からグラフィックカードを追加するという選択肢も賢明です。初心者の方は特に、将来の拡張性を考慮した選択をおすすめします。
最新のハードウェアは日々進化していますので、具体的な製品選びに迷った際は、専門知識を持つショップのアドバイスを受けることも大切です。ゲーミングPC/クリエイターPCのパソコン選びで悩んだらブルックテックPCへ。
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